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第一章 逆断罪劇からのクズざまぁ編
27.負けた……これ以上ないぐらい、完璧に……(SIDE:ウール)
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商談開始から30分後……
ツヤツヤとした至福顔なクラーラとは対照的に、ウールは机に突っ伏して白目を向いたまま口から魂を半分吐き出していた。
「負けた……これ以上ないぐらい、完璧に……」
「それは当然かと。なにせクラーラ様は世界を股にかけた商売を行う大商会の跡取り息子の婚約者にふさわしくあろうと、各地を巡って多数の新規商談を取り付けてます。こんな小国で前任者から引き継いだ取引しか行ってないであろうウール様とは覚悟も経験も、何もかもが足りないのです」
目の前にコトリとお茶を置きながら、淡々と伝えるクラーラお付きのメイド。
特に描写を入れなかったが、クラーラは立場的に単独行動できるような身分ではないためお付きの者を3人ほど引き連れていた。
その内の一人がクラーラの命令で真っ白に燃え尽きたウールを介護するため残されたのだ。
その理由は……
「リーメ。妹のお前から様付けされると落ち着かないんだが……」
メイドがあの日、貴族子息ともめごとを起こしていたウールの妹、リーメだからである。
「妹といっても……俺たちの間に血の繋がりねーけどな」
「わかってる。教会でもそう判定されたが、アーデル様やクラーラみたいな例もあるんだ。俺たちにとって血の繋がりなんて些細な事だろ」
「些細な事なわけないだろ……っと言っても、俺達にとってはやっぱり些細な事か」
そう言いながら、先ほどまでクラーラが座っていた椅子に腰掛けるリーメ。
スカートが翻るのもお構いなしで足を組み、椅子の片側を浮かせながら頬杖をつくその姿は完全に不良メイドであるも、この場は二人っきり。
誰も見てないなら問題ないっという寸法である。
「いや、さすがに男の前でその姿勢はどうかと思うぞ」
「大丈夫だ。こんな素の姿はもう兄貴をはじめとする、孤児院の皆の前ぐらいでしかみせる気ねーからな」
「そ、そうか……ならいいのか?」
なんだか釈善としないものを感じつつも、リーメはつい先ほどまでは礼儀正しいメイドとしての姿勢を崩さなかったのだ。
それに主人であるクラーラもよく貴族令嬢らしからぬ態度を取るわけだし、そもそもこの国を一時的に牛耳っているアーデル達の素が悪ふざけ大好きなノリの良い集団。上が許容してるなら下も問題ないっと無理やり思い込むことにした。
「……しかし、こうやってみるとお前は外面や身体こそ成長してても中身は全く変わってないよな」
リーメはあの日、貴族の子息……フェルトを投げ飛ばしたクラーラの振る舞いに憧れを抱いた事もあって付き人になる道を選んだ。
当初はクラーラみたいな自由本儚な人間になるのではっと心配するも、クラーラは貴族令嬢としての教育を受けていた事もあって公の場では淑女然とする。
お付きの者にもそれ相応の振る舞いが義務付けられている事もあって、教育を受けたリーメは侍女まではいかずともメイドとしてのお付きが認められる程となった。
クラーラが王都を出ての行商に出る時も供をするため、会うのはクラーラが王都まで戻ってきた時しかない。
それに、会うといっても2か月前にウールが王宮勤めとなってからは余りの忙しさ故にゆっくり話をする時間が取れなくなった。
クラーラもそんな二人に配慮して、こうして話す時間を作ってくれたのだろう。
クラーラのおせっかいに感謝しつつ、ウールは改めてリーメをみる。
リーメはクラーラの一つ下の16歳という成長期真っ只中なため、身体の成長は本当に著しいものがある。
「そういう兄貴もな。王宮で良い物食べさせてもらってるおかげで一段と肥えたようだけど、クラーラに手玉とされてるところは昔とまんまじゃないか」
「うぐぅ……どちらも言い返せないところが辛い」
リーメからの指摘通り。体形に関しては少しでも貫録がでればっと思ってのものであり、そのおかげで少しは自信にもつながったように思ってたが、実際は思っていただけ。商談ではウールの努力をあざわらうかのごとく、終始クラーラにペースをつかまれたまま、完全に手のひらで踊らされたままだったのだ。
「それで……聞いてみるが、こんな予算で大丈夫なのか?俺は頭悪いといっても、これはまずいって事ぐらいわかるぞ」
「あぁ……確かに一見すれば相場の半分以下な低予算だな。だが、これでいいんだよ」
「どうしてだ?特に人件費がこれだと業者やスタッフを満足に雇う事すら出来ないじゃないか」
「それが狙いだ。今回の懇親会はクズが強権で無理やり開催するもの。例え無茶な日程で碌に賃金がもらえずとも王命なので逆らう事が許されない……つまり、業者やスタッフの不満を全てクズに向かわせる寸法さ」
「なるほど……でも本当に賃金を払わないつもりなのか?」
「それもない。クラーラの事だしクズに宝石とか強請ってそれで補填させるつもりだろう。それで、周囲にはクズが懇親会で使われるはずだった費用を横領してクラーラに貢いだっという事実を広めさせる腹積もりなんだろうな」
「それはまた……えげつねーな」
「全くだよ。アーデル様やロッテン様とは方向性が違えど、クラーラも十分怒らせたらやばい事には変わらない。共通して女は怒らせたら怖いよなぁ……」
「それに関しては俺も同感するぞ」
そんな二人の視線は扉の隙間からみえるクラーラに……
財務部長の机で様々な資料を見ながらあれやこれやっと指示を飛ばしてるクラーラに向けられた。
ツヤツヤとした至福顔なクラーラとは対照的に、ウールは机に突っ伏して白目を向いたまま口から魂を半分吐き出していた。
「負けた……これ以上ないぐらい、完璧に……」
「それは当然かと。なにせクラーラ様は世界を股にかけた商売を行う大商会の跡取り息子の婚約者にふさわしくあろうと、各地を巡って多数の新規商談を取り付けてます。こんな小国で前任者から引き継いだ取引しか行ってないであろうウール様とは覚悟も経験も、何もかもが足りないのです」
目の前にコトリとお茶を置きながら、淡々と伝えるクラーラお付きのメイド。
特に描写を入れなかったが、クラーラは立場的に単独行動できるような身分ではないためお付きの者を3人ほど引き連れていた。
その内の一人がクラーラの命令で真っ白に燃え尽きたウールを介護するため残されたのだ。
その理由は……
「リーメ。妹のお前から様付けされると落ち着かないんだが……」
メイドがあの日、貴族子息ともめごとを起こしていたウールの妹、リーメだからである。
「妹といっても……俺たちの間に血の繋がりねーけどな」
「わかってる。教会でもそう判定されたが、アーデル様やクラーラみたいな例もあるんだ。俺たちにとって血の繋がりなんて些細な事だろ」
「些細な事なわけないだろ……っと言っても、俺達にとってはやっぱり些細な事か」
そう言いながら、先ほどまでクラーラが座っていた椅子に腰掛けるリーメ。
スカートが翻るのもお構いなしで足を組み、椅子の片側を浮かせながら頬杖をつくその姿は完全に不良メイドであるも、この場は二人っきり。
誰も見てないなら問題ないっという寸法である。
「いや、さすがに男の前でその姿勢はどうかと思うぞ」
「大丈夫だ。こんな素の姿はもう兄貴をはじめとする、孤児院の皆の前ぐらいでしかみせる気ねーからな」
「そ、そうか……ならいいのか?」
なんだか釈善としないものを感じつつも、リーメはつい先ほどまでは礼儀正しいメイドとしての姿勢を崩さなかったのだ。
それに主人であるクラーラもよく貴族令嬢らしからぬ態度を取るわけだし、そもそもこの国を一時的に牛耳っているアーデル達の素が悪ふざけ大好きなノリの良い集団。上が許容してるなら下も問題ないっと無理やり思い込むことにした。
「……しかし、こうやってみるとお前は外面や身体こそ成長してても中身は全く変わってないよな」
リーメはあの日、貴族の子息……フェルトを投げ飛ばしたクラーラの振る舞いに憧れを抱いた事もあって付き人になる道を選んだ。
当初はクラーラみたいな自由本儚な人間になるのではっと心配するも、クラーラは貴族令嬢としての教育を受けていた事もあって公の場では淑女然とする。
お付きの者にもそれ相応の振る舞いが義務付けられている事もあって、教育を受けたリーメは侍女まではいかずともメイドとしてのお付きが認められる程となった。
クラーラが王都を出ての行商に出る時も供をするため、会うのはクラーラが王都まで戻ってきた時しかない。
それに、会うといっても2か月前にウールが王宮勤めとなってからは余りの忙しさ故にゆっくり話をする時間が取れなくなった。
クラーラもそんな二人に配慮して、こうして話す時間を作ってくれたのだろう。
クラーラのおせっかいに感謝しつつ、ウールは改めてリーメをみる。
リーメはクラーラの一つ下の16歳という成長期真っ只中なため、身体の成長は本当に著しいものがある。
「そういう兄貴もな。王宮で良い物食べさせてもらってるおかげで一段と肥えたようだけど、クラーラに手玉とされてるところは昔とまんまじゃないか」
「うぐぅ……どちらも言い返せないところが辛い」
リーメからの指摘通り。体形に関しては少しでも貫録がでればっと思ってのものであり、そのおかげで少しは自信にもつながったように思ってたが、実際は思っていただけ。商談ではウールの努力をあざわらうかのごとく、終始クラーラにペースをつかまれたまま、完全に手のひらで踊らされたままだったのだ。
「それで……聞いてみるが、こんな予算で大丈夫なのか?俺は頭悪いといっても、これはまずいって事ぐらいわかるぞ」
「あぁ……確かに一見すれば相場の半分以下な低予算だな。だが、これでいいんだよ」
「どうしてだ?特に人件費がこれだと業者やスタッフを満足に雇う事すら出来ないじゃないか」
「それが狙いだ。今回の懇親会はクズが強権で無理やり開催するもの。例え無茶な日程で碌に賃金がもらえずとも王命なので逆らう事が許されない……つまり、業者やスタッフの不満を全てクズに向かわせる寸法さ」
「なるほど……でも本当に賃金を払わないつもりなのか?」
「それもない。クラーラの事だしクズに宝石とか強請ってそれで補填させるつもりだろう。それで、周囲にはクズが懇親会で使われるはずだった費用を横領してクラーラに貢いだっという事実を広めさせる腹積もりなんだろうな」
「それはまた……えげつねーな」
「全くだよ。アーデル様やロッテン様とは方向性が違えど、クラーラも十分怒らせたらやばい事には変わらない。共通して女は怒らせたら怖いよなぁ……」
「それに関しては俺も同感するぞ」
そんな二人の視線は扉の隙間からみえるクラーラに……
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