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第二章 王国革命からの害虫貴族駆除編

113.あーあー五月蠅いゴミね。もういい加減付き合うのも馬鹿らしいから、静かに…… ※ 4度目の害虫貴族駆除回(その4)

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 トリネーはレーハム侯爵家の三男坊といっても、婿養子だった父と平民の娼婦だった母から生まれた庶子なので家内での立場は限りなく低かった。
 特に跡取りである嫡男とその予備である次男から見下されながら育ってきたため、彼はいつしか兄達を筆頭とした自分を見下す連中より上へとのし上がる野望を抱いていた。

 そのための手段として目を付けたのがクズ王太子の側近の席だった。
 しかし、王太子の側近の筆頭には爵位こそ低くても未来の宰相や騎士団長としてふさわしい能力を持つマイヤーやペーターという、どうあがいても勝てない二人ですでに椅子二つが埋まっている。
 その下にも同じ侯爵家ながらも当主が国の中枢に関われるほど優秀な事もあって家格が上位。さらに嫡男で跡取りなアインとツヴァイという、能力は低いながらも身分と立場のせいで太刀打ちできない二人が居る。

 ほぼ不動ともいえる4人に側近の椅子を埋められているので、残りわずかな席をめぐっての争いは苛烈だ。
 トリネーもその席に座るべく、努力は続けるもその努力は兄達が妨害してくるせいでなかなか実らない。
 先日の懇親会でも、兄達に邪魔されたせいで参加できなかったのだ。兄達に対して憎悪を募らせていた中で転機が訪れた。


 先日の戦争で兄達が戦死したのだ。そのおかげで侯爵家の跡取りになれるどころか、上手くクラーラに取り入れば王にのし上がれる可能性が出てきたのだ。

 トリネーはこのチャンスを逃さんとばかりに、野望むき出しのギラギラとした目でアーデルに噛みつく。

 その執念と気概は凄まじいものがあり、一部はトリネーの評価を上位修正しはじめた。
 少なくともトリネーはクズと違ってどん底から這い上がろうとするバイタリティがあるし、現状を変えるために自分を磨く努力もしている。決して神頼みや他力本願だけの考え方をしていない。

 出会い方が違えば、トリネーをアーデルの側近として迎え入れるという未来がありえたかもしれない。
 それだけの価値がある故にマイヤーも閻魔帳に処分保留としたのだ。
 これで最後の最後に自分の非を認めて謝罪したドリコヨ伯爵令息のように、トリネーも野心はどうあれ形だけでもアーデルに忠誠を誓う選択肢を取れば、アーデルも無碍にはしなかっただろう。
 元々、アーデル陣営には過激思考持ちメイ&ロッテンやら変態紳士マイヤーやら同性愛至上主義ミズミ&フランといった癖の強い者が多いのだ。
 トリネーのようなアレな思想の持ち主もすんなり受け入れられるだけの土壌はあったが、現実はこうして敵対である。

「あーあー五月蠅いゴミね。もういい加減付き合うのも馬鹿らしいから、静かに……」

「お待ちください!!ここは私に任せてくださいませんか?」

 アーデルはこれ以上の問答は無用っとばかりに王錫を振り上げるが、それを再度ビィトが止める。
 手加減が苦手と自ら公言してしまうようなアーデルが王錫で殴りつけたら永遠に黙り込んでしまう可能性が極大。

 下手すれば頭蓋骨が破壊されて物理的な意味でになりかねないからっと、手で制して止める。


 その姿は不敬であろう。

 ただの下っ端としか思えないような……本来なら謁見の間に居る事すら叶わないような身分の者が王となったアーデルと同じ目線で語ってるわけだ。

 いくらアーデルが身分を問わないフレンドリーな性質をしてようとも、公の場では許されない。
 緊急時はともかく、平時でいつまでも同じ目線では王としての示しが付かない。

 周囲に緊張が走る中、アーデルの反応を待つ。
 そんな中でアーデルの判断は……

「わかりました。ここはお任せしましょう」


 引き下がった。
 ただの下っ端がこの場の全権を托されたのだ。
 その様にどよめきが……今まで茶番を面白おかしく観賞してた⑨割の者達からどよめきが走る。

「おっさん!!誰か知らんが俺はアーデルと話してるんだ!!関係ない者は引っ込んでもらおうか!!」

 トリネーはいら立った感情を隠そうともせず、どけっとばかりに威圧する。
 だが、ビィトはお構いなしで問いかける。

「関係ない……。いやまぁ今はそれを問う気はありません。私が問いたいのはクラーラ嬢を王の座に就かせたいとの事です。それが出来ると思ってるのでしょうか?」

「当然だ!クラーラ様は王の実子、ならば王の座に付く権利があるではないか!!」

「クラーラ嬢はアムル辺境伯家の養女。王家の籍がないので王位継承権はありません。それが例え実子であろうとも……」

「何を言うか!!王家の血筋こそが正当な証!!正当な血筋を持つ者こそ上に立つべきではないか!!!」

「そうですか……ならばレーハム侯爵家の三男トリネー様。侯爵家の婿養子の愛人、平民から生まれた侯爵家の血筋を一切引いてない庶子の貴方は侯爵家の当主になれると思ってるのでしょうか?」

「血筋は関係ない!!血筋より優れた者が上に立つ事こそが重要だ!!!」

「「「「「「「…………」」」」」」」


 トリネーの言葉に周囲は引いた。

 先ほどまで血筋が重要と説いてたのに次の瞬間にはあっさりと覆したのだ。
 そのあまりにもなダブルスタンダードっぷりを何の躊躇なく、自分が正しいとばかりに言い切ったその様に大半はドン引きした。

 血筋に縛られがちな貴族であれば、なおさらドン引きするもビィトはそうでもなかった。

「はっはっはっはっはっはっは!!そうか!!!それがお主の意見か!!!!」

 あろうことか、ビィトは腹を抱えながら大笑いしたのである。
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