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31.精神だけは若返る気がしないな(SIDE:ブリギッテ)
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私は惚けてしまった。
一体何が起きたのかわからない。
本当にわからない。
頭がおかしくなって死にそう……
いや、おかしくなる依然にもう死んでるからそんな表現はおかしいっと思ってると……
ザシュッ!!
血しぶきが舞った。
自分のではない別人の血が舞った。
一体誰の血?!
城内に最早私の味方は居ない。
唯一残っていた婆やは皇帝戦との前座として戦い、最期の姿をこの目で見届けたのだ。
普通に考えれば、私を庇う者なんて居るわけない。
だが……今はその『普通』では考えつかないような現象が現実に起きていた。
なにせ、私を庇ったのは……
……
…………
………………
……さま
…リ…ッテ様
ブリギッテ……様……
ブリギッテ様
「はっ!?」
身体をガクガクと揺すられた衝撃でブリギッテは目を覚ました。
一体何があったのか周囲を見渡すと、隣には婆やが……
夫であるドム爺と共に、夫婦で幼少期から傍仕えをしていてくれたシムス婆やがにこやかな顔で覗き込んでいた。
「起きましたか?温泉の湯舟で寝入ってしまうなんて、よっぽどお疲れだったんですねぇ……」
「温泉……?」
「寝ぼけてますか?ここは療養地ですよ。ほら、一週間前の卒業式の後にアーデル様達のおせっかいで手配してくれた」
「あーあーあー思い出してきたぞ。その際、婆やが軽く『温泉に入りたいわねぇ……』なんてぼやいたせいで温泉がある療養地行きに……」
「ふふふ……夫と共に今まで数多くの温泉を巡ってきましたが、この湯だけは別格です。なんていいますか、心身ともに若返りそうで……ブリギッテ様もそう思いませんか?」
「う~む……言われてみれば若返りそうだが……」
精神だけは若返る気がしないな。
ブリキッテは実年齢こそ48歳であるも、前世……1周目で生きた時間を合わせば丁度2倍。
96歳になってしまう。
実年齢より老けて見えるのは、96歳に達した老獪な精神性が表に出てしまうからなのだろう。
(昔は肉体年齢と精神年齢が一致せず戸惑う事もあったが、年齢を重ねれば自然と違和感もなくなるものだ)
ブリギッテはそう心の中でぼやきながら、目を閉じて心地よい湯に身体を委ねながら先ほどの夢の続き……
やり直し直前から直後、過去を遡った瞬間を思い出す。
………………
最初は本当にわけがわからなかった。
自分は帝国の謁見の間で死んだはずなのに、気が付けば30年前のあの日。
自分の婚約者に婚約破棄どころか剣すらも向けられたあの日……
とっさに躍り出た皇太子でもある実兄が殺された、あの瞬間に戻ったのだ。
一体自分の身に何が起きたのか……
過去へと戻るにしてもなぜあんなタイミングだったのか、惚けている最中に宙で佇んでいた死神。アンコと名乗った死神が兄の魂を回収のついでとばかりに説明してくれた。
曰く、あのタイミングがもっとも都合よかったそうだ。
一体なんのタイミングかと問い返したら答えられないと返されるも、他の事柄……
一周目に起きていた世界情勢はある神々の一派が介入した事で改変させられたものだと教えられた。
そのせいであの後の未来は……帝国が滅びた後は終わる気配のない戦乱の世が続いたそうだ。
戦乱のせいで世界が荒れ、死者が溢れるほどに増えた。そのせいで、死者の魂を回収する死神の仕事量が青天井。働いても働いても終わりがみえない回収作業に死神達はうんざり。そこへ発端が人間の愚かな行為ではなく……戦乱を起こしたかった神々の独断先行だと知るや否やぶちぎれ。
神が人の世に介入するには諸々の手続きを経なければ出来ないという定めを破っての行い。人のためではなく、自身の欲を満たす私利私欲な行いには死神だけでなく他の神々も激怒。
連名で抗議するも、元凶の神々は全く取り合わないどころか戦乱を利用して得た『力』を元に脅迫。ここまでされれば、『よろしい!ならば戦争だ!!』と宣戦布告まで起こしかねない事態にまで発展した。
神同士での大規模な争いは余波で人の世が消し飛ぶ恐れがあるため、本来なら厳しく禁じられる行為。だが、元凶の神々の振る舞いにぶちぎれてた神たちは『人の世の配慮なんか知らん!!』っとばかりに開戦しようと主張するぐらいの気運が高まってしまったそうだ。
最早世界が滅ぶの待ったなしな緊迫した状況の中、一人の死神がある提案を行った。
曰く、ある者を過去に戻して戦乱が訪れる未来を改変させてもらえばどうか
その『ある者』として選ばれたのがブリギッテであり、いわば死神の都合で強制的に二周目の人生を歩む羽目になったわけだ。
……
…………
………………
「過去を変えれるのは私にとっても渡りに船だったわけだけど、前世の話を他者にしてはいけないとは……出来ていればもっと楽が出来たというのに」
現実でぼやくついでに一時目を開けて周囲を見渡す。
この温泉は混浴であり、共についてきた王国の重役達が男女問わず各々のやり方でくつろいでいる。
その中で一番目につくのは宰相とその一派だろう。彼等はビキニを着た数名の若手女性従業員に接待されており、その様はまさにハーレムだった。
通常であれば下賤と言わざるを得ない行為ながらも、あれは元々のサービスとして用意されてたのだ。彼等はあくまでサービスを受けているだけなので、一線を超えない限りは黙認する事とした。
「そういえば、最後にこうゆったりと羽を伸ばしたのは一体いつだったか……」
1周目の人生は帝国の皇帝として戦争に次ぐ戦争で生きるか死ぬかの30年だったのに対し、2周目では王国の王代理として戦争ではなく政争に明け暮れた30年。
その間の60年は温泉でゆっくり寛ぐなんて機会はまずなかった。
ブリギッテは再度湯に身体を委ねながら新たな30年の日々の序章ともいえる、2周目直後の出来事を振り返るのであった。
一体何が起きたのかわからない。
本当にわからない。
頭がおかしくなって死にそう……
いや、おかしくなる依然にもう死んでるからそんな表現はおかしいっと思ってると……
ザシュッ!!
血しぶきが舞った。
自分のではない別人の血が舞った。
一体誰の血?!
城内に最早私の味方は居ない。
唯一残っていた婆やは皇帝戦との前座として戦い、最期の姿をこの目で見届けたのだ。
普通に考えれば、私を庇う者なんて居るわけない。
だが……今はその『普通』では考えつかないような現象が現実に起きていた。
なにせ、私を庇ったのは……
……
…………
………………
……さま
…リ…ッテ様
ブリギッテ……様……
ブリギッテ様
「はっ!?」
身体をガクガクと揺すられた衝撃でブリギッテは目を覚ました。
一体何があったのか周囲を見渡すと、隣には婆やが……
夫であるドム爺と共に、夫婦で幼少期から傍仕えをしていてくれたシムス婆やがにこやかな顔で覗き込んでいた。
「起きましたか?温泉の湯舟で寝入ってしまうなんて、よっぽどお疲れだったんですねぇ……」
「温泉……?」
「寝ぼけてますか?ここは療養地ですよ。ほら、一週間前の卒業式の後にアーデル様達のおせっかいで手配してくれた」
「あーあーあー思い出してきたぞ。その際、婆やが軽く『温泉に入りたいわねぇ……』なんてぼやいたせいで温泉がある療養地行きに……」
「ふふふ……夫と共に今まで数多くの温泉を巡ってきましたが、この湯だけは別格です。なんていいますか、心身ともに若返りそうで……ブリギッテ様もそう思いませんか?」
「う~む……言われてみれば若返りそうだが……」
精神だけは若返る気がしないな。
ブリキッテは実年齢こそ48歳であるも、前世……1周目で生きた時間を合わせば丁度2倍。
96歳になってしまう。
実年齢より老けて見えるのは、96歳に達した老獪な精神性が表に出てしまうからなのだろう。
(昔は肉体年齢と精神年齢が一致せず戸惑う事もあったが、年齢を重ねれば自然と違和感もなくなるものだ)
ブリギッテはそう心の中でぼやきながら、目を閉じて心地よい湯に身体を委ねながら先ほどの夢の続き……
やり直し直前から直後、過去を遡った瞬間を思い出す。
………………
最初は本当にわけがわからなかった。
自分は帝国の謁見の間で死んだはずなのに、気が付けば30年前のあの日。
自分の婚約者に婚約破棄どころか剣すらも向けられたあの日……
とっさに躍り出た皇太子でもある実兄が殺された、あの瞬間に戻ったのだ。
一体自分の身に何が起きたのか……
過去へと戻るにしてもなぜあんなタイミングだったのか、惚けている最中に宙で佇んでいた死神。アンコと名乗った死神が兄の魂を回収のついでとばかりに説明してくれた。
曰く、あのタイミングがもっとも都合よかったそうだ。
一体なんのタイミングかと問い返したら答えられないと返されるも、他の事柄……
一周目に起きていた世界情勢はある神々の一派が介入した事で改変させられたものだと教えられた。
そのせいであの後の未来は……帝国が滅びた後は終わる気配のない戦乱の世が続いたそうだ。
戦乱のせいで世界が荒れ、死者が溢れるほどに増えた。そのせいで、死者の魂を回収する死神の仕事量が青天井。働いても働いても終わりがみえない回収作業に死神達はうんざり。そこへ発端が人間の愚かな行為ではなく……戦乱を起こしたかった神々の独断先行だと知るや否やぶちぎれ。
神が人の世に介入するには諸々の手続きを経なければ出来ないという定めを破っての行い。人のためではなく、自身の欲を満たす私利私欲な行いには死神だけでなく他の神々も激怒。
連名で抗議するも、元凶の神々は全く取り合わないどころか戦乱を利用して得た『力』を元に脅迫。ここまでされれば、『よろしい!ならば戦争だ!!』と宣戦布告まで起こしかねない事態にまで発展した。
神同士での大規模な争いは余波で人の世が消し飛ぶ恐れがあるため、本来なら厳しく禁じられる行為。だが、元凶の神々の振る舞いにぶちぎれてた神たちは『人の世の配慮なんか知らん!!』っとばかりに開戦しようと主張するぐらいの気運が高まってしまったそうだ。
最早世界が滅ぶの待ったなしな緊迫した状況の中、一人の死神がある提案を行った。
曰く、ある者を過去に戻して戦乱が訪れる未来を改変させてもらえばどうか
その『ある者』として選ばれたのがブリギッテであり、いわば死神の都合で強制的に二周目の人生を歩む羽目になったわけだ。
……
…………
………………
「過去を変えれるのは私にとっても渡りに船だったわけだけど、前世の話を他者にしてはいけないとは……出来ていればもっと楽が出来たというのに」
現実でぼやくついでに一時目を開けて周囲を見渡す。
この温泉は混浴であり、共についてきた王国の重役達が男女問わず各々のやり方でくつろいでいる。
その中で一番目につくのは宰相とその一派だろう。彼等はビキニを着た数名の若手女性従業員に接待されており、その様はまさにハーレムだった。
通常であれば下賤と言わざるを得ない行為ながらも、あれは元々のサービスとして用意されてたのだ。彼等はあくまでサービスを受けているだけなので、一線を超えない限りは黙認する事とした。
「そういえば、最後にこうゆったりと羽を伸ばしたのは一体いつだったか……」
1周目の人生は帝国の皇帝として戦争に次ぐ戦争で生きるか死ぬかの30年だったのに対し、2周目では王国の王代理として戦争ではなく政争に明け暮れた30年。
その間の60年は温泉でゆっくり寛ぐなんて機会はまずなかった。
ブリギッテは再度湯に身体を委ねながら新たな30年の日々の序章ともいえる、2周目直後の出来事を振り返るのであった。
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