(本編完結)義妹を溺愛するクズ王太子達のせいで国が滅びそうなので、ヒロインは義妹と愉快な仲間達と共にクズ達を容赦なく潰す事としました

やみなべ

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第一章 逆断罪劇からのクズざまぁ編

44.シシィ姉さん、そんなフラグみたいなの立てないで!!(SIDE:アーデル) ※ クズ2度目のざまぁ回(その⑨)

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 絶妙なタイミングで放たれた膝カックン。

 常人であれば転倒間違いなしな妨害であるも、アーデルは常人でない。


(ぬぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!どこんじょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!)

 鍛えこんだ筋肉の力でもって無理やり体制を立て直したのだ。
 その様はまさしく脳筋の極みと言わんばかりの姿ながらも、犯人は体制の立て直しも予測済みだったようだ。問屋が卸させないっとばかりに駄目押しを行った。

「アーデル様危ない!!」

 後ろに控えていたモブメイドのロティーがとっさにアーデルの肩を掴んで支えようとするも、実態はその逆。
 彼女はアーデルの肩を掴むと同時に素早く軸足を払うだけでなく、重心を真後ろに傾けての転倒を促しにかかったのだ。


「ちょ、ロッテンなにかんがあっーーー!!!!」

 ここまでされたら、さすがのアーデルも体制を維持できない。
 よって、アーデルはシィプシィとうっかり本名で呼んでしまったロッテン……モブメイドのロティーとしてパーティーに紛れ込んでいたロッテン諸共地面に倒れこんだ。






「うぐぐ……ア、アーデル様……お怪我はありませんか?」

 立ち位置の関係上、シィプシィとアーデルの下敷きとなったロッテン。
 端からみれば、彼女はその身を呈してアーデルを守った献身的なメイドに見えるだろう。

 だが、当事者視線でみれば全くの見当違いだ。
 転倒の後押しをされた件で文句言おうとするも、その前に口をふさがれた。

「アーデル、これはクズを陥れるための作戦の一環よ。わかったなら私の言う通りに動きなさい」

 周囲に聞こえないようこっそり耳打ちされた事で策ありきと判明。
 アーデルとしては、先ほどからロクな説明がないまま除け者にされてるという事実に文句言いたいとこであるも、状況からみてそんな余裕はない。


「アーデル……コロシテヤル……イマスグショケイダ!!!」

 クズが完全に逝った目でにじり寄ってきたのだ。

「殿下!!それはまずいです!!おやめくだ……うわっ」

「ジャマヲスルナ!!」

 止めに入ったペーターを振り払いつつ、腰に差していた剣を奪い取ったクズ。
 間引きがされていない真剣を手にしたクズはそのまま剣を構える。


「ペーター様……あれ、わざと剣を奪わせましたわね」

「大根役者なペーターの事だからどこまで狙ってかはわからないけど、これはこれでよりクズのクズ具合が増すから好都合だわ」

 本来なら絶対絶命なピンチなのに、舞台を見るかのようなノリで会話するシィプシィとロッテン。
 まぁ彼女たちにとってはこんなのピンチの内にも入らないから故の余裕なのだろうけど、アーデルとしては蚊帳の外に置かれてるこの現状に不満があった。

「あーもう!今すぐ詳細な説明を聞きたいとこだけ、そんな場合じゃないのはわかるから後にして……私はこれから何すればいいわけ?!」

「私達をかばいなさい」

「かばってその背に剣を受け止めろってわけね……わかったわ」


 よくよく考えれば相当酷い指示だが、日頃から鋼のハリセンで頭かち割られるような一撃を食らいまくってるアーデルにとっては酷くもなんともない。

 例え真剣であろうとも気合を込めて受け止めれば、無傷を通り越して逆に剣をへし折る事さえできる。
 ただまぁ、クズの腕力ではどうあがいても剣の耐久を上回る一撃なんて放てそうにないのだが……


「っというか、無傷でへし折ったら絵的によくなさそうだし、ここは適度に手を抜いて流血させたほうがよさそうね」

「さすがアーデル。この寸劇の意図がよくわかってるじゃない」

「ですが気を付けてください。こういう時は手を抜きすぎて致命的な致命傷を負うのが王道パターンですから」

「ちょ?!シシィ姉さん、そんなフラグみたいなの立てないで!!そういうのは口にしたら余計真実になっちゃうのだから!!」

「死んだら死んだで、アムル家が全力全壊で王国滅ぼしてくれるから目的達成。何の問題ないから安心して死になさい」

「ロッテン……後で覚えてなさいよ」


 本来なら今すぐ殴り飛ばしたいところながらも、当然ながらそんな余裕はない。
 背中越しの気配からして、もうクズが目前まで迫っている。


 これからはより意識を集中して、適度なダメージコントロールを行わなければいけないのだ。

 よって全神経を真後ろに……クズに集中。






 来るべき衝撃に備えるも……それは一向に来なかった。





 なぜなら……



 剣が振り下ろされるその直前。

 二人を守るべく覆いかぶさっているアーデルのその背中を、さらに上から誰かが覆いかぶさったからだからだ。
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