上 下
122 / 151
第二章 王国革命からの害虫貴族駆除編

121.一族相伝の奥義でもって、あなた方の罪に私自らが処罰を与えましょう ※ 4度目の害虫貴族駆除回(その12)

しおりを挟む
 アーデルよりもクラーラの方が王位にふさわしい。
 そして、クラーラの伴侶となった者は王の座に就ける。

 これはクラーラの出自を知った馬鹿達の共通の想いであった。
 だからこそクラーラを王座に就けるよう説得し、あわよくば婚約者と先ほどまで思ってたのだが……

「再度言いますが、私を王の座に就けようとする者は、未来の女王となるアーデルお義姉様への許されざる反逆行為と言えます。
 辺境の防衛を担うアムル家当主様直々に伝授してもらった一族相伝の奥義でもって、あなた方の罪に私自らが処罰を与えましょう。うふふふふ……」

 口を三日月のごとく歪ませながら笑うクラーラの姿に……
 命を無造作に刈り取る死神のごとき佇まいに馬鹿達は気付いた。

 自分達はとんでもない勘違いを……
 クラーラが万人に優しい女神の顔だけでなく、容赦ない死を与える死神の側面を持っていた事を……

 クラーラへ返答できるよう、猿轡を外された馬鹿達は許しを乞うのごとく必死に叫ぶ。

「い、いえいえ!!そんな事は考えておりません!!!」

「ア、アーデル様こそが女王陛下にふさわしいお方です!!」

「今までの無礼をお許しください!!」

「無礼って、私まだ貴方達に無礼受けた覚えないけど?」

「えっ?」

 死神な佇まいから一転、きょとんっと首を傾げられた事で思い出した。
 クラーラはクズ一派から絶大な人気や支持を得ている、いわば姫。ある業界の言葉を借りるならオタサーの姫だ。

 恐れ多くて無礼なぞ働くという発想すらでない。

 まるっきり見当違いな謝罪を受けた事で、クラーラから胡乱な目でみられる馬鹿の一人に周囲は咎める。

「この馬鹿が!!クラーラ様になんて口を聞く!!」

「謝れ!!クラーラ様に謝れ!!!」

 クラーラは何も言ってないのに、勝手に勘違いして勝手にクラーラのためと思い込んで動く馬鹿達にクラーラは「どうしようか?」っとばかりにメイをみる。

(そうですね。ではこんな趣向はいかがでしょうか?)

(いいねそれ。採用)

 アイコンタクトのみのやり取りであるも、互いに意思疎通を終えた二人はぐっと親指を立てる。
 また、二人の企みはお付きの衛兵達も理解したようだ。共に親指を立ててくれたところで、クラーラは『おほん』っとわざとらしく咳払い。

「君たちは私をほったらかしにして、何勝手に内輪揉めしてのかね?なんなら、今すぐまとめて殺してやってもいいけど」

「「「はっ!?」」」

 クラーラに指摘され、自分達は何やっていたかを気付く馬鹿達。
 あまりの気まずさに馬鹿達から冷や汗が垂れる。

 このままでは殺される……っと思い、再度必死に弁明しようとする前にクラーラの口が先に動いた。

「わかったならよし。私は許しましょう」

 にっこりと慈悲を与えられた事で馬鹿達は安堵する。
 助かったと思うも…………クラーラはさらに付け加えた。


「だが、こいつらは許すかな?」

「「「えっ?」」」



 クラーラは丁寧に指さしながら、『こいつら』と言った。
 だから、クラーラの言うこいつらとは見張りとしてついてきたメイや衛兵を示した事に気付くも……








 ザシュー

 ザクー

 グサー








「残念、許してもらえなかったみたいだね」

「「「がはっ?!」」」

 各々ナイフで頸動脈をかっさばかれたり、剣で背中をばっさり斬られたり、槍で背から腹を貫通されたりといろいろであったが、皆共通して致命傷を負わされた。

 皆ほぼ同時に口から鮮血を吐き出しながら倒れこむ。
 自分達は一体なぜ、血の海に沈んでるのか……

 なぜこうなったか理解が及ばない……

 そんな馬鹿達の思考を見越してか、クラーラは丁寧に解説する。


「まだ息があるようなら教えてあげる。君たちはこれから死ぬの。
 アーデルお義姉様……もとい、アーデル女王様に楯突こうとした反逆者の末路として、さらし首に晒すの。
 何を馬鹿なって言いたそうな顔だけど、王位を狙うってのはこういう事。君たちがアーデルお義姉様を公の場でつるし上げにする事と全く同じ。
 やり返されても批難する権利なんて、一つもない!!」

「ゲホ……だ、だからって……何も殺す事は……」

 気管に詰まった血を吐きながらも声をあげる。
 その様はまだ自分の何が悪いか……自分の今置かれている立場をまるっきり理解していない馬鹿そのもの。

 死ぬ間際にようやく自分の間違いを認め、アーデルを認めたトリネーとは全く違う。

 そんな有様にクラーラは意外にも助け船を出す事にした。


「はぁぁ……そんなに言うなら仕方ない。私も鬼じゃないから処刑から逃れられるチャンスをあげる」

 馬鹿達の目の前にことりと置かれる一本の回復薬ポーション

「これを飲めば命は助かる。でも見ての通り回復薬ポーションは一本、一人分のみ。
 だから選べばいい。他を蹴落としてでも一人占めするか、友のために辞退するか……あー効果が分散されるのを承知の上で仲良く分けて飲むという選択肢もあるかな?」

 そうにっこり笑うクラーラに馬鹿達は周囲を見渡す。
 皆考えるのは一緒だ。

 彼等が取った選択肢。それは……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

OLサラリーマン

廣瀬純一
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

旅の道連れ、さようなら【短編】

キョウキョウ
ファンタジー
突然、パーティーからの除名処分を言い渡された。しかし俺には、その言葉がよく理解できなかった。 いつの間に、俺はパーティーの一員に加えられていたのか。

側妃ですか!? ありがとうございます!!

Ryo-k
ファンタジー
『側妃制度』 それは陛下のためにある制度では決してなかった。 ではだれのためにあるのか…… 「――ありがとうございます!!」

婚約破棄されて勝利宣言する令嬢の話

Ryo-k
ファンタジー
「セレスティーナ・ルーベンブルク! 貴様との婚約を破棄する!!」 「よっしゃー!! ありがとうございます!!」 婚約破棄されたセレスティーナは国王との賭けに勝利した。 果たして国王との賭けの内容とは――

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

公爵令嬢はアホ係から卒業する

依智川ゆかり
ファンタジー
『エルメリア・バーンフラウト! お前との婚約を破棄すると、ここに宣言する!!」  婚約相手だったアルフォード王子からそんな宣言を受けたエルメリア。  そんな王子は、数日後バーンフラウト家にて、土下座を披露する事になる。   いや、婚約破棄自体はむしろ願ったり叶ったりだったんですが、あなた本当に分かってます?  何故、私があなたと婚約する事になったのか。そして、何故公爵令嬢である私が『アホ係』と呼ばれるようになったのか。  エルメリアはアルフォード王子……いや、アホ王子に話し始めた。  彼女が『アホ係』となった経緯を、嘘偽りなく。    *『小説家になろう』でも公開しています。

がんばれ宮廷楽師!  ~ラヴェルさんの場合~

やみなべ
ファンタジー
 シレジア国の宮廷楽師としての日々を過ごす元吟遊詩人のラヴェルさんよんじゅっさい。  若かりし頃は、頼りない、情けない、弱っちいと、ヒーローという言葉とは縁遠い人物であるも今はシレジア国のクレイル王から絶大な信頼を寄せる側近となっていた。  そんな頼り?となる彼に、王からある仕事を依頼された。  その時はまたいつもの戯れともいうべき悪い癖が出たのかと思って蓋を開けてみれば……  国どころか世界そのものが破滅になりかねないピンチを救えという、一介の宮廷楽師に依頼するようなものでなかった。  様々な理由で断る選択肢がなかったラヴェルさんは泣く泣くこの依頼を引き受ける事となる。  果たしてラヴェルさんは無事に依頼を遂行して世界を救う英雄となれるのか、はたまた…… ※ このお話は『がんばれ吟遊詩人! ~ラヴェル君の場合~』と『いつかサクラの木の下で…… -乙女ゲームお花畑ヒロインざまぁ劇の裏側、ハッピーエンドに隠されたバッドエンドの物語-』とのクロスオーバー作品です。  時間軸としては『いつサク』の最終話から数日後で、エクレアの前世の知人が自分を題材にした本を出版した事を知り、抗議するため出向いた……っという経緯であり、『ラヴェル君』の本編から約20年経過。  向こうの本編にはないあるエピソードを経由されたパラレルの世界となってますが、世界観と登場人物は『ラヴェル君』の世界とほぼ同じなので、もし彼等の活躍をもっと知りたいならぜひとも本家も読んでやってくださいまし。 URL http://blue.zero.jp/zbf34605/bard/bardf.html  ちなみにラヴェル君の作者曰く、このお話でのラヴェルさんとお兄ちゃんの扱いは全く問題ないとか…… (言い換えればラヴェル君は本家でもこんな扱われ方なのである……_(:3 」∠)_)

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...