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第一章 逆断罪劇からのクズざまぁ編

60.納め時なのはお前の方だ、このクズめが!!(SIDE:フェルト)

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“あっはっはっはっはっは!!アーデルよ!!今回こそねんごの納め時だ!!もう泣いて謝っても許さんから覚悟しておけよ!!”


「納め時なのはお前の方だ、このクズめが!!」

 外に出たフェルトは部屋から響いてきたクズの声に対し、本音で突っ込んだ。
 態度も部屋の中では腰の低い営業マンスタイルを貫いでいたが、もう必要ないとばかりに素へと戻した。その素も今は誰も……いや、メイドや見張り以外みてないから気にしない。

 さらにいえばメイドや見張りもフェルトの態度を全く咎めないどころか……

「フェルトさん。お酒とおつまみの差し入れありがとっしゃした」

 見張りは職務中に堂々酒を飲むという有様であった。
 もっとも、彼らは神からの天誅を食らった者達を犯罪者ではなく、ある種のVIP対応せねばならないのだ。
 その犯罪者も反省どころか威張り散らしてるのだから、ストレスはマッハでやばいのは確定的に明らか。ある程度の羽目外しは神も許してくれるだろう。

「許してもらえるといいのですけどね」

「前後不覚になる程のきつい酒は渡してないし、大丈夫さ。それに何かあったところであのクズ相手だし、手段選ばなければどうとでもなるだろ。ケイト姉さん」

「手段を選べないからこそ、アーデル様達は苦労してるのですがね……はぁ」

 そう語るメイド……フェルトの姉であり、次期ギスカーン伯爵家の当主となる事が内定しているケイトは溜息を付く。

「それにしたって、なんで姉さんがついてきたんだよ。姉さんが所属してる王宮財務部は今頃ヒーヒー言ってるのに大丈夫なのか?」

「見張りのために駆り出されました。クズをさらなる地獄へと叩き落とす作戦の一旦を何の因果か出来の悪い弟が請け負うことになったから、何かヘマやらかさないか心配したマイヤー様からの命令で」

「……どうみても、同僚やマイヤー様を脅して無理やり抜け出してきたようにしかみえんぞ」

「うっさい!!弟はただ黙って姉の言うこと聞いとけばいいんだよ!!」

「へーへーわかりましたよっと……全く、こんな裏表のある女と結婚を強要されるウールは不幸だよな」

「城仕えするならそれなりの身分ある貴族が後見人になってほしいというアーデル様の意向こそありますが、ウールは下手な貴族子息よりも優秀ですからね。あくどい貴族に取られるぐらいなら、少なからずの縁があるギスカーン伯爵家の当主である私の婿となってもらう方が安全でしょう。さらにいえばメイドや侍女との接し方がわからないとなれば、私自らメイドとなって接するのもいいでしょう。私であれば何かあっても簡単にフォローできますし」

「……すまん。姉さんがメイドとしてそばに控えられてる事そのものが一番の不幸……のわっ!!」

 セリフ途中でぶおんっと飛んできた足……回し蹴りを上体反らしで躱したフェイド。
 その際に絶対領域を完備したふとももが丸見えとなるも、フェルトは気にしない。

 身内相手では邪な感情が働きにくい上、目を取られると追撃に対処できないのだ。よって、油断なく追撃に備えるも……
 今回は追撃が来ないあたり、そこまで本気というわけでなかったのだろう。

 空ぶった時の風圧からして、直撃すれば意識を完全に刈り取られそうな威力ありそうなので案外本気だった可能性も否めないが……


「ま、まぁ……ともかく姉さんとウールが結婚するのはいいと思ってる。ウールはギスカーン伯爵家の養子ではなく姉さんと婚姻して婿入りするのは予想外だったとはいえ、能力や性格といったあらゆる面からみても姉さんの元婚約者とは比べるのもおこがましいぐらいの最良物件なのは確実だもんな」

「ふふふ……あの元婚約者より酷いのはもうクズぐらいしか思い浮かばないぐらいだから、そもそも比較対象にする時点ですでに失礼な気はするけどね」

「それもそっか。はっはっは」

 機嫌よく笑う二人はかつてのケイトの元婚約者を思い返すのであった。
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