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第一章 逆断罪劇からのクズざまぁ編

10.アーデルの怒りは有頂天(SIDE:アーデル) ※ クズ1度目のざまぁ回

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 結論からいえば、デルフリは死にかけた。


 もうどこに怒りポイントがあるか判明できない、ありすぎて一つに絞れないほどのふざけた発言にアーデルの怒りは有頂天。

 夢見がちだった乙女心を完全にぶち壊したのだ。
 悲しみよりも怒りが勝ったアーデルは直情のままに……


 大人達がデルフリ……いや、クズを諫めるよりも先に動いた。








竜巻攪拌器ハリ〇ーンミ〇サー!!」



 ドゴン!!!



 怒り狂った猛牛を思わせるような突進を受けたクズはきりもみ回転しながら空高く宙を舞う。
 このままでは満足に受け身も取れず頭から地面に激突するであろうも、そんな結末をアーデルは許さない。



「もういっちょ!!」

 ドゴン!!!


 地面へと激突する前にUターンで舞い戻ってきたアーデルが再度激突して跳ね飛ばす。
 再度きりもみ回転しつつ地面へと落下するも……



「もういっちょ!!」

 ドゴン!!!


 やはり舞い戻ってきたアーデルに跳ね飛ばされ……



「もういっちょ!!」

 ドゴン!!!


「もういっちょ!!」

 ドゴン!!!



 都合5回の跳ね飛ばしを繰り返した後にアーデルはフィニッシュとばかりに飛び上がる。真正面からがしっとクズの両手首を掴んで左右に広げて固定。



「とどめのスーパー超人クロスフォール+字架落とし!!」


 クズを十字架に見立てた形でホールドさせたまま自身諸共ひっくり返る。
 後はこのまま自身の体重を加えてクズの脳天を地面に突き刺す。





 これで全て終わるはずであった。


 少なくとも、この技が決まれば身体を鍛えた事なんてないであろう貧弱なクズ王太子は絶命する。

 自分自身が墓標となり、自身のまき散らした血でもって綺麗な死に花を咲かせるであろう事は誰でも予測できるも……




 先ほど『死にかけた』と称した通り技は不発。





「そこまでだ娘よ!!親父のダイナマイトキーック!!」

「ぐべぇ!?」


 激突前に父が放ったドロップキックでカットされたせいで技は空中分解。
 アーデルがクズのクッションになる形で地面に激突する自爆技に変換されたのだ。

 まぁそれでも竜巻攪拌器ハ〇ケーンミキ〇ーグォレンダァ!でクズの意識は完全に飛んでいた。息も絶え絶えだったわけだし、お仕置きであればもう十分。


 アーデルの溜飲は下がるも……



 事態はそれで終わらない。


 いくらクズ側に責はあっても即座に半殺しを通り越した⑨割殺しはやりすぎだった。
 制裁にしても最低限の礼儀……

 せめて一声ぐらいは忠告を与えてからやるべきだっと王妃はもとより父からも怒られた。


 当初は「なぜ!?」という想いはあっても、アーデルは後に知った。


 辺境では見ることのなかったキラキラとした世界を……

 裏ではともかく表向きは華やかな社交界を……

 自分と同年代の女の子達が綺麗に着飾った、洗練された姿を……


 アーデルは思い知らされた。
 目から鱗が落ちるかのごとき勢いでわからさられた。

 自分が如何に狭い世界を生きてきたかを……





 辺境という井の中から王都という大海に飛び出したアーデルは変わった。
 即座に鉄拳制裁するような、まさに田舎者な乱暴者と言わんばかりの流儀を封印して王宮の洗練された流儀を習った。

 当初は慣れない淑女の振る舞いに戸惑い、何度もやらかしを行った。そのたびに周囲から笑われ、時には馬鹿にされつつも未来の王妃として王国を支える覚悟を決めていたアーデルは腐る事なく努力を続けた。


 15の頃には側近候補達とともに帝国の学園へと留学。真の実力主義を掲げる校風の元に出身地も身分も全く関係ない学友達と様々な友情を織りなす青春ドラマを繰り広げた。

 そんな3年の学園生活のラストを飾る卒業式を迎える頃には……

 婚約してから約8年の歳月が過ぎた頃に爆誕したのは、おつむや立ち振る舞いは学年300人中50位内と優秀だけど国の代表としては少々物足りないながらも戦闘力に関しては学年トップ。近衛騎士どころかチート勇者すらも倒した、姫騎士ともいうべき王太子妃であった。

 幼少期からよく動きよく食べるを実践してきたせいで身長も高く、モリモリではなくとも華奢な貴族子女と比べればあからさまに筋肉のついたその肢体は淑女と呼ぶには無理ありすぎ。

 だが、この世界には魔物の脅威が存在する。
 平穏と暮らしてる間にも世界のどこかでは魔物のせいで壊滅する村がある程に物騒なので、戦闘力は誇れるステータスの一つなのだ。
 多少頭脳面や立ち振る舞いに難があっても、高い戦闘力の保持。さらに弱きを助け強きを挫く精神性は欠点を補って有り余る長所っと周囲からは好意的に捉えられて高い評価を受けていた。


 暴力とは無縁な淑女を目指してた当人からしてみれば『どうしてこうなった……』と少々不満ありなのだが……
 皆から頼りにされて親しまれるのは為政者として立派な素質だと帝国の皇帝直々に論された事あって、今の自分を素直に受け入れる事とした。



 対してクズ王太子だったデルフリはというと……

 まるで成長していなかった。
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