8 / 229
第一章 逆断罪劇からのクズざまぁ編
7.必死に土下座して許しを請うた(SIDE:アーデル)
しおりを挟む
同盟国の皇太子を戦場とはほど遠い祝いの席で斬り殺すという、前代未聞ともいうべき大事件を引き起こした当時の王太子とその取り巻き達。
ここで王国は王太子達を即座に処分を下せばよかった。
例え謹慎という軽い処分でも反省の意があれば、まだ幾分かマシだった。
だが、王を筆頭とした側近達の親は愚かだった。
彼等は子ども可愛さから諸々のやらかしを婚約者と皇太子、つまり帝国側の責にしたのだ。
帝国の外交官に堂々と皇太子と皇女を侮辱して慰謝料を請求する姿は常識……いや、見識ある者がみれば狂気の沙汰。手の込んだ自殺にしかみえなかっただろう。
当然ながら帝国の皇帝陛下はぶちぎれた。宣戦布告と同時にフランクフルト王国へ大軍勢を送り込んで破壊の限りを尽くすのは確定的に明らか。
フランクフルト王国の命運は完全に尽きたっと思われるも……
帝国との独自パイプを持っていたゼーゼマン伯爵家が宣戦布告される前に王太子や王をはじめとする、愚か者達を一家郎党皆殺しにした。
例えそれが謀反とも捉えかねない乱暴な手段であっても、帝国から派遣された宣戦布告の使者の権幕からみて間違ったものでなかっただろう。
ゼーゼマン伯爵家の者達は使者に愚物達の首を差し出しながら、必死に土下座して許しを請うたわけだ。
その土下座には皇帝陛下の娘であるブリキッテ第四皇女も混ざっていた事もあってか、宣戦布告を取り下げる最後のチャンスとなる交渉の席が設けられ……首皮一枚もいいところな綱渡り交渉の末に賠償金こそ課せられるも王国としての存続だけでなく、同盟の継続という寛大過ぎる処分で済まされた。
もちろん、それらには様々な政治的思惑や判断がある。
一つ目として斬り殺された皇太子はまだ任命されて間もない、研修中ともいえる立場だった事。
帝国は侵略戦争の末に手に入れた属国を多数持つ関係上、恨みもそれなりに買っている。皇帝にはそれら悪意や殺意を跳ね返すだけの力が必須なのだ。
非情になれとは言わないので妹をかばう事自体問題なくとも、かばった末で命を落とすのはあまりにもうかつで脆弱すぎである。これでは皇帝の座に付こうとも遅かれ早かれ殺されるのは目に見える。厳しいようであっても奴は所詮それまで……っと評価せざるを得ない。
よって皇太子殺害の件も帝国目線でみればそれほど罪深いものでない。皇帝も親として怒りの感情を全面に出して糾弾するのは、国の頂点に立つ者としては愚か過ぎる自覚がある。なので、その件に関しての怒りを抑えていた。
怒り狂ったのは皇女の卒業式という祝いの場で皇太子を殺害しておきながら、それを帝国側の責にする面の厚かましさによるものだ。
これを許せば、帝国自体が舐められる。皇帝も親としてではなく帝国そのものの怒りを全面に押し出した厳しい処断を示さなければ落とし前がつかない。
その落とし前も先んじて首謀者とその関わりがあった者達の一族の首を差し出されれば、名目上で面目はついたのだ。
宣戦布告の取り下げ理由として十分であろう。
二つ目として同盟継続に関しては、そもそも帝国には王国を支配下に置くメリットがあまりないという点がある。
帝国側からみた王国は小国。立地は海を隔てた遠い飛び地であり、陸の孤島ともいうべき僻地だ。往来には多大なコストがかかる上、王国領にこれといった特産がないから支配しても管理するリソースに見合ったリターンが得られない。
そして、三つ目につながるが、フランクフルト王国は1000年以上の歴史を持つ由緒正しい国だ。
対して帝国はまだ100年ほどの歴史しかない新興の国。広大な大陸の約8割を支配するほどの強大な大国であっても、歴史の浅さは外交での弱点である。
それを補うために目をつけたのが1000年以上の歴史を持つフランクフルト王家の血縁。中身は腐ってようとも使い道次第ではそれなりに価値がある。
だからこその婚約。第四皇女ブリギッテとフランクフルト王国王太子との婚約を条件とした同盟という、侵略を是とする帝国側からしたら穏便な友好関係を打診したわけだ。
結果として第四皇女は王太子に冤罪からの婚約破棄という散々な目にあうどころか、兄の皇太子を斬り殺されるというとんでもない裏切りにあうも……
第四皇女は寛大な処置を求めた。
これは王太子と良い関係を築けなかった事と……
何より自分の甘さや皇族としての自覚のなさ、自身の責を認めたうえで挽回のチャンスを求めた。
その願いは上記理由……元々支配する利点がないからこその同盟であり、今ここでの破棄は今までの投資を無に返す事に繋がる。
婚約破棄での侮辱や皇太子殺害の落とし前はすでについており、損害も賠償金で補えた。
加えて王位継承権を持つ男児。王妹の息子を生かしたままであった。彼はまだ7歳と幼かったのでこれからしっかりとした教育を施せば元王太子であった従兄のような愚物になるのを防げる可能性がある。
ならば引き続いての同盟継続の方が帝国にも利点となるからっと第四皇女ブリギッテは新たな婚約。表向きは幼さ故に粛清から免れた王家唯一の生き残りトビアスと婚約する事で、フランクフルト王国はギリギリ存続を許されたわけだ。
ここで王国は王太子達を即座に処分を下せばよかった。
例え謹慎という軽い処分でも反省の意があれば、まだ幾分かマシだった。
だが、王を筆頭とした側近達の親は愚かだった。
彼等は子ども可愛さから諸々のやらかしを婚約者と皇太子、つまり帝国側の責にしたのだ。
帝国の外交官に堂々と皇太子と皇女を侮辱して慰謝料を請求する姿は常識……いや、見識ある者がみれば狂気の沙汰。手の込んだ自殺にしかみえなかっただろう。
当然ながら帝国の皇帝陛下はぶちぎれた。宣戦布告と同時にフランクフルト王国へ大軍勢を送り込んで破壊の限りを尽くすのは確定的に明らか。
フランクフルト王国の命運は完全に尽きたっと思われるも……
帝国との独自パイプを持っていたゼーゼマン伯爵家が宣戦布告される前に王太子や王をはじめとする、愚か者達を一家郎党皆殺しにした。
例えそれが謀反とも捉えかねない乱暴な手段であっても、帝国から派遣された宣戦布告の使者の権幕からみて間違ったものでなかっただろう。
ゼーゼマン伯爵家の者達は使者に愚物達の首を差し出しながら、必死に土下座して許しを請うたわけだ。
その土下座には皇帝陛下の娘であるブリキッテ第四皇女も混ざっていた事もあってか、宣戦布告を取り下げる最後のチャンスとなる交渉の席が設けられ……首皮一枚もいいところな綱渡り交渉の末に賠償金こそ課せられるも王国としての存続だけでなく、同盟の継続という寛大過ぎる処分で済まされた。
もちろん、それらには様々な政治的思惑や判断がある。
一つ目として斬り殺された皇太子はまだ任命されて間もない、研修中ともいえる立場だった事。
帝国は侵略戦争の末に手に入れた属国を多数持つ関係上、恨みもそれなりに買っている。皇帝にはそれら悪意や殺意を跳ね返すだけの力が必須なのだ。
非情になれとは言わないので妹をかばう事自体問題なくとも、かばった末で命を落とすのはあまりにもうかつで脆弱すぎである。これでは皇帝の座に付こうとも遅かれ早かれ殺されるのは目に見える。厳しいようであっても奴は所詮それまで……っと評価せざるを得ない。
よって皇太子殺害の件も帝国目線でみればそれほど罪深いものでない。皇帝も親として怒りの感情を全面に出して糾弾するのは、国の頂点に立つ者としては愚か過ぎる自覚がある。なので、その件に関しての怒りを抑えていた。
怒り狂ったのは皇女の卒業式という祝いの場で皇太子を殺害しておきながら、それを帝国側の責にする面の厚かましさによるものだ。
これを許せば、帝国自体が舐められる。皇帝も親としてではなく帝国そのものの怒りを全面に押し出した厳しい処断を示さなければ落とし前がつかない。
その落とし前も先んじて首謀者とその関わりがあった者達の一族の首を差し出されれば、名目上で面目はついたのだ。
宣戦布告の取り下げ理由として十分であろう。
二つ目として同盟継続に関しては、そもそも帝国には王国を支配下に置くメリットがあまりないという点がある。
帝国側からみた王国は小国。立地は海を隔てた遠い飛び地であり、陸の孤島ともいうべき僻地だ。往来には多大なコストがかかる上、王国領にこれといった特産がないから支配しても管理するリソースに見合ったリターンが得られない。
そして、三つ目につながるが、フランクフルト王国は1000年以上の歴史を持つ由緒正しい国だ。
対して帝国はまだ100年ほどの歴史しかない新興の国。広大な大陸の約8割を支配するほどの強大な大国であっても、歴史の浅さは外交での弱点である。
それを補うために目をつけたのが1000年以上の歴史を持つフランクフルト王家の血縁。中身は腐ってようとも使い道次第ではそれなりに価値がある。
だからこその婚約。第四皇女ブリギッテとフランクフルト王国王太子との婚約を条件とした同盟という、侵略を是とする帝国側からしたら穏便な友好関係を打診したわけだ。
結果として第四皇女は王太子に冤罪からの婚約破棄という散々な目にあうどころか、兄の皇太子を斬り殺されるというとんでもない裏切りにあうも……
第四皇女は寛大な処置を求めた。
これは王太子と良い関係を築けなかった事と……
何より自分の甘さや皇族としての自覚のなさ、自身の責を認めたうえで挽回のチャンスを求めた。
その願いは上記理由……元々支配する利点がないからこその同盟であり、今ここでの破棄は今までの投資を無に返す事に繋がる。
婚約破棄での侮辱や皇太子殺害の落とし前はすでについており、損害も賠償金で補えた。
加えて王位継承権を持つ男児。王妹の息子を生かしたままであった。彼はまだ7歳と幼かったのでこれからしっかりとした教育を施せば元王太子であった従兄のような愚物になるのを防げる可能性がある。
ならば引き続いての同盟継続の方が帝国にも利点となるからっと第四皇女ブリギッテは新たな婚約。表向きは幼さ故に粛清から免れた王家唯一の生き残りトビアスと婚約する事で、フランクフルト王国はギリギリ存続を許されたわけだ。
8
お気に入りに追加
97
あなたにおすすめの小説
勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。
八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。
パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。
攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。
ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。
一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。
これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。
※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。
※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。
※表紙はAIイラストを使用。
外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~
そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」
「何てことなの……」
「全く期待はずれだ」
私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。
このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。
そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。
だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。
そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。
そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど?
私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。
私は最高の仲間と最強を目指すから。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

「聖女はもう用済み」と言って私を追放した国は、今や崩壊寸前です。私が戻れば危機を救えるようですが、私はもう、二度と国には戻りません【完結】
小平ニコ
ファンタジー
聖女として、ずっと国の平和を守ってきたラスティーナ。だがある日、婚約者であるウルナイト王子に、「聖女とか、そういうのもういいんで、国から出てってもらえます?」と言われ、国を追放される。
これからは、ウルナイト王子が召喚術で呼び出した『魔獣』が国の守護をするので、ラスティーナはもう用済みとのことらしい。王も、重臣たちも、国民すらも、嘲りの笑みを浮かべるばかりで、誰もラスティーナを庇ってはくれなかった。
失意の中、ラスティーナは国を去り、隣国に移り住む。
無慈悲に追放されたことで、しばらくは人間不信気味だったラスティーナだが、優しい人たちと出会い、現在は、平凡ながらも幸せな日々を過ごしていた。
そんなある日のこと。
ラスティーナは新聞の記事で、自分を追放した国が崩壊寸前であることを知る。
『自分が戻れば国を救えるかもしれない』と思うラスティーナだったが、新聞に書いてあった『ある情報』を読んだことで、国を救いたいという気持ちは、一気に無くなってしまう。
そしてラスティーナは、決別の言葉を、ハッキリと口にするのだった……

「宮廷魔術師の娘の癖に無能すぎる」と婚約破棄され親には出来損ないと言われたが、厄介払いと嫁に出された家はいいところだった
今川幸乃
ファンタジー
魔術の名門オールストン公爵家に生まれたレイラは、武門の名門と呼ばれたオーガスト公爵家の跡取りブランドと婚約させられた。
しかしレイラは魔法をうまく使うことも出来ず、ブランドに一方的に婚約破棄されてしまう。
それを聞いた宮廷魔術師の父はブランドではなくレイラに「出来損ないめ」と激怒し、まるで厄介払いのようにレイノルズ侯爵家という微妙な家に嫁に出されてしまう。夫のロルスは魔術には何の興味もなく、最初は仲も微妙だった。
一方ブランドはベラという魔法がうまい令嬢と婚約し、やはり婚約破棄して良かったと思うのだった。
しかしレイラが魔法を全然使えないのはオールストン家で毎日飲まされていた魔力増加薬が体質に合わず、魔力が暴走してしまうせいだった。
加えて毎日毎晩ずっと勉強や訓練をさせられて常に体調が悪かったことも原因だった。
レイノルズ家でのんびり過ごしていたレイラはやがて自分の真の力に気づいていく。

婚約破棄……そちらの方が新しい聖女……ですか。ところで殿下、その方は聖女検定をお持ちで?
Ryo-k
ファンタジー
「アイリス・フローリア! 貴様との婚約を破棄する!」
私の婚約者のレオナルド・シュワルツ王太子殿下から、突然婚約破棄されてしまいました。
さらには隣の男爵令嬢が新しい聖女……ですか。
ところでその男爵令嬢……聖女検定はお持ちで?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる