義妹を溺愛するクズ王太子達のせいで国が滅びそうなので、ヒロインは義妹と愉快な仲間達と共にクズ達を容赦なく潰す事としました(略称:クズぷちっ)

やみなべ

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第二章 王国革命からの害虫貴族駆除編

⑨2.それは詭弁っていうのよ(SIDE:ロッテン)

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 王国陣営からの返答はダブルスタンダードというべきものであり、こちらを馬鹿にしてるとしか思えなかった。

 これで怒るなというのは無理というもの。
 血気盛んな者は今すぐ攻め込むべきだと騒ぎ立てるも、ハイドが一括する。

「まぁまて!!とりあえず敵側は自分達が容認したルールを平然と破る気満々なのがわかった。ならばこちらはあえてルール通り戦おうではないか」

「そんな必要ない!!相手がお行儀よく戦わないなら俺達だってなんでもありで」

「ん?俺はとは言ったが、とは言ってないぞ」

 ハイドに気勢をそがれた上、矛盾してるかのような言葉につい黙り込んで首をかしげる面々。
 そこをすかさず、ハイドがとても良い笑顔で宣言した。


「野郎ども!!まずは戦場に要塞のような陣地を作るぞ!!!さらに罠だけでなく爆薬と投石器、おまけとして毒も用意だ!!」

「ちょ、ハイド!それはいくらなんでもまずいでしょうが!!」

「大丈夫だロッテン!これらは卑怯でもなんでもない!!!
 なんせ、ルールに『使用武器の制限』を一切課してないのだからな!!!つまり、要塞は元より道徳的には忌避されやすい毒や爆薬を使っても問題ないってわけだ!!はっはっはっは!!!!」

「あのねぇ……それは詭弁っていうのよ」

「ロッテンよ。詭弁だろうがなんだろうが、最初にルールを破ったのは向こうだ!!非難されたらそこを付けばいいだけの話さ。はっはっはっは!!!」

「あぁぁ……そういえばこいつ、一対一の決闘だと真正面からの正々堂々が信条なのに、戦争のような集団戦になると悪辣な手を平然と使ったりしてたわね。おまけに……」

「さぁ野郎ども!!開戦まで時間ないぞ、すぐに準備を急げー!!」

「「「「「「「「「イエッサー!!」」」」」」」」」

 この数日ですっかり海の荒くれを筆頭とした私兵達だけでなく、戦争に直接参加しない後方支援や工作を担う一般市民の心を掴んだハイド。
 その佇まいはまさに将軍であり、王でもあった。


「人心を掴む事にも長けてるし、これ戦術に関してだけならマイヤーを超えてるんじゃないの?」

 だが、これから王国とドンパチを行う事を考えるとハイドの存在はこの上なく頼もしくもある。
 こうしてゼーゼマン軍は皇子改め雇われ大将指揮の元、皆一丸となって戦争準備を進めていた。



 その一方、王国の方では……













「おいおい、エッジ。なんだこの質の悪い兵達は?騎士団はどうしたんだ?」

「知らないのかヴィクス?少し前……時期としては例のクズがやらかした一件の前日、娘の顔をみないと気《大暴れしちゃう病》?を発症した辺境伯を支援する殺してでも止めるために団長が大半の団員を連れてったんだ。
 帰還命令出すも、団長は辺境伯の弟として兄の代わりに国境警備の指揮を取るために現場から離れられないとかで拒否。
 腕利きの冒険者達もなんやかんや理由つけて辺境領に向かってるしな。残ってるのは柄の悪い冒険者や腐った貴族からの甘い汁のおすそ分けをもらってる雇われぐらいか」

「ペーター様はどうした?あのお方は王都に残ってるはずだぞ」

「ペーター様は横領の罪で投獄された。あのお方は満足な武具を支給されない民兵たちに騎士達の予備の武具を貸し出そうとしただけだというのに……」

「なんだよそれ。民兵達に武具を支給するのは国の役目だろ」

「今回は自分達で用意しろっとな。ただ知っての通り、クズのせいで商業ギルドは御冠。武具だけでなく戦争に必要な物資を法外な値段で売りつけるもんだからなぁ。
 そのしわ寄せがもろ民兵達にやってきてるってわけだ。大半の民兵は相当不満抱え込んでるな」

「みたところ士気は高そうだが……?」

「民衆はいつまでも馬鹿じゃない。以前はクズを絶対正義と盲目的に信じ込んじゃってる奴は多かったが、今はクズの実情が知れ渡って手のひらを返す奴が大多数。目立たないのは不敬罪になるから表立って声出してないだけだ。
 ほら、あそこで堂々アーデル様を稀代の悪役令嬢だとか、クズとクラーラ嬢は『真実の愛』の元で結ばれる運命だとか、今こそ二人の仲を引き裂く悪を打倒だとか口上述べてる奴を見る民兵たちの目。大半は冷めた目でみてるだろ」

「確かに……表面上賛同してるっぽいが、ほとんどの者は『馬鹿なやつだな』な目でみてるな」

「まっ、そんな訳だから民兵達にやる気なんて全くない。指揮を取る士官や隊長達も具体的な戦術を詰めるようなことせずに勝利後の報酬の使い道の相談をする始末。
 こんなんじゃ勝てる戦争も勝てん……もう王国終わりじゃね」

「いやいや、さすがにそれは…………ありうるか?」

「むしろ今までよく持った方だ……それでヴィクス。俺達はどうする?今ならまだ間に合うぞ」

「逃げるといってもなぁ。正規兵である俺達が逃げたら、無理やり招聘された民兵を見捨てる事になる。
 無能な馬鹿達の無謀な突撃命令やら自分が逃げる際の囮とかで使いつぶされるのが目に見えてるわけだし、あいつらが生きて帰れるよう上手く立ち回ってやろうぜ。逃げるのはそれからだ」

「ヴィクスは相変わらずお人よしだな。だが、それがいい。腐れ縁として俺もとことんまで付き合ってやるよ」

「エッジ、その言葉忘れるなよ。いざという時、俺は戦場のどさくさにまぎれて無能指揮官や隊長を後ろからグサーする。もし逃げ遅れて断頭台送りになった際……」

「わかっている。介錯を務めてやるから安心して……」

「その時はお前も共犯者だと訴えてやる!地獄へと道ずれにしてやるから覚悟しておけ!!」

「冗談だ。どうせ死ぬなら逃げた裏切り者ではなく民兵達にとっての英雄として死にたいから、その時が来たら共に無能な指揮官や貴族を後ろから刺しまわってやるよ」

「それならばよし。後はそうだな……信用できそうな同僚達にも声かけて一斉に無能な指揮官殺しを起こしちまおうか」




 こんな具合に、王国軍は数こそ多くとも内情はガタガタ。おまけにモブ兵士から指揮官殺しの算段までされる程の有様であった。









 なお、一般的な戦場での指揮官の死因の約2割は部下に殺された物なのだが……

 この戦争で部下から殺された指揮官の数は⑨割にまで及んでいたらしい……



 そんな戦後の記録をみたロッテンは『前言撤回、悪辣さに関してはマイヤーの上に行くやつ居なかったわ』とかぼやくも……

 この一件はごく一般のモブ兵士ヴィクス&エッジが発端となって引き起こされたもの。
 マイヤーは全く関与してない(そもそもゼーゼマン公爵家の圧勝が約束されてるのだから策なんか要する必要ない)のだ。

 だが、普段の行いや印象のせいで後世ではマイヤーの策略として記録されるのであった。
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