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45.帝国の第4皇子という立場の貴方がなぜここに……
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懇親会という場において、護衛から剣を奪ったデルフリ王太子は倒れこんでいたアーデルに斬りかかった。
そんなクズの行動はある者だと、自らの手で無礼者を処断する英雄……
ある者だと、ついに気がふれた狂人……
ある者だと、どうあがいても勝てるわけがないラスボス相手に勝負を挑む無謀な愚者……
実に様々な評価を出しつつも、彼等は共通して動かなかった。
動かずただ黙ってクズの凶行を……
身を挺して商業ギルドの職員とモブメイドを守ろうとするアーデルの背にクズの持つ剣が振り下ろされるのを……
たった一人を除いて、ただ静観するのみであった。
そして、振り下ろされた剣はそのまま……
ザシュッ!!
鮮血が舞った。
一部はアーデルの鋼のような肉体に肉どころか皮すら断てず跳ね返されると思ってたようだが、その予想は外れた。
いや、この場合だと誰もが予想してなかった事態となったのだろう。
アーデルの背に剣が到達するその前に何者かが割り込み、代わりに受け止めたのだ。
鮮血はアーデルからではなく、その庇った人物の背から流れ出たのであった。
「キサマ……オレノジャマヲス……ぶげ!?」
デルフリ王太子は誰かわからぬまま再度剣を振りかぶってたたきつけようとするも、その前に殴られた。
顔面に突き刺さった拳はデルフリを大きく吹っ飛ばした。
ある意味定番な光景ながらも、いざ実際に起きたら状況把握が困難になる。
特に先ほどから完全蚊帳の外扱いなアーデルはもうさっぱりだ。
「な、何……何なのこれ?これも策の一つなの?」
「さぁ?私もこの展開は聞いてなかったけど」
そう言いながら、モブメイドに扮してるロッテンはちらりと詳細を知ってそうな者の一人……
ゼーゼマン家の影ではなく、マイヤーが指揮権を持つ王家直属の暗部の一人。ロッテンと同じくモブ給仕として潜りこんでいたビィトに目を向ければ『計画通り』のハンドサインが返って来た。ならば、これは作戦の総指揮官であるマイヤーの策の一つなのだろう。
そうしたやり取りを行う中、アーデルはまず誰が乱入してきたのか確認するために乱入者の顔をみる。
そこに居たのは……
「ハイド……!?」
帝国の学園で知り合った、かつての学友でありライバルでもあった男であった。
「き、きしゃま……なぎゅったにゃ。おぎゃじにもなぎゅられたこともにゃいのに」
クズはハイドから殴られた事で若干ながら正気に戻っていた。
だが、殴られたという事実はクズにとって許せなかったらしい。顔面血まみれで歯が数本吹っ飛んで歯抜けという痛々しい姿ながらも、その目は憎悪に満ちていた。
「はっはっは。その年まで殴られた事がないとは、この国の王太子様はずいぶん甘やかされて育ったようだな」
笑いながら挑発するハイドであるも、その背からはドクドクと絶え間なく血が流れている。
互いの姿は血を見慣れてないものにとっては卒倒者だろう。
特に庇われた者は平然といられないだろう。
なにせ自分の身代わりとして傷を負ったのだ。
慌てるのは必然であるはずだが……
「ハイド……どういうことなの?帝国の第4皇子という立場の貴方がなぜここに……」
幼い頃から血どころか到底直視できないような惨殺死体すら拝んできたアーデルにとっては全く慌てる段階ではなかった。
気遣う素振りを全く見せずに問いかける。
対するハイドからの返答は……
「アーデル……結婚してくれ」
まさに、頓珍漢と言わざるを得ないようなものであった。
それでもアーデルは慌てない。
学園での付き合いでハイドはこういう人間だと理解していた事もあり、意図も推測できる。
「つまり、私と結婚したいがためにわざわざ帝国から王国まで追いかけてきたと」
「違う!!そうじゃなくって……いや、そうであるが……」
質問の答えになってないどろこか、混乱してしどろもどろとなるハイドにアーデルは頭を抱えながら『はぁ』っと溜息をつく。
「なんでこう、私の周りには言葉が通じない王子ばかりが集まるのよ」
まぁそれでもクズよりかは遥かにマシと思うぐらい、クズの評価は低かった
そんなクズの行動はある者だと、自らの手で無礼者を処断する英雄……
ある者だと、ついに気がふれた狂人……
ある者だと、どうあがいても勝てるわけがないラスボス相手に勝負を挑む無謀な愚者……
実に様々な評価を出しつつも、彼等は共通して動かなかった。
動かずただ黙ってクズの凶行を……
身を挺して商業ギルドの職員とモブメイドを守ろうとするアーデルの背にクズの持つ剣が振り下ろされるのを……
たった一人を除いて、ただ静観するのみであった。
そして、振り下ろされた剣はそのまま……
ザシュッ!!
鮮血が舞った。
一部はアーデルの鋼のような肉体に肉どころか皮すら断てず跳ね返されると思ってたようだが、その予想は外れた。
いや、この場合だと誰もが予想してなかった事態となったのだろう。
アーデルの背に剣が到達するその前に何者かが割り込み、代わりに受け止めたのだ。
鮮血はアーデルからではなく、その庇った人物の背から流れ出たのであった。
「キサマ……オレノジャマヲス……ぶげ!?」
デルフリ王太子は誰かわからぬまま再度剣を振りかぶってたたきつけようとするも、その前に殴られた。
顔面に突き刺さった拳はデルフリを大きく吹っ飛ばした。
ある意味定番な光景ながらも、いざ実際に起きたら状況把握が困難になる。
特に先ほどから完全蚊帳の外扱いなアーデルはもうさっぱりだ。
「な、何……何なのこれ?これも策の一つなの?」
「さぁ?私もこの展開は聞いてなかったけど」
そう言いながら、モブメイドに扮してるロッテンはちらりと詳細を知ってそうな者の一人……
ゼーゼマン家の影ではなく、マイヤーが指揮権を持つ王家直属の暗部の一人。ロッテンと同じくモブ給仕として潜りこんでいたビィトに目を向ければ『計画通り』のハンドサインが返って来た。ならば、これは作戦の総指揮官であるマイヤーの策の一つなのだろう。
そうしたやり取りを行う中、アーデルはまず誰が乱入してきたのか確認するために乱入者の顔をみる。
そこに居たのは……
「ハイド……!?」
帝国の学園で知り合った、かつての学友でありライバルでもあった男であった。
「き、きしゃま……なぎゅったにゃ。おぎゃじにもなぎゅられたこともにゃいのに」
クズはハイドから殴られた事で若干ながら正気に戻っていた。
だが、殴られたという事実はクズにとって許せなかったらしい。顔面血まみれで歯が数本吹っ飛んで歯抜けという痛々しい姿ながらも、その目は憎悪に満ちていた。
「はっはっは。その年まで殴られた事がないとは、この国の王太子様はずいぶん甘やかされて育ったようだな」
笑いながら挑発するハイドであるも、その背からはドクドクと絶え間なく血が流れている。
互いの姿は血を見慣れてないものにとっては卒倒者だろう。
特に庇われた者は平然といられないだろう。
なにせ自分の身代わりとして傷を負ったのだ。
慌てるのは必然であるはずだが……
「ハイド……どういうことなの?帝国の第4皇子という立場の貴方がなぜここに……」
幼い頃から血どころか到底直視できないような惨殺死体すら拝んできたアーデルにとっては全く慌てる段階ではなかった。
気遣う素振りを全く見せずに問いかける。
対するハイドからの返答は……
「アーデル……結婚してくれ」
まさに、頓珍漢と言わざるを得ないようなものであった。
それでもアーデルは慌てない。
学園での付き合いでハイドはこういう人間だと理解していた事もあり、意図も推測できる。
「つまり、私と結婚したいがためにわざわざ帝国から王国まで追いかけてきたと」
「違う!!そうじゃなくって……いや、そうであるが……」
質問の答えになってないどろこか、混乱してしどろもどろとなるハイドにアーデルは頭を抱えながら『はぁ』っと溜息をつく。
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