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第一章 逆断罪劇からのクズざまぁ編
54.お義姉ちゃん……どこ……いったの?(SIDE:クラーラ)
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(はぁ……はぁ……)
ベットの上で自分の荒い息が聞こえる。
全身を蝕む慢性的な痛みで呼吸するのもやっと。
この症状は生まれた時から続く、嫌な意味で慣れ親しんだもの。
だからこそわかった。わかってしまった。
私はこれから死ぬのだと……
もう目も耳もほぼ機能してない中であっても、周囲に誰かが居るのはわかる。必死になってるのはわかる。
だが、その中で一番騒ぎそうな人が……一番必死になりそうな人が……義姉が居ない事を妙だと思えるぐらいの思考は残っていた。
(お義姉ちゃん……どこ……いったの?)
多分おそらく、声になってない声。
それでも、養母ユリアは娘……血の繋がりのない義娘の声なき声を拾ってくれたようだ。
周囲に何かを伝えて何人かを外に出した。
それから何か語りかけてくるも、その声はもう聞こえない。
どうやら冥府からのお迎えが来てしまったようだ。
私は目の前に迫る“死”に懇願した。
(……せめて……お義姉ちゃんに……別れ伝えるまで……駄目?)
“駄目っすね。これでもかなり考慮してる方なんすが、さすがにこれ以上は無理っすよ”
目の前の“死”は生まれた時から不定期に……死が直前に迫れば姿を表す死神だった。
死神と気軽に会話するなんてどうかと思う部分はあれど、向こうは話好きなので話しかけたら勝手にべらべらとしゃべりだすのだ。自分の名前はアンコだとかいう自己紹介から始まって、仕事の愚痴やらなんやらと取り留めのない話を話す。
果てには私の実の母親をお迎えする際にはどんな様子だったかも教えてくれた。その際になにか不手際があったらしく、その償いとして私の寿命をあの手この手でもって伸ばしてくれているそうだ。
だからこその懇願であるも、結果は御覧のあり様。
(うぐぅ……どうしても?)
それでも諦めきれない私の懇願は、手に持っていた鎌を喉元に突き付けられた事で返答された。
“あっしは死神。寿命が尽きる者を冥府へ連れていくのがお仕事なんでね。まぁせめてものよしみとして、死後の道中ではいくらでも恨み言聞いてやるさ”
(そう……だったら……覚悟しててね……恨みを……たっぷりと……聞かせて……やる……から!!)
“おーおーこれから死ぬのに元気なこった。これなら道中も退屈せずに済みそうだ……うん?”
私に鎌を突き付けていた死神は唐突に黒いローブのポケットから黒いナニカを取り出して耳元へ持って行く。
“はい、もしもし。こちら清く正しい死神のアンコちゃんっす。レアちゃんどうしたんすか?……あー、お義姉ちゃんがそっちに来てて取引も成立したんすね。今丁度お迎えの時だったからギリギリって……なんすかそれ?!サボタージュの癖して出鱈目ほざくなって、今回ばかりは本当っすよ。いくらなんでも同じ手は何度も使えないっすから今回は別パターンで……そんな話してる場合じゃないっすね。おーけー今すぐ連れて行くっす”
一体誰と話しているのか?
頭に疑問符を浮かばせている間に話を終えた死神がこちらを振りむいてにやりと笑う。
“行先変更。今から向かうのは冥府じゃなく魔女様の元っすね。時間ないからすぐに向かうっすよ。そりゃ”
(えっ?)
一体何が起きたのかわからなかった。
無造作に振るわれた鎌が私の身体を切り裂いたと思ったら意識が遠のき……
……
…………
………………
……ラ
クラ……
クラーラ……
クラーラ……様
「ん……?」
誰かの呼ばれる声と、自分の身体を揺さぶられる衝撃に惹かれる形で意識が現実へと戻された。
「クラーラ様、大丈夫ですか?随分と苦しそうに呻いていたので心配したのですよ?」
「えっと……あれ?私は……というかここは?」
「覚えてないのですか?今は馬車でアムル領へ向かってる最中です」
クラーラはメイから……義姉の専属ながらもクズを嵌める作戦のために一時同行してもらっている侍女のメイから差し出された水筒の水を一口飲む。
ごくりと喉を通す感触で幾分か目がさえたので改めて周囲を見渡す。
まず目に入ったのは、正面の座椅子で毛布に包まったまま爆睡中の侍女のマイだ。
傍目で見ただけでも、ちょっとやそっとでは起きないぐらいの深い眠りについてるのがわかる。
これでは主人に何かあった時に対応できないだろうっという有様であるも……
「大丈夫です。万が一の時は私で対処いたしますから」
ぐっとサムズアップで応えてくれるメイの姿は頼もしく、安心したままもう一口水を飲めば頭も冴えて自分の今の状況。懇親会の開催直前にアーデル専属の侍女メイから養父のロンケン辺境伯が急病で倒れたという知らせを聞かされて急ぎ馬車で向かう……っというシナリオのもとで移動の最中だったのを思い出した。
なお、クラーラとマイは懇親会と逆断罪ざまぁ劇の準備のため、この三日間はほぼ一睡もせずに働き通しだったのだ。
馬車に乗り込むと同時に夢の中へ直行は自然の流れともいえよう。
ならば、起きた後にすることは……
「あーなんかお腹空いてきたかも」
空腹を満たす事である。
ベットの上で自分の荒い息が聞こえる。
全身を蝕む慢性的な痛みで呼吸するのもやっと。
この症状は生まれた時から続く、嫌な意味で慣れ親しんだもの。
だからこそわかった。わかってしまった。
私はこれから死ぬのだと……
もう目も耳もほぼ機能してない中であっても、周囲に誰かが居るのはわかる。必死になってるのはわかる。
だが、その中で一番騒ぎそうな人が……一番必死になりそうな人が……義姉が居ない事を妙だと思えるぐらいの思考は残っていた。
(お義姉ちゃん……どこ……いったの?)
多分おそらく、声になってない声。
それでも、養母ユリアは娘……血の繋がりのない義娘の声なき声を拾ってくれたようだ。
周囲に何かを伝えて何人かを外に出した。
それから何か語りかけてくるも、その声はもう聞こえない。
どうやら冥府からのお迎えが来てしまったようだ。
私は目の前に迫る“死”に懇願した。
(……せめて……お義姉ちゃんに……別れ伝えるまで……駄目?)
“駄目っすね。これでもかなり考慮してる方なんすが、さすがにこれ以上は無理っすよ”
目の前の“死”は生まれた時から不定期に……死が直前に迫れば姿を表す死神だった。
死神と気軽に会話するなんてどうかと思う部分はあれど、向こうは話好きなので話しかけたら勝手にべらべらとしゃべりだすのだ。自分の名前はアンコだとかいう自己紹介から始まって、仕事の愚痴やらなんやらと取り留めのない話を話す。
果てには私の実の母親をお迎えする際にはどんな様子だったかも教えてくれた。その際になにか不手際があったらしく、その償いとして私の寿命をあの手この手でもって伸ばしてくれているそうだ。
だからこその懇願であるも、結果は御覧のあり様。
(うぐぅ……どうしても?)
それでも諦めきれない私の懇願は、手に持っていた鎌を喉元に突き付けられた事で返答された。
“あっしは死神。寿命が尽きる者を冥府へ連れていくのがお仕事なんでね。まぁせめてものよしみとして、死後の道中ではいくらでも恨み言聞いてやるさ”
(そう……だったら……覚悟しててね……恨みを……たっぷりと……聞かせて……やる……から!!)
“おーおーこれから死ぬのに元気なこった。これなら道中も退屈せずに済みそうだ……うん?”
私に鎌を突き付けていた死神は唐突に黒いローブのポケットから黒いナニカを取り出して耳元へ持って行く。
“はい、もしもし。こちら清く正しい死神のアンコちゃんっす。レアちゃんどうしたんすか?……あー、お義姉ちゃんがそっちに来てて取引も成立したんすね。今丁度お迎えの時だったからギリギリって……なんすかそれ?!サボタージュの癖して出鱈目ほざくなって、今回ばかりは本当っすよ。いくらなんでも同じ手は何度も使えないっすから今回は別パターンで……そんな話してる場合じゃないっすね。おーけー今すぐ連れて行くっす”
一体誰と話しているのか?
頭に疑問符を浮かばせている間に話を終えた死神がこちらを振りむいてにやりと笑う。
“行先変更。今から向かうのは冥府じゃなく魔女様の元っすね。時間ないからすぐに向かうっすよ。そりゃ”
(えっ?)
一体何が起きたのかわからなかった。
無造作に振るわれた鎌が私の身体を切り裂いたと思ったら意識が遠のき……
……
…………
………………
……ラ
クラ……
クラーラ……
クラーラ……様
「ん……?」
誰かの呼ばれる声と、自分の身体を揺さぶられる衝撃に惹かれる形で意識が現実へと戻された。
「クラーラ様、大丈夫ですか?随分と苦しそうに呻いていたので心配したのですよ?」
「えっと……あれ?私は……というかここは?」
「覚えてないのですか?今は馬車でアムル領へ向かってる最中です」
クラーラはメイから……義姉の専属ながらもクズを嵌める作戦のために一時同行してもらっている侍女のメイから差し出された水筒の水を一口飲む。
ごくりと喉を通す感触で幾分か目がさえたので改めて周囲を見渡す。
まず目に入ったのは、正面の座椅子で毛布に包まったまま爆睡中の侍女のマイだ。
傍目で見ただけでも、ちょっとやそっとでは起きないぐらいの深い眠りについてるのがわかる。
これでは主人に何かあった時に対応できないだろうっという有様であるも……
「大丈夫です。万が一の時は私で対処いたしますから」
ぐっとサムズアップで応えてくれるメイの姿は頼もしく、安心したままもう一口水を飲めば頭も冴えて自分の今の状況。懇親会の開催直前にアーデル専属の侍女メイから養父のロンケン辺境伯が急病で倒れたという知らせを聞かされて急ぎ馬車で向かう……っというシナリオのもとで移動の最中だったのを思い出した。
なお、クラーラとマイは懇親会と逆断罪ざまぁ劇の準備のため、この三日間はほぼ一睡もせずに働き通しだったのだ。
馬車に乗り込むと同時に夢の中へ直行は自然の流れともいえよう。
ならば、起きた後にすることは……
「あーなんかお腹空いてきたかも」
空腹を満たす事である。
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