義妹を溺愛するクズ王太子達のせいで国が滅びそうなので、ヒロインは義妹と愉快な仲間達と共にクズ達を容赦なく潰す事としました(略称:クズぷちっ)

やみなべ

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第二章 王国革命からの害虫貴族駆除編

80.いきなりそんな事言われても……というより、なぜ今こんな話を聞かせるんですか?(SIDE:ビィト)※ 0度目の害虫貴族の駆除回(その1)

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 父スネイプは婿として公爵家に入ったにも関わらず、当主であった母フルーワを疎ましく思っていた。
 母が居なければ愛人とその子供を堂々と公爵家に呼んで暮らせるっと考えた父は母の殺害を決意。
 さらに愛人との間に出来た子供を公爵家の跡取りとするため、母との間に生まれた子供。トビアスまでも殺害した上ですり替えようと企んだ。

 そのすり替え計画は事前に察した母がトビアスを信頼できる使用人に託し、さらにトビアスの死を偽装させる事で殺害だけは阻止できた。ただ、自身の安全までは確保できずに毒殺されてしまい、表向き病死として公表されたそうだ。

 つまり、今公爵家に居るトビアスは偽物。本物はビィトと名前を変えてアル爺の元へと預けられた自分だったのである。


「いきなりそんな事言われても……というより、なぜ今こんな話を聞かせるんですか?」

 疑問はもっともであろう。
 何も知らなければこれからも今まで通りビィトとして生きてられたのに、いきなり自分は王家の血筋なんて聞かせられたら混乱する。

 そこは使者も十分承知してくれていた。

 だが、王国ではビィトの事情なんて全く考慮されないほど程のトラブル。
 下手すれば王国が滅びかねないほどの切迫した状況に追い込まれていたのだ。

 その理由は簡単にいえば……愚かな王太子が海を越えた大国から嫁ぐためにやってきた皇女様を祝いの場で難癖つけて殺そうとしたところ、誤ってその兄。大国の皇太子を殺したからだ。

 それによって皇女様はブチギレ。
 王太子や王家に連なる各関係者を処刑する流れとなるも、皇女様は父である皇帝から王家の者と結婚して子供を産むよう命令されていたので王家の血筋の者を皆殺しにはできない。
 最低でも一人は確保せねばならぬというのに、王家の血筋はどいつもこいつも愚物ばかり。

 どうすべきかと頭悩ませてたところ、唯一まともだった故フルーワ王妹殿下の子息が辺境で生きているという情報が舞い込んだのである。

 ビィトにとっては『何それ!?』な話であり、一緒に話を聞いていたハイジは『勝手すぎる!!』とカンカンだった。

 ただまぁ、ハイジの怒りの矛先はビィトを連れて行こうとする使者に対してではなく、ビィトと母を殺そうとした父とその愛人であった。
 仇として最低でも一発ぶん殴るべきだっと主張して聞かないので、仕方なく王家の血筋問題は保留のまま父とその愛人に会う事を条件に王都行きを承諾。

 保留については使者だけでなく、もしかしたら未来の妻となる皇女ブリギッテ様もすぐに決めて良い問題ではないからっと認めてくれた。

 ただし、馬鹿達を説得……いや、この場合は絶望のどん底に突き落とすため、一時的に婚約者として振る舞ってほしいと頼み込まれた。
 ビィトは最初こそ渋るも、ハイジが面白がって勝手に承諾したので場の雰囲気に流されるがまま仮初の婚約が成立。
 これらの流れに自分の意志はほとんど反映されなかった。

「まぁでも、ハイジに決定権あるのはいつものことか」


 こうして部外者なのに当人よりノリノリなハイジに引っ張られるまま訪れた留置場。

 そこでは残りの王家の血縁者達がたった一つの生き残り枠をかけた議論が交わされてる真っ最中というか……
 子供心ながらに『なんという酷い言い争い……これでは僕に活路を見出したくなるのもわかる……』なんて皇女達に同情してしまいそうなののしり合いを繰り広げられていた。

 そんな心中を察したのか、ブリギッテがここは任せて置けっといわんばかりに優しくポンっと肩を叩きながら一歩前に出てよく通る声で馬鹿達に宣言した。

「諸君、紹介しよう!!隣に居る少年は故王妹フルーワ殿下の息子で正当なナドラガンド公爵家の跡取りであり、正当な王家の血筋を持つトビアス君だ。そして、私の婚約者でもある!!」

「「「「「「な、なんだってー!?」」」」」」

 彼等にとってビィトは前触れもなくいきなり現れて美味しいところ……一人だけ助かる蜘蛛の糸を横から掴んだ者だ。
 当然ビィトに非難の目が向けられるも、直後にブリギッテをはじめとした護衛達が睨みつけて黙らせる。
 だが、それでも実父はひるむことなく叫ぶ。

「な、なにを言う!!息子のトビアスはここにいるではありませんか!!!」

「そ、そうだ!!俺がトビアスだぞ!!!お前は偽物だ!!!」

 偽のトビアスも父に追従する形で凄むも、ビィトは涼しい顔。
 物心付いた頃から無法者と勘違いされそうなモヒカン達や牧場近くに現れる血に飢えた野獣やら魔物と接する機会の多いビィトにとっては、安全圏でヌクヌクと過ごしてた二人の凄みなんて怯えるまでもなかったのだ。

 というか、本当に怖いのは今にも殴り掛かりそうな気配を出す隣のハイジであり、ビィトは裏でハイジを抑えるのに必死だった。

 そんな有様だったので、ビィトはハイジと共に一歩下がってブリギッテの影に隠れる。
 傍から見たら怖がってるようにみえたらしく、護衛が次々と前に立ちふさがってくれた。
 内心ではお節介と思うも、ハイジを宥めるのに集中できるので彼等の好意はありがたく受ける……ちょっと苦労人気質なビィトであった。

 そうこうしてるうちにブリギッテと父との口論が始まった。
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