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第二章 王国革命からの害虫貴族駆除編
118.王の座はアーデルお義姉様こそがふさわしいと思っております ※ 4度目の害虫貴族駆除回(その⑨)
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トリネーからの進言を受けた王は即座にクラーラを呼びつけた。
周囲はクラーラが来るのに時間がかかるのでは思うというか、例の馬鹿貴族子息達はアーデルがクラーラを誘拐監禁までしたという噂を信じていた事もあって批難した。
懲りずにその件でアーデルを責め立てようと騒ぐも、その最中に当の本人が現れた。
時間にしてわずか10分。最初から王宮内に居なければ無理な早さである。
「トビアス国王陛下。お呼びでしょうか?」
壮大な扉から現れたクラーラは貴族令嬢としてカーテシーを行う。
その仕草は完璧ではなくとも、十分に評価できるもの。
まぁ批難できるような稚拙な仕草であっても、クラーラを溺愛するアーデルが見守ってる中で批難しようものなら今夜あたりに暗殺者……いや、アーデル自身が襲撃して明日の朝日が拝めない身体にされるだろう。
そうした独特な緊張感が流れる中、クラーラは呼びに行かせた衛兵にエスコートされる形で王座の前まで案内される。最初に口を開いたのはアーデルだった。
「クラーラ、忙しい中急遽呼び出してごめんなさい」
「別に構いません。まぁ内心では呼び出されるよね~っと思ってたので、正装姿でスタンバっていましたから」
「そう思ってるなら、最初から謁見の間に待機させてればよかったかしら」
「いえいえ、私は政務に関わる人間ではございませんので最初から居る必要性がありません。何かあればその時のみ現れ、用が済めば立ち去るのが筋というものでしょう」
そう言いながら王へと視線を移すクラーラ。
クラーラも謁見の目的やら筋書を知ってたが、ビィトがトビアス国王という正体までは知らされてない。
だからなぜここにトビアス国王が……実父でありながらも自分を捨てた張本人が居る事に内心驚いた。
だが、隣に立つ義姉であり女王(仮)であるアーデルが何も言わないならばっとあえて触れずに姉妹の挨拶をここで打ち切る。
王をいつまでも無視し続ければ不敬になるからっと、姿勢を正して王へと向きなおす。
ただ、不敬といっても周囲は別にクラーラが思うほど不敬と扱ってない。
アーデルとの会話はフランクなモノで少々眉をひそめるところはあれど、先ほどから不敬しまくりな馬鹿貴族子息に比べれば遥かにマシ。
さらにいえばその馬鹿貴族達も目の前の光景が……
監禁された事実も不仲という事実も偽りであるかのような、仲の良い姉妹な姿に驚愕していた。
中には『見せかけだ!!』っとばかりに声をあげようとするも、その声は即座に封じられた。
アーデルは自身の事だと大抵の事はスルーできるも、クラーラが関わると冷静さを失って暴走する。
対してクラーラもアーデルを侮辱する発言を行う者には少々過激な反応を示す。
そんな二人が揃ってる時にアーデルへの批難の声があがると、連鎖反応でアーデル暴走に行き着いての大惨事が引き起こされる可能性が大。
その連鎖の起点になりかねない連中を自由にさせるわけにはいかないっとばかりに、メイが先手を取って動く。衛兵達と協力して彼等にさるぐつわをかませる事で強制的に声を封じたわけだ。
本来なら貴族子息に行う処置ではないが、散々やらかしてきた実績があるだけに誰も咎めない。
むしろ、アーデルの性癖をよく知る者達からグッジョブとばかりに褒めたたえていた。
トビアス国王はそうした処置が終わったのを見計らい、本題を告げた。
「クラーラ嬢よ。用というのは他でもない……クラーラ嬢は王たる余の実子であるため、望めば王位継承権……第一位であるデルフリは廃嫡の予定なので王位にもっとも近しい者ともいえる。王位に付く気はあるか?」
「いえ、私は王位に全く興味ございません。王の座はアーデルお義姉様こそがふさわしいと思っております」
何の躊躇なく……人によっては値千金ともいえるべき王の座を、クラーラはきっぱりはっきり拒否した。
その言葉に唖然とするのは馬鹿貴族子息のみ。
大半は予定調和だと言わんばかりである。
「王様、用とはこれだけでしょうか?他になければもう退出して構いませんでしょうか?」
「その通り……と言いたいとこだが、出来るならレーハム侯爵子息を中心とした若手達と話をしてやってほしい」
「レーハム侯爵令息と……ですか?」
「うむ。レーハム侯爵子息は王位の座をめぐって、まず正当な血筋であるクラーラ嬢がどう思うか意見を聞くべきだと進言したのだ。他の若手達もクラーラ嬢が王座に就いてほしいそうなので、当人で説得するのが筋であろう」
「ふ~ん。説得……ですか……」
トビアス国王からの言葉と目線につられて振り向けば、丁度トリネーと目が合う。
その予想外な展開にトリネーが戸惑い、クラーラは少し考えた後……
「わかりました。私も彼等と少なからず交流があります。ですが……説得方法はお任せでいいのでしょうか?」
「問題ない。好きにすればよい。アーデル嬢もそれでよいな」
「もちろんでございます。私には彼等ともう言葉を交わす必要ありません。後の事はクラーラにお任せしましょう」
「承りました。それでは今から早速OHANASHIしてきましょう」
OHANASHI……
その言葉を発した一瞬、クラーラから恐ろしいほどの殺気が籠ったせいで一部は思わず戦慄する……も
(よし、これでクラーラを説得すれば……王の座に就くよう促せばアーデルを蹴落とせる!!奴もついに終わりだ!!!)
馬鹿達は懲りずに都合のよい未来を描くのであった。
周囲はクラーラが来るのに時間がかかるのでは思うというか、例の馬鹿貴族子息達はアーデルがクラーラを誘拐監禁までしたという噂を信じていた事もあって批難した。
懲りずにその件でアーデルを責め立てようと騒ぐも、その最中に当の本人が現れた。
時間にしてわずか10分。最初から王宮内に居なければ無理な早さである。
「トビアス国王陛下。お呼びでしょうか?」
壮大な扉から現れたクラーラは貴族令嬢としてカーテシーを行う。
その仕草は完璧ではなくとも、十分に評価できるもの。
まぁ批難できるような稚拙な仕草であっても、クラーラを溺愛するアーデルが見守ってる中で批難しようものなら今夜あたりに暗殺者……いや、アーデル自身が襲撃して明日の朝日が拝めない身体にされるだろう。
そうした独特な緊張感が流れる中、クラーラは呼びに行かせた衛兵にエスコートされる形で王座の前まで案内される。最初に口を開いたのはアーデルだった。
「クラーラ、忙しい中急遽呼び出してごめんなさい」
「別に構いません。まぁ内心では呼び出されるよね~っと思ってたので、正装姿でスタンバっていましたから」
「そう思ってるなら、最初から謁見の間に待機させてればよかったかしら」
「いえいえ、私は政務に関わる人間ではございませんので最初から居る必要性がありません。何かあればその時のみ現れ、用が済めば立ち去るのが筋というものでしょう」
そう言いながら王へと視線を移すクラーラ。
クラーラも謁見の目的やら筋書を知ってたが、ビィトがトビアス国王という正体までは知らされてない。
だからなぜここにトビアス国王が……実父でありながらも自分を捨てた張本人が居る事に内心驚いた。
だが、隣に立つ義姉であり女王(仮)であるアーデルが何も言わないならばっとあえて触れずに姉妹の挨拶をここで打ち切る。
王をいつまでも無視し続ければ不敬になるからっと、姿勢を正して王へと向きなおす。
ただ、不敬といっても周囲は別にクラーラが思うほど不敬と扱ってない。
アーデルとの会話はフランクなモノで少々眉をひそめるところはあれど、先ほどから不敬しまくりな馬鹿貴族子息に比べれば遥かにマシ。
さらにいえばその馬鹿貴族達も目の前の光景が……
監禁された事実も不仲という事実も偽りであるかのような、仲の良い姉妹な姿に驚愕していた。
中には『見せかけだ!!』っとばかりに声をあげようとするも、その声は即座に封じられた。
アーデルは自身の事だと大抵の事はスルーできるも、クラーラが関わると冷静さを失って暴走する。
対してクラーラもアーデルを侮辱する発言を行う者には少々過激な反応を示す。
そんな二人が揃ってる時にアーデルへの批難の声があがると、連鎖反応でアーデル暴走に行き着いての大惨事が引き起こされる可能性が大。
その連鎖の起点になりかねない連中を自由にさせるわけにはいかないっとばかりに、メイが先手を取って動く。衛兵達と協力して彼等にさるぐつわをかませる事で強制的に声を封じたわけだ。
本来なら貴族子息に行う処置ではないが、散々やらかしてきた実績があるだけに誰も咎めない。
むしろ、アーデルの性癖をよく知る者達からグッジョブとばかりに褒めたたえていた。
トビアス国王はそうした処置が終わったのを見計らい、本題を告げた。
「クラーラ嬢よ。用というのは他でもない……クラーラ嬢は王たる余の実子であるため、望めば王位継承権……第一位であるデルフリは廃嫡の予定なので王位にもっとも近しい者ともいえる。王位に付く気はあるか?」
「いえ、私は王位に全く興味ございません。王の座はアーデルお義姉様こそがふさわしいと思っております」
何の躊躇なく……人によっては値千金ともいえるべき王の座を、クラーラはきっぱりはっきり拒否した。
その言葉に唖然とするのは馬鹿貴族子息のみ。
大半は予定調和だと言わんばかりである。
「王様、用とはこれだけでしょうか?他になければもう退出して構いませんでしょうか?」
「その通り……と言いたいとこだが、出来るならレーハム侯爵子息を中心とした若手達と話をしてやってほしい」
「レーハム侯爵令息と……ですか?」
「うむ。レーハム侯爵子息は王位の座をめぐって、まず正当な血筋であるクラーラ嬢がどう思うか意見を聞くべきだと進言したのだ。他の若手達もクラーラ嬢が王座に就いてほしいそうなので、当人で説得するのが筋であろう」
「ふ~ん。説得……ですか……」
トビアス国王からの言葉と目線につられて振り向けば、丁度トリネーと目が合う。
その予想外な展開にトリネーが戸惑い、クラーラは少し考えた後……
「わかりました。私も彼等と少なからず交流があります。ですが……説得方法はお任せでいいのでしょうか?」
「問題ない。好きにすればよい。アーデル嬢もそれでよいな」
「もちろんでございます。私には彼等ともう言葉を交わす必要ありません。後の事はクラーラにお任せしましょう」
「承りました。それでは今から早速OHANASHIしてきましょう」
OHANASHI……
その言葉を発した一瞬、クラーラから恐ろしいほどの殺気が籠ったせいで一部は思わず戦慄する……も
(よし、これでクラーラを説得すれば……王の座に就くよう促せばアーデルを蹴落とせる!!奴もついに終わりだ!!!)
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