義妹を溺愛するクズ王太子達のせいで国が滅びそうなので、ヒロインは義妹と愉快な仲間達と共にクズ達を容赦なく潰す事としました(略称:クズぷちっ)

やみなべ

文字の大きさ
上 下
98 / 229
第二章 王国革命からの害虫貴族駆除編

⑨7.全ては奴の手のひらの上……というわけか……あの若造がぁぁぁぁぁ!!!(SIDE:アインズ) ※ 1度目の害虫貴族駆除回(その5)

しおりを挟む
「どういうことだ!?」

 アインズは敵陣地の異常さについ声を荒げた。
 敵陣営の本部と思われる建物に突入するも、大将であるハイドが不在。

 それならまだわかる。
 大将は本部に居なければならない理由なぞない。
 ましてやハイドは自分が討たれたら負けだというのに、そんなこと知らんとばかりに単騎で敵部隊へ突撃かますほどの馬鹿だ。
 別の場所に居てもおかしくない……が、それでも他の兵までいないのは異常だった。

 侵入から少なくない時間が経過し、後続が続々と集まってざわざわと騒ぎ出しても敵兵が集まってこない。
 まるで最初からもぬけの殻であったかのように……

「どういうことだ!?誰か説明しろ!!!」

 アインズは再度声を張り上げるも、答えれる者はいない。
 大半はハイドの首を取る事しか考えてないため、現状をただしく把握してる者は居ないのだ。
 居るとすれば、侵入の手引きしてくれたマイヤーの部下ぐらいだろうが、彼等はいつのまにか姿をくらましていた。

 ここでようやくアインズは罠の可能性に気付くも、時すでに遅し。

 気付いた時には……周囲が火と煙に包まれていた。







 ……

 …………

 ………………




「な、なにが……何が起きた?!」

 煙に視界を遮られてせき込みながらも現状を報告させようとするも、その声に答える者はいない。


「邪魔だ!!どけぇ!!!」

「何をしやがる!!俺が先だ!!!」

「ワシは貴族だぞ!!貴族たるワシを優先」

「「「「そんなの関係あるかぁぁぁ!!!!」」」」

 代わって聞こえるのは出口に殺到してるであろう者達の怒声だ。
 そこに秩序も何もあったものではない。
 皆自分だけは助かろうと必死であった。

 その証拠に付き飛ばされた衝撃で足をくじいたアインズを顧みる者はいない。
 侍従であった者も主をおいて我先に逃げたのか、姿を現さない。

 このままでは焼け死ぬと判断したアインズは痛む足を引きずりながら出口へと向かう。
 だが、出口へとたどり着く前に建物の耐久が尽きてしまった。



 ガラガラガラガラッ……



「ぬわ~~~~!!?」


 天井が焼け落ち、その瓦礫がアインズへと降り注ぐ。
 幸いにして大怪我は免れるも、頭以外が完全にがれきへと埋もれてしまった。
 抜け出そうとあがくも、瓦礫が重しとなっているために抜け出せない。

 抜け出すには、誰かに瓦礫をどけてもらう必要があるのだ。

「だ、だれかぁぁぁぁ!!助けろぉぉぉぉお!!!!私を助けろぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

 アインズは声をふり絞って助けを求めるも、皆逃げるのに必死なためその声に応える者はいない。
 それでもアインズは叫ぶ。必死に助けを求める。
 だが、現実は誰も助けにこない。


 来るのは、充満する煙と瓦礫に燃え移った火だけである。

 アインズは迫りくる火に……瓦礫の隙間から流れ出る血と共に冷たくなっていく自身の身体を顧みて悟った。

 自分はもう助からないっと……


「ははは……そうか、私はここで死ぬの……か」

 一度死を覚悟したら頭が冴え渡った。
 なぜ自分がこうなったのか……

 その原因が誰なのか……


 気付いてしまったわけだ。


 全ては……








「奴の手のひらの上……というわけか……あの若造がぁぁぁぁぁ!!!」




 全てを悟ったアインズは天井が崩れ去った事で露わとなった夜空へ向かって、あらん限りの呪詛を込めながら叫ぶも……



 “今頃気付いたのですか?とりあえず貴方様への貸しは命という形で回収させてもらいましょう。何、皆さま方の命は私が有効活用してあげますよ。くいくい”




 今際に浮かんだマイヤーはいつものごとく、眼鏡をくいくいっと正しながら平然と言い放つのであった。

「くっくっく……いいだろう。ワシは一足先に地獄へと行く。そして、貴様がワシの後を追って地獄へと落ちた時は……」

 “真っ先にその面ぶん殴ってくれるわ!!”













 アインズの死に際の願い。
 これが叶ったかどうかは定かではない。

 ただ一つ言える事は……

 マイヤーはこの後も50年以上しぶとく生き続ける予定なので、順当に考えれば地獄での再会はまず無理だろうということだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

婚約破棄……そちらの方が新しい聖女……ですか。ところで殿下、その方は聖女検定をお持ちで?

Ryo-k
ファンタジー
「アイリス・フローリア! 貴様との婚約を破棄する!」 私の婚約者のレオナルド・シュワルツ王太子殿下から、突然婚約破棄されてしまいました。 さらには隣の男爵令嬢が新しい聖女……ですか。 ところでその男爵令嬢……聖女検定はお持ちで?

「宮廷魔術師の娘の癖に無能すぎる」と婚約破棄され親には出来損ないと言われたが、厄介払いと嫁に出された家はいいところだった

今川幸乃
ファンタジー
魔術の名門オールストン公爵家に生まれたレイラは、武門の名門と呼ばれたオーガスト公爵家の跡取りブランドと婚約させられた。 しかしレイラは魔法をうまく使うことも出来ず、ブランドに一方的に婚約破棄されてしまう。 それを聞いた宮廷魔術師の父はブランドではなくレイラに「出来損ないめ」と激怒し、まるで厄介払いのようにレイノルズ侯爵家という微妙な家に嫁に出されてしまう。夫のロルスは魔術には何の興味もなく、最初は仲も微妙だった。 一方ブランドはベラという魔法がうまい令嬢と婚約し、やはり婚約破棄して良かったと思うのだった。 しかしレイラが魔法を全然使えないのはオールストン家で毎日飲まされていた魔力増加薬が体質に合わず、魔力が暴走してしまうせいだった。 加えて毎日毎晩ずっと勉強や訓練をさせられて常に体調が悪かったことも原因だった。 レイノルズ家でのんびり過ごしていたレイラはやがて自分の真の力に気づいていく。

婚約破棄からの断罪カウンター

F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。 理論ではなく力押しのカウンター攻撃 効果は抜群か…? (すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)

勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。

八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。 パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。 攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。 ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。 一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。 これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。 ※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。 ※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。 ※表紙はAIイラストを使用。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

処理中です...