80 / 229
第二章 王国革命からの害虫貴族駆除編
7⑨.な、なんだってー!?(SIDE:ビィト)
しおりを挟む
30年前、当時7歳だったトビアスはビィトという名前でアムル辺境領が抱える開拓村の一つ。アルプス村の外れで村の由来となったアルプス山脈の中腹にて祖父のアルパイン、通称アル爺と従妹であるハイジと共に過ごしていた。
両親は物心着く前に流行り病で無くし、孤児となった所を親族であるアル爺が引き取ってくれたと聞いていた。
ハイジも似たような経歴でアル爺に引き取られており、二人はアル爺の元で兄妹のように育った。
山を切り開いて整えた牧場でヤギや羊を育てる牧歌的な生活。
王都の喧騒とは無縁の生活であったが、ある日それが唐突に終わりを告げた。
「ヒャッハー!!水と食い物をよこせー!!」
棘の付いた肩パットの鎧とモヒカンが特徴的な男達が牧場に現れたのである。
……………………
「かーうめー!!相変わらずここの水。アルプス山脈の清水はうめーよなー!!」
「チーズも最高だ!!このあぶったチーズのとろけ具合はまさに世紀末級!!」
「おいおい、お前ら何子供みたいなこと言ってんだ!!一番なのは肉だろ!!ヤギ乳でじっくり煮込まれたクリームシチュー、これこそまさにお袋の味!!よってハイジちゃん、お替りよろしくな」
「俺もだ!!」
「俺は腸詰め肉とチーズ乗せパンだ」
「はい!!ただいまお持ちします!!ビィト、聞いての通り~」
「わかった。すぐ用意するから先にこれ運んで~!!」
庭の一角に用意された簡易厨房でビィトは次々と注文された料理を作り、それらをひっつかむようにして配膳していくハイジ。
一見すれば傍若無人なならず者に牧場を占拠されたようにみえるだろうも、真実は違う。
モヒカン達はアムル辺境伯家が雇っている私兵であり、領内のパトロールは彼等の業務の一つ。
牧場の訪問も業務の一環であり、訪れた際には腰を悪くしているアル爺やまだまだ子供のビィトやハイジでは対処できない仕事。小屋や柵の修繕や周辺をうろつく危険な魔物の間引きといった仕事を無償で引き受けてくれる、便利屋として頼りになる存在であった。
傍若無人な態度も本職の便利屋である冒険者によく見られるもの。慣れれば気にならない。
それに、彼らも子供にすべて押し付けるような外道ではない。宴会場の設営から料理の下準備までは手伝ってくれたので、後はただ鍋を焦げないよう時々かき回しながら下準備を終えた肉や野菜、チーズ等を焼くだけという簡単なお仕事をこなすだけでよかったのだ。
おまけに働き具合ではチップと称したお小遣いまでくれるとなれば、はりきらない理由はない。
二人はお小遣い欲しさに夢我夢中で働くのであった。
だからビィトも最初は違和感に気付かなかった。
今はまだモヒカン達が訪れる時期ではない。仮にあるとすれば緊急性の高い厄介ごと。例えば村を襲うゴブリンやオークの群れが出没したなど、早急に対応しなければまずい事態が起きた場合であるも、彼等にそうした緊迫した空気はない。
アル爺も今日は小屋に引っ込んだまま出てこない事に疑問はあれど、モヒカン達と共にやってきた身なりの良い人も一緒に入っていたので大事なお話でもしてるのだろうと思っていた。
その予想は一応当たっており、小屋の中では大事な話は行われていた。
そして……お祭り騒ぎが一段落付いた頃合いにアル爺から呼ばれたビィトは自身の出自……
王家の血筋だった事を聞かされた。
「な、なんだってー!?」
ビィトは最初何を言われたかわからなかった。
自分の本名はビィトではなくトビアスであり、王家の血筋という貴族よりも偉い立場なんて全く理解できなかった。
だが、アル爺から渡された手紙。国王の妹でもあった母が生前に書いたビィト……トビアスに充てた手紙と血縁関係を明らかにするDNE鑑定書が事実を伝えていた。
王家の血筋だったトビアスがなぜビィトとしてアル爺に預けられたかについてだが……
最大の要因はナドラガンド公爵家当主であり、王位継承権を持つ王妹でもあるフルーワ女公爵が婿入りした父スネイプに暗殺されたからであった。
両親は物心着く前に流行り病で無くし、孤児となった所を親族であるアル爺が引き取ってくれたと聞いていた。
ハイジも似たような経歴でアル爺に引き取られており、二人はアル爺の元で兄妹のように育った。
山を切り開いて整えた牧場でヤギや羊を育てる牧歌的な生活。
王都の喧騒とは無縁の生活であったが、ある日それが唐突に終わりを告げた。
「ヒャッハー!!水と食い物をよこせー!!」
棘の付いた肩パットの鎧とモヒカンが特徴的な男達が牧場に現れたのである。
……………………
「かーうめー!!相変わらずここの水。アルプス山脈の清水はうめーよなー!!」
「チーズも最高だ!!このあぶったチーズのとろけ具合はまさに世紀末級!!」
「おいおい、お前ら何子供みたいなこと言ってんだ!!一番なのは肉だろ!!ヤギ乳でじっくり煮込まれたクリームシチュー、これこそまさにお袋の味!!よってハイジちゃん、お替りよろしくな」
「俺もだ!!」
「俺は腸詰め肉とチーズ乗せパンだ」
「はい!!ただいまお持ちします!!ビィト、聞いての通り~」
「わかった。すぐ用意するから先にこれ運んで~!!」
庭の一角に用意された簡易厨房でビィトは次々と注文された料理を作り、それらをひっつかむようにして配膳していくハイジ。
一見すれば傍若無人なならず者に牧場を占拠されたようにみえるだろうも、真実は違う。
モヒカン達はアムル辺境伯家が雇っている私兵であり、領内のパトロールは彼等の業務の一つ。
牧場の訪問も業務の一環であり、訪れた際には腰を悪くしているアル爺やまだまだ子供のビィトやハイジでは対処できない仕事。小屋や柵の修繕や周辺をうろつく危険な魔物の間引きといった仕事を無償で引き受けてくれる、便利屋として頼りになる存在であった。
傍若無人な態度も本職の便利屋である冒険者によく見られるもの。慣れれば気にならない。
それに、彼らも子供にすべて押し付けるような外道ではない。宴会場の設営から料理の下準備までは手伝ってくれたので、後はただ鍋を焦げないよう時々かき回しながら下準備を終えた肉や野菜、チーズ等を焼くだけという簡単なお仕事をこなすだけでよかったのだ。
おまけに働き具合ではチップと称したお小遣いまでくれるとなれば、はりきらない理由はない。
二人はお小遣い欲しさに夢我夢中で働くのであった。
だからビィトも最初は違和感に気付かなかった。
今はまだモヒカン達が訪れる時期ではない。仮にあるとすれば緊急性の高い厄介ごと。例えば村を襲うゴブリンやオークの群れが出没したなど、早急に対応しなければまずい事態が起きた場合であるも、彼等にそうした緊迫した空気はない。
アル爺も今日は小屋に引っ込んだまま出てこない事に疑問はあれど、モヒカン達と共にやってきた身なりの良い人も一緒に入っていたので大事なお話でもしてるのだろうと思っていた。
その予想は一応当たっており、小屋の中では大事な話は行われていた。
そして……お祭り騒ぎが一段落付いた頃合いにアル爺から呼ばれたビィトは自身の出自……
王家の血筋だった事を聞かされた。
「な、なんだってー!?」
ビィトは最初何を言われたかわからなかった。
自分の本名はビィトではなくトビアスであり、王家の血筋という貴族よりも偉い立場なんて全く理解できなかった。
だが、アル爺から渡された手紙。国王の妹でもあった母が生前に書いたビィト……トビアスに充てた手紙と血縁関係を明らかにするDNE鑑定書が事実を伝えていた。
王家の血筋だったトビアスがなぜビィトとしてアル爺に預けられたかについてだが……
最大の要因はナドラガンド公爵家当主であり、王位継承権を持つ王妹でもあるフルーワ女公爵が婿入りした父スネイプに暗殺されたからであった。
0
お気に入りに追加
96
あなたにおすすめの小説
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

婚約破棄……そちらの方が新しい聖女……ですか。ところで殿下、その方は聖女検定をお持ちで?
Ryo-k
ファンタジー
「アイリス・フローリア! 貴様との婚約を破棄する!」
私の婚約者のレオナルド・シュワルツ王太子殿下から、突然婚約破棄されてしまいました。
さらには隣の男爵令嬢が新しい聖女……ですか。
ところでその男爵令嬢……聖女検定はお持ちで?

「宮廷魔術師の娘の癖に無能すぎる」と婚約破棄され親には出来損ないと言われたが、厄介払いと嫁に出された家はいいところだった
今川幸乃
ファンタジー
魔術の名門オールストン公爵家に生まれたレイラは、武門の名門と呼ばれたオーガスト公爵家の跡取りブランドと婚約させられた。
しかしレイラは魔法をうまく使うことも出来ず、ブランドに一方的に婚約破棄されてしまう。
それを聞いた宮廷魔術師の父はブランドではなくレイラに「出来損ないめ」と激怒し、まるで厄介払いのようにレイノルズ侯爵家という微妙な家に嫁に出されてしまう。夫のロルスは魔術には何の興味もなく、最初は仲も微妙だった。
一方ブランドはベラという魔法がうまい令嬢と婚約し、やはり婚約破棄して良かったと思うのだった。
しかしレイラが魔法を全然使えないのはオールストン家で毎日飲まされていた魔力増加薬が体質に合わず、魔力が暴走してしまうせいだった。
加えて毎日毎晩ずっと勉強や訓練をさせられて常に体調が悪かったことも原因だった。
レイノルズ家でのんびり過ごしていたレイラはやがて自分の真の力に気づいていく。
婚約破棄からの断罪カウンター
F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。
理論ではなく力押しのカウンター攻撃
効果は抜群か…?
(すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)
勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。
八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。
パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。
攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。
ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。
一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。
これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。
※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。
※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。
※表紙はAIイラストを使用。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる