(本編完結)義妹を溺愛するクズ王太子達のせいで国が滅びそうなので、ヒロインは義妹と愉快な仲間達と共にクズ達を容赦なく潰す事としました

やみなべ

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第一章 逆断罪劇からのクズざまぁ編

46.男には逃れられない戦いというものがある ※ クズ2度目のざまぁ回(その11)

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きしゃまきさまぁぁぁぁ!!」

 いきなり現われた男、ハイドばかりに注目して自分をまるっきり無視するアーデルにクズは激昂した。
 クズにとって、アーデルは親の権力やらなんやらを使って無理やりクズの婚約者に収まったわがままな令嬢。
 そんな奴がわけのわからない男とイチャイチャする姿はクズ視点だと万死に値する行為。

 アーデルが聞いたら、くだらないにも程があるっと逆切れしそうな理由で再度襲い掛かるも……





 ばきゃ!!!





あびぇちあべしっ!?」


 ハイドから再度顔面を……まるでたかってくる蠅を追い払うかのような裏拳でぶん殴られて宙を舞った。その着地点には取り巻き達を抑え込んでいた冒険者達がいるも、冒険者達は即座に退避した事で被害にあったのは取り巻きのみである。
 捉え方次第だと、彼らは身を挺して主君を守った忠臣者とも言えよう……

おにょれおのれ……いちりょ一度ぢゃけでにゃくだけでなくにぢょまでみょ二度までも……」

「ははは。ずいぶん男前な顔になってきたじゃないか。そう思わないか?アーデル」

「血だけでなく涙と鼻水でぐちょぐちょな顔は男前とは言いませんわよ。それに私、弱い者虐めする者も好きでありませんの」

「ぐぅぅ……すまない。一応あれでもかなり手加減してるのだが」

「仕方ありませんわ。アレの貧弱さは相当下限修正してなお足りないほどなので」

「そ、そうか……鉄拳制裁を禁じてると聞いて『なぜだっ!?』と思ってたが、こうやって実際に相対してわかる。確かにあれは鉄拳制裁なんて加えられん。手加減が苦手な君ならなおの事」

「うふふ……わかってくださるとうれしいですわ」

「ずきゅーん!!……その笑顔、やっぱり何度もいい。サイコーだ!!もう我慢できな!!今すぐ求婚をもうしこわぁぁぁぁ!!!!」


 アーデルを口説いてる最中に殺気を感じたのか即座に後退。その直後に白刃の煌めきが二人の間を通り過ぎた。

「な、何をする貴様!!せっかくアーデルを落とせるとこだったというのに!!」

「……さすがにこれは見逃せない」

しょうだそうだ……きょろしぇ殺せ!!じぇったいにひゃつを絶対に奴をきょろしぇ殺せ!!!」

 本人の意図は別にありそうながらもクズの命令を遂行すべく、ハイドを鋭く睨むペーター。
 どうやら彼は護衛対象であるクズを一度ならぬ二度も顔面をぶん殴った事よりアーデルを口説いた事の方が許せなかったようだ。
 ハイドを油断なく見据えながら剣を構えなおす。

「これはなかなかな強者の気配。下手すればアーデルよりも強そうであるのだが……その剣から私怨とも取れそうな殺気が漏れ出てるのは気のせいだろうか?」

「気のせいです。なので大人しく斬られるがよい」

「それはごめん被る!よって抵抗させてもらおうか。アーデル、君のために」

「私のためじゃなくていいから、やるなら二人で勝手に……じゃない!!二人とも今すぐやめなさい!!」

「止めるな!これは男同士の純粋な決闘!!ここで戦わずにして何が男だ!!!」

「その心意気よし。受けてたとう」

「受けるなぁぁぁぁ!!!これはただの男同士の決闘ではなく、国同士の代理戦争になりかねない事態なのよぉぉぉぉぉぉ!!!!国際問題だから今すぐやめろぉぉぉぉ!!!!」


 そう……うっかり場の雰囲気で肯定しそうになるも、これは王太子代理と第4皇子の決闘。
 その場のノリで軽々しく行ってはいけない、国同士の代理戦争にもなりかねない案件なのだ。

 その事実に気付いたアーデルは必死に止める。その背に縋りつくようにして止めるもハイドは笑って答える。


「アーデル……男には逃れられない戦いというものがある。今がその時だ」

「かっこつけるんじゃなぁぁぁぁぁい!!!」

 帝国での留学時からそうであったが、ハイドは人の話を聞かない。
 男には自分の世界があるっとばかりに、男のロマンとかいう論理に基づいて突っ走るというクズとは別方向での厄介な男だった。

 もう口では止められない。
 止めるには暴力でもって無理やり止めるしかない。

 そう判断したアーデルは縋りついていた身体の重心を自分に戻しての投げ飛ばし……
 投げっぱなしジャーマンの体制に入る。

 内々の場ではなく公的な場で、王太子だけでなく王太子妃も帝国の第4皇子を傷付ける……

 それが国際的にどれだけまずい事態なのか、アーデルはこの時ばかり全く気付いていなかった。
 元々直情型だった事もあって躊躇なく……

 勢いよく持ち上げようとした、その時……






「静まれぇ!!静まれぇぇぇ!!!」




 どこからともなく静止の声がかかった。
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