義妹を溺愛するクズ王太子達のせいで国が滅びそうなので、ヒロインは義妹と愉快な仲間達と共にクズ達を容赦なく潰す事としました(略称:クズぷちっ)

やみなべ

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第一章 逆断罪劇からのクズざまぁ編

52.⑨は素数じゃねーよ!!

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 何度も言うが、ハイドはあれでも帝国第4皇子であり本来なら敬うべき相手。
 まかり間違えても国政に携わるような者がぶん殴っていい相手ではない。下手すれば国際問題に発展する恐れがある。

 まぁ今のロッテンは平民のモブメイドに変装中なので国際問題にはならないが、何も知らない者がみたら平民が他国の皇子をぶん殴るという不敬罪を犯した事になる。
 場合によっては一発で処罰もありうるも、それは杞憂であった。

「はっはっは。いい突っ込みだったぞ。ロッテン」

 テーブルと料理と壁の残骸から這い上がりながらぐっとサムズアップした事からわかる通り、本人は全く気にしてなかった。
 ただ、変装中の相手にこそこそではなく堂々と大声で本名で呼ばれるのはまずいのだが……


「もう今さらか」

 当人は完全に開き直ったかのごとく、鋼のハリセンで肩をぽんぽん叩き始めながらつかつかとハイドへと詰め寄る。

「それより何考えてここに来た!!マイヤーから何たらしこまれたかは知らんが、てめぇは腐っても帝国の第4皇子!!皇族が他国のごたごたに首突っ込んだら国際問題になるってわかってんのかこら!!!」

「お、落ち着け……まずは素数を数えて落ち着くんだ。ほら、2,3,5,7,⑨……」


 ズパコーン!!


「⑨は素数じゃねーよ!!それより質問に答えろ!!!」

「わ、わかった……このことは今朝届いた手紙、アーデルの義妹であるクラーラ嬢の手紙で知った。
 マイヤーとかいう者の事は知らないが、クラーラ嬢とは前々から文通してて、二日前の早馬に手紙を託したら今朝に返事が届いたんだ。中にはこの懇親会の招待状がついていた上、会場ではお義姉ちゃんが婚約者から婚約破棄を切り出されるから告白のチャンスだと……激怒したクズ婚約者がお義姉ちゃんぶん殴るだろうからタイミングよく庇えばもうメロメロ間違いなしだと……
 だから、全速力で駆け付けて会場に到着したタイミングがまさに庇えといわんばかりの時で」

「えっと……僕もクラーラから手紙受け取ってます。帝国の第4皇子殿下が会場に現れた場合はクズとひと悶着起こすだろうから、国際問題にならないよう教会の力でうまく取り持ってほしいと。
 最初にアーデルが袋叩きにされた時に静観してたのは第4皇子殿下が来る可能性があったので、決して悪気あったわけでは……」

「……ねぇ、クラーラと文通って聞こえたけどそれどういうこと?ヨーゼフ兄さんは元々家族同然のように育った仲だから手紙のやりとりなんて当然だけど、ハイドはクラーラとは全く接点ないはずでしょう?何の目的でいつからやってたのか、怒らないから全部ゲロりなさい。ばきぼきばきぼきっ」

 これは別に嫉妬心からくるものではない。
 クラーラを溺愛するアーデルにとって、クラーラの婚約者となりえるであろう男との文通は万死に値する行いなのだ。
 拳をバキボキ鳴らすだけでなく、全身から凄まじいほどのオーラを漂わせながらロッテンの隣に立ってハイドに詰め寄った。

 ……大事なことなので二回言うが、これは断じて嫉妬心からくるものではない。
 そんな自身も理解しきれてない乙女心を持つアーデルを前にしたハイドは冷や汗を垂らしながら急ぎ弁明する。

「ま、待て待て!!変な誤解あるようだが、きっかけはアーデルのご両親へ送った手紙だ!!将を射るならまず馬を射よという言葉に倣って、まずアーデルの家族に挨拶の手紙を送ったらアーデルの義妹と名乗ったクラーラ嬢が代理で返信されたんだ。
 お義姉ちゃんを娶りたいならまず私が見極めるという名目で文通を続ける事になったんだ。なお、アーデルに内緒というのはクラーラ嬢の指示で俺は不本意だがそれに従っただけで……」

「そ、そう……なるほど。思い起こせば在学中でのハイドの突拍子のない行動に納得感でてきたわ。あれはクラーラが背後にいたのね」

「わかってくれたのか?」

「わかりたくはないけどわかったわ。それじゃぁハイドが王国に来たのはクラーラのせいなの?」

「それは違う。王国に来たのは俺の意志だ。ただ見ての通り俺は頭が悪く粗暴だ。いくら母君の故郷でも帝国の恥に繋がりかねないということで卒業後は外交官として修行していた。帝国を訪れてた要人達相手に外交官としての実績を積み上げてたら、叔母のブリキッテ王妃様に気に入られてな。外交使節として王国へと滞在できるよう取り付けてくれたから俺は意気揚々と王国行きの船に乗って2日前に到着だ」

「そうなの。こいつは2日前港に降り立つと同時にアーデルの元へはせ参じようとしたけど、私が止めさせたの。この一番の大舞台前で余計な心労を与えたくなかったからアーデルにもあえて知らせなかったのよ。ハイドにも今アーデルは超が付くほど忙しいから落ち着くまで待ってろとカナリアと影の数名まで置いて監視させてたのに、まさかクラーラに手をまわされてたなんて……ビィト!!質問だけどこれ本当にマイヤーも一枚かんでるの?!!」

「えっと……マイヤー様は無関係です。ただ、マイヤー様はこの件を知っても『止めるにしても、もう手遅れですしねぇ……それにクラーラは主役の一人ですし、考えなしの行動も起こす事はないはず。ならば、下手に修正させず成り行き任せとしますか』っと苦笑しながら問題なしの指示を出してますので、お墨付きがあるのだと思われます」

 ロッテンに質問されたことでビィトはメイド……同じ暗部仲間と共に地面へとまき散らした料理やテーブルの残骸を掃除しながら片手間的に答える。
 その答えを聞いたロッテンは……


「ほぅほぅ、それは不都合あったら現場でなんとかしろっと……よし、マイヤーは後でOSHIOKI決定」

 マイヤーに怒りの矛先を向けた。
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