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第一章 逆断罪劇からのクズざまぁ編

38.予想はしてたけど全く話が通じない(SIDE:アーデル)

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「「「「ひ、ひぃぃぃぃぃぃい!!!?」」」」

 あれだけ暴行を受けたのに、所々血がにじみ出てるのに、全く堪えた様子を見せず平然で立ち上がったせいで周囲から一斉に悲鳴を上げられた。
 特にクズ目線でのアーデルは自身の身長を上回る相手。普通の令嬢なら持ち合わせない騎士としての風格を持つアーデルと真正面から相対となったクズは驚愕のあまり、足がもつれて転げそうになっていた。

 幸い背後に控えていたペーターが支えてくれたので尻もちを付くのは免れたようだが、足の震え具合からみて支えがなくなれば立つことさえままならないだろう。

「はぁ……」

 その情けない姿につい溜息付くのは無理なかろう。

「貴様……俺を馬鹿にしたな!!ついに本性現したな!!不敬罪だ!!!処刑だ!!!ペーター!!!今すぐに奴を」

「お断りします」

「貴様もか!!貴様も俺を馬鹿にする気か!!」

 支えられてなければ立つ事もままならないのに口と虚勢だけは一人前。
 しかも、その支えてくれてる忠臣相手に逆切れまでする始末。

「本当に話が通じませんわ……そう思いませんか、皆さま?」

「え、ええ……さすがにあれは少々無様というか」

 あれだけの醜態を晒したのだ。今まで盲目的にクズを信じていた面々の中でも目が覚めた者はいたようだ。アーデルの言葉にも素直に受け入れられた……

「って、話を反らすんじゃない!!」

 と思ったら、すぐに元へと戻った。
 どうやら彼等はクズがクズとわかった上でそばにいる事を選んでるようだ。
 その理由は大方、クズを利用して甘い汁を啜るためといった古今東西のお約束といったところだろう。

(その甘い蜜を集めるためのお花畑はもう枯れ果てているのに、彼等の頭の中はいまだに満開のお花畑なのでしょうね……全くやれやれだわ)


「アーデル様。お湯をお持ちしました」

 その時タイミングを見計らっていたと思われる一人のメイドがお湯の入った桶を持って現れたので、お願いっとばかりに身体中の血や埃といった汚れをふき取ってもらう。
 その際18歳の淑女?の肌が無遠慮にさらけだされ、周囲からどよめきが走るもアーデルは気にしない。

 普段であれば気にすべき事ながらも、事前にクズ達があれだけの醜態をまき散らしたのだ。

 汚されたドレスを脱ぎ去っての着替えを行わないだけマシだという理論でもって、そのまま簡単に身を清めてもらった。

 清めが終わった頃には、ペーターの方もクズを宥めるのに成功していたようだ。
 どう宥めたかに関しては、非常に気にはなるもここで問い詰めたら話が進まない。

 なので、そこには全く振れる事なく改めてクズと応対した。


「とにかく、本題に入りましょう。まずクラーラが行方不明との事ですが、なぜそう思われたのでしょうか?」

「最後に見た目撃情報がお前の連れと一緒だったからだ!!」

「……えぇ、確かに今日はメイをクラーラのそばに寄り添うよう命じました。でもそれは人手不足で」

「白状したな!!さらに、お前は自分の仕事をクラーラに押し付けたとも聞いた!!しかも不眠不休で働かせるとはまさに鬼の所業だな!!!」

「……えっと、ちょっと待ってください。いろいろ突っ込みどころが」

「口答えするな!!」

 バシン!!

 クズからの振るわれた拳が左頬を直撃。
 命中の瞬間にあえて首を横に振ったことで衝撃の大半を受け流すも、端からみればクリティカルヒットしたようにしかみえないだろう。

 格闘の心得がある者であれば、手ごたえのなさからいなされたと気付くはずなのにクズはアーデルの反応に気分良くしている。

「はっはっは。いいざまだな、アーデル」


(駄目だわ……予想はしてたけど全く話が通じない)

 アーデルは長年クズの婚約者として接してるのでこの悪癖は知ってるつもりでも、その厄介さを完全に見誤っていた。

 これでは真実を伝えても飛んでも理論でもって糾弾されてしまう。
 通訳を兼ねた緩衝材となるマイヤーが居ないから、その飛んでも理論が普段の3倍程度に上乗せされてしまう。堂々巡りでキリがない。

 こうなればいっそ肉体言語で無理やり……なんて物騒な考えを巡らせると、外から助け船が出された。

「アーデル様。ここは私が説明いたしましょう」
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