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第一章 逆断罪劇からのクズざまぁ編

58.奴こそが真の悪役令嬢!!そんな奴に、俺は決して負けん!!(SIDE:デルフリ)

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「くそっ、マイヤーが居てくれればすぐに案が出せるというのに……」

 マイヤーはとにかく頭が良い。ペーターが武力最強であればマイヤーは頭脳最強。
 おまけにペーターと違ってデルフリをしっかり敬ってくれる。

『私が王国1の頭脳と称されるのは、態々殿下がその座を譲ってくれたからですよ』っと自分の立場を弁えてくれている。
 ペーターとは大違いな、まさに忠臣ともいえる有能な側近。

 それだけにマイヤーは忙しかった。
 仕事をしてる振りをしてるアーデルとその取り巻き連中と違って彼は次期宰相としての仕事に没頭している。

 それでもデルフリの要請にはスケジュール調整を行って大体は応えてくれる。
 今回の断罪劇に同行はできずとも必勝の策を授けてくれた。

 それでも、アーデルの悪質さはマイヤーの想定を遥かに上回っていたようだ。
 デルフリは自分達の目論見が悉く台無しにされたのは、アーデルがマイヤーに執拗な拷問をかけて情報を盗んだせいと予測した。

「そうです!マイヤーもよくアーデル達に拷問されるっと話してましたし、きっと今回も拷問にかけて無理やり情報を聞き出したのでしょう」

「善良な者を拷問するなんて、やはり奴は悪役令嬢……いや、真の悪役令嬢!!なんとしても処刑すべきです!!」

「そうだ!!奴こそが真の悪役令嬢!!そんな奴に、俺は決して負けん!!」

 デルフリはアインとツヴァイの話を聞き、改めてアーデルの鬼畜っぷりを再認識するも………そもそもの前提からして間違えだらけであった。





 ……………………

 アーデル側で語った通り、マイヤーはクズをとっくに見限っていた。

 情報は無理やり聞き出したものではなく、唐突に聞かされたもの。マイヤー本人がメモとして直接手渡したものだ。
 拷問に関しても、あれはマイヤーの個人的趣向を満たすためにわざわざ受けてるもの。アーデル達にしてみれば鬼畜でもなんでもない、日常のありふれた一コマなのだ。


 宰相の仕事も同様。
 マイヤーは現当主が宰相を務めるゼーゼマン公爵家に婿入りする立場であり、宰相補佐としていくらかの仕事を受け持っているのは一応事実。

 次期宰相の話は宰相どころか王妃やロッテンからも推奨されるほどの適任者であるも、本人は『私は裏でこそこそするのが好きなので、補佐ぐらいの立場が丁度いいのです』っと辞退してるだけだ。

 ただし、クズ達には『宰相の家に婿入り』と『宰相の仕事を請け負っている』と『次期宰相と期待されている』っと嘘は言ってないが、肝心の『自分は宰相になるつもりはない』をわざと伝えない事でマイヤーが次期宰相と誤認させるよう仕向けさせていた。

 その有様はまさに稀代の詐欺師であろう。
 クズはアーデルを詐欺師と呼んでるが、そのクズが忠臣と信じて重宝してる人物こそが詐欺師とはこれ以上ない皮肉だろう。



 全てを知るペーターはマイヤーからいいように操られているクズの無様な姿をみて笑いを堪えるのに必死であった。
 本を読んでいるのも知的アピールや知識を深めるためではなく、愉悦でゆがみそうになる口元を本で覆い隠すためである等……彼は彼で割といい性格していた。


 だからこそアーデル達はペーターを高潔な騎士なんてほど遠い悪党と称しているし、本人も自覚あるから否定しない。
 寡黙なのもそうした悪党の本性を悟らせないようにするため。うっかり失言でばれないようにする、いわば猫をかぶった姿なのだ。

 ただまぁ、クズ達は想像以上に察しが悪い馬鹿なのでうっかり失言しても問題ないっと思わなくはないが……

 自分のうっかりのせいで悪友マイヤーの悪だくみを台無しにする可能性を極力減らすためにっと、あえて寡黙路線は継続していた。







 そうしてクズ達はマイヤーの思惑に気付かないまま……

 マイヤーが送ってきた刺客……


 アーデル達でなくクズ達をさらなる地獄へと送る使者を迎え入れる事になる。
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