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第一章 逆断罪劇からのクズざまぁ編
35.賭けに勝つコツは最後の瞬間まで勝利を疑わないこと(SIDE:ブリギッテ)
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そんなこんなと愚者達を一家郎党皆殺しにしたブリギッテ達。
次は騒動の落としどころを付けるための使者を迎える前の下準備としてブリギッテはゼーゼマン伯爵にあるONEGAIGOTOをした。
「ゼーゼマン伯爵。私は貴方を宰相に推薦したいから、まず馬鹿やらかした愚物の処刑。一家郎党皆殺しは貴方から提案した事にしなさい」
「へっ?」
ゼーゼマン伯爵にとっては寝耳に水だろうが、未来を知るブリギッテはゼーゼマン伯爵を高く評価していた。
まぁ正確にいえば、評価してるのは今の当主ではなく次の当主となる息子。
彼は1周目に起きた戦乱の中でも奮闘して王国を維持できる程の手腕を発揮したのだ。
今後を見据えての懐柔であるも、現当主はブリギッテの意をすぐに組んで行動してくれた辺り、息子と負けず劣らずに優秀だった。
こうしてゼーゼマン伯爵が表向き主導する形で開始された帝国との交渉はおおむねの予定通り……
王国側が全面的に非を認める土下座外交に皇帝が慈悲を見せた形で終わった。
もちろん裏では様々な思惑が絡んでいるも、互いの国の内情をここで詳しく語る必要性はないだろう。
なので語る出来事は一つ。
当初のブリギッテは王国を帝国に明け渡して庇護下に入ると打診するも、皇帝から却下された事だ。
皇帝は今回の事件。皇太子殺害には帝国側の不穏分子が関わっているのではという、当たらずとも遠からずな予想を立てていた。
そのため、あえて王国に必要以上の穏便な処置を取る事でその不穏分子をあぶりだす腹積もりだった。
ブリギッテもその不穏分子には心当たりがあるというか、1周目はそいつらのせいで散々苦汁をなめさせられたのだ。
それらを皇帝自らが処分してくれるなら万々歳。素直に王国存続の話を承諾したのである。
以後の出来事は又聞きであるも、不穏分子にとってはこの予想外な交渉結果での焦りから皇帝の張っていた網に自ら飛び込む失態を侵した。
そうして捕らえられた不穏分子達は拷問にかけられてあらゆる情報を吐かされたの後に皇帝自らが処分……首をねじ切って処刑という娘と全く同じ事やってたそうだ。
………………
「同じことといっても、さすがに股間のピーをあれするまではやってないらしいがな」
意識を再度現実へと戻したブリギッテはこの30年の流れを思い返す。
帝国は皇太子の死に不信感こそ残るも陰謀の証拠が見つからず結局は愚者の暴走として処置。不穏分子を片付けた事で風通しのよくなった帝国は新たな皇太子との代替わりを滞りなく終わらすも、帝国内に魔王が降臨という1周目にはなかった特大のトラブルが発生。
そのせいで帝国内に少なくない被害はでてしまったが、各国とは対魔王共同戦線という名目で次々と休戦と不可侵条約が成立。ある意味では魔王のおかげで泥沼のような戦乱の世が回避されたわけだ。
もちろんこの流れは神々による作為的なものであるようだが、人の身でこれ以上神の事情に踏み込むのはお勧めしないと死神のアンコから忠告された事もあって早々に思考を打ち切った。
次に思い返すのは王国で過ごした30年。
ブリギッテは王家最後の生き残りとなったトビアスと婚約し、王太子妃でありながら王代理として1周目で培った手腕を遺憾なく発揮。その中でも新たな交易路を開拓できたのは大きかったといえる。
先日の卒業式に集った各国代表からもフランクフルト王国を交通の要所として認識。ぜひとも懇意になりたい、繋がりたいとの声が聞こえる程度には王国の価値をあげる事が出来たといえるだろう。
ただ、統治面ではトビアスからの夜伽を拒否されたり、一度は一掃した愚者を再度台頭させてしまったりと不備が多い。
「やはり、政治というのはままならないものだ……」
この2周目では戦乱の世を回避する事に成功したが、王国の統治は失敗したと思う部分が多数ある。ふと気付けば、ついつい『もしあの時こうしておけば……』なんて考えてしまう。
それでも……もう一度やり直したいとは思わない。
1周目と違って、今はまだ手遅れでないと信じているからだ。
「そういえば宰相は言っていたな……賭けに勝つコツは最後の瞬間まで勝利を疑わないこと……為政者としては危険な考えであれど、すでに勝負は我の手から離れてるのだ。事前にやれるだけの事はやったのだ。後は祈るしかないな……アーデル達の勝利を」
クズ達はブリギッテ達の不在を最大のチャンス到来と思ってそうだが、1周目も合わせて60年も油断ならない国政を取り仕切ってきたブリギッテは全く甘くない。
帰国するアーデル達のために爆弾をあちらこちらに仕掛けておいたのだ。
下手すればアーデル達も爆発に巻き込まれて大やけどを負う可能性はあれど、上手く起爆させればクズ達のような王国に寄生する害虫を一網打尽に出来るだろう。
ブリギッテの置き土産をどう扱うかはアーデル達次第である。
“アーデル嬢……それにクラーラ嬢……できるなら貴女達に親世代の負の遺産を押し付けたくはなかった。だが、国の改革は年寄り世代ではなく若手世代が行う者こそがふさわしい。誠に勝手ながら、この政争に見事勝利して王国を良い意味で変えてくれることを遠い地から願っているぞ”
そんな想いを抱きつつ、長湯し過ぎてのぼせてきたブリギッテは湯舟からあがる。
周囲をみれば宰相達はまだハーレムを堪能中でシムス婆やは他グループの年寄りと世間話で盛り上がり中。
邪魔をするのは無粋と思いつつも、ハーレムのお酌要員が持っていた酒瓶を拝借。ラッパ飲みで空にしつつ『奥さん達にばれないといいな』なんて冷や水となりかねない一言を告げながら温泉を後にするのであった。
次は騒動の落としどころを付けるための使者を迎える前の下準備としてブリギッテはゼーゼマン伯爵にあるONEGAIGOTOをした。
「ゼーゼマン伯爵。私は貴方を宰相に推薦したいから、まず馬鹿やらかした愚物の処刑。一家郎党皆殺しは貴方から提案した事にしなさい」
「へっ?」
ゼーゼマン伯爵にとっては寝耳に水だろうが、未来を知るブリギッテはゼーゼマン伯爵を高く評価していた。
まぁ正確にいえば、評価してるのは今の当主ではなく次の当主となる息子。
彼は1周目に起きた戦乱の中でも奮闘して王国を維持できる程の手腕を発揮したのだ。
今後を見据えての懐柔であるも、現当主はブリギッテの意をすぐに組んで行動してくれた辺り、息子と負けず劣らずに優秀だった。
こうしてゼーゼマン伯爵が表向き主導する形で開始された帝国との交渉はおおむねの予定通り……
王国側が全面的に非を認める土下座外交に皇帝が慈悲を見せた形で終わった。
もちろん裏では様々な思惑が絡んでいるも、互いの国の内情をここで詳しく語る必要性はないだろう。
なので語る出来事は一つ。
当初のブリギッテは王国を帝国に明け渡して庇護下に入ると打診するも、皇帝から却下された事だ。
皇帝は今回の事件。皇太子殺害には帝国側の不穏分子が関わっているのではという、当たらずとも遠からずな予想を立てていた。
そのため、あえて王国に必要以上の穏便な処置を取る事でその不穏分子をあぶりだす腹積もりだった。
ブリギッテもその不穏分子には心当たりがあるというか、1周目はそいつらのせいで散々苦汁をなめさせられたのだ。
それらを皇帝自らが処分してくれるなら万々歳。素直に王国存続の話を承諾したのである。
以後の出来事は又聞きであるも、不穏分子にとってはこの予想外な交渉結果での焦りから皇帝の張っていた網に自ら飛び込む失態を侵した。
そうして捕らえられた不穏分子達は拷問にかけられてあらゆる情報を吐かされたの後に皇帝自らが処分……首をねじ切って処刑という娘と全く同じ事やってたそうだ。
………………
「同じことといっても、さすがに股間のピーをあれするまではやってないらしいがな」
意識を再度現実へと戻したブリギッテはこの30年の流れを思い返す。
帝国は皇太子の死に不信感こそ残るも陰謀の証拠が見つからず結局は愚者の暴走として処置。不穏分子を片付けた事で風通しのよくなった帝国は新たな皇太子との代替わりを滞りなく終わらすも、帝国内に魔王が降臨という1周目にはなかった特大のトラブルが発生。
そのせいで帝国内に少なくない被害はでてしまったが、各国とは対魔王共同戦線という名目で次々と休戦と不可侵条約が成立。ある意味では魔王のおかげで泥沼のような戦乱の世が回避されたわけだ。
もちろんこの流れは神々による作為的なものであるようだが、人の身でこれ以上神の事情に踏み込むのはお勧めしないと死神のアンコから忠告された事もあって早々に思考を打ち切った。
次に思い返すのは王国で過ごした30年。
ブリギッテは王家最後の生き残りとなったトビアスと婚約し、王太子妃でありながら王代理として1周目で培った手腕を遺憾なく発揮。その中でも新たな交易路を開拓できたのは大きかったといえる。
先日の卒業式に集った各国代表からもフランクフルト王国を交通の要所として認識。ぜひとも懇意になりたい、繋がりたいとの声が聞こえる程度には王国の価値をあげる事が出来たといえるだろう。
ただ、統治面ではトビアスからの夜伽を拒否されたり、一度は一掃した愚者を再度台頭させてしまったりと不備が多い。
「やはり、政治というのはままならないものだ……」
この2周目では戦乱の世を回避する事に成功したが、王国の統治は失敗したと思う部分が多数ある。ふと気付けば、ついつい『もしあの時こうしておけば……』なんて考えてしまう。
それでも……もう一度やり直したいとは思わない。
1周目と違って、今はまだ手遅れでないと信じているからだ。
「そういえば宰相は言っていたな……賭けに勝つコツは最後の瞬間まで勝利を疑わないこと……為政者としては危険な考えであれど、すでに勝負は我の手から離れてるのだ。事前にやれるだけの事はやったのだ。後は祈るしかないな……アーデル達の勝利を」
クズ達はブリギッテ達の不在を最大のチャンス到来と思ってそうだが、1周目も合わせて60年も油断ならない国政を取り仕切ってきたブリギッテは全く甘くない。
帰国するアーデル達のために爆弾をあちらこちらに仕掛けておいたのだ。
下手すればアーデル達も爆発に巻き込まれて大やけどを負う可能性はあれど、上手く起爆させればクズ達のような王国に寄生する害虫を一網打尽に出来るだろう。
ブリギッテの置き土産をどう扱うかはアーデル達次第である。
“アーデル嬢……それにクラーラ嬢……できるなら貴女達に親世代の負の遺産を押し付けたくはなかった。だが、国の改革は年寄り世代ではなく若手世代が行う者こそがふさわしい。誠に勝手ながら、この政争に見事勝利して王国を良い意味で変えてくれることを遠い地から願っているぞ”
そんな想いを抱きつつ、長湯し過ぎてのぼせてきたブリギッテは湯舟からあがる。
周囲をみれば宰相達はまだハーレムを堪能中でシムス婆やは他グループの年寄りと世間話で盛り上がり中。
邪魔をするのは無粋と思いつつも、ハーレムのお酌要員が持っていた酒瓶を拝借。ラッパ飲みで空にしつつ『奥さん達にばれないといいな』なんて冷や水となりかねない一言を告げながら温泉を後にするのであった。
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