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7.必死に土下座して許しを請うた(SIDE:アーデル)
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同盟国の皇太子を戦場とはほど遠い祝いの席で斬り殺すという、前代未聞ともいうべき大事件を引き起こした当時の王太子とその取り巻き達。
ここで王国は王太子達を即座に処分を下せばよかった。
例え謹慎という軽い処分でも反省の意があれば、まだ幾分かマシだった。
だが、王を筆頭とした側近達の親は愚かだった。
彼等は子ども可愛さから諸々のやらかしを婚約者と皇太子、つまり帝国側の責にしたのだ。
帝国の外交官に堂々と皇太子と皇女を侮辱して慰謝料を請求する姿は常識……いや、見識ある者がみれば狂気の沙汰。手の込んだ自殺にしかみえなかっただろう。
当然ながら帝国の皇帝陛下はぶちぎれた。宣戦布告と同時にフランクフルト王国へ大軍勢を送り込んで破壊の限りを尽くすのは確定的に明らか。
フランクフルト王国の命運は完全に尽きたっと思われるも……
帝国との独自パイプを持っていたゼーゼマン伯爵家が宣戦布告される前に王太子や王をはじめとする、愚か者達を一家郎党皆殺しにした。
例えそれが謀反とも捉えかねない乱暴な手段であっても、帝国から派遣された宣戦布告の使者の権幕からみて間違ったものでなかっただろう。
ゼーゼマン伯爵家の者達は使者に愚物達の首を差し出しながら、必死に土下座して許しを請うたわけだ。
その土下座には皇帝陛下の娘であるブリキッテ第四皇女も混ざっていた事もあってか、宣戦布告を取り下げる最後のチャンスとなる交渉の席が設けられ……首皮一枚もいいところな綱渡り交渉の末に賠償金こそ課せられるも王国としての存続だけでなく、同盟の継続という寛大過ぎる処分で済まされた。
もちろん、それらには様々な政治的思惑や判断がある。
一つ目として斬り殺された皇太子はまだ任命されて間もない、研修中ともいえる立場だった事。
帝国は侵略戦争の末に手に入れた属国を多数持つ関係上、恨みもそれなりに買っている。皇帝にはそれら悪意や殺意を跳ね返すだけの力が必須なのだ。
非情になれとは言わないので妹をかばう事自体問題なくとも、かばった末で命を落とすのはあまりにもうかつで脆弱すぎである。これでは皇帝の座に付こうとも遅かれ早かれ殺されるのは目に見える。厳しいようであっても奴は所詮それまで……っと評価せざるを得ない。
よって皇太子殺害の件も帝国目線でみればそれほど罪深いものでない。皇帝も親として怒りの感情を全面に出して糾弾するのは、国の頂点に立つ者としては愚か過ぎる自覚がある。なので、その件に関しての怒りを抑えていた。
怒り狂ったのは皇女の卒業式という祝いの場で皇太子を殺害しておきながら、それを帝国側の責にする面の厚かましさによるものだ。
これを許せば、帝国自体が舐められる。皇帝も親としてではなく帝国そのものの怒りを全面に押し出した厳しい処断を示さなければ落とし前がつかない。
その落とし前も先んじて首謀者とその関わりがあった者達の一族の首を差し出されれば、名目上で面目はついたのだ。
宣戦布告の取り下げ理由として十分であろう。
二つ目として同盟継続に関しては、そもそも帝国には王国を支配下に置くメリットがあまりないという点がある。
帝国側からみた王国は小国。立地は海を隔てた遠い飛び地であり、陸の孤島ともいうべき僻地だ。往来には多大なコストがかかる上、王国領にこれといった特産がないから支配しても管理するリソースに見合ったリターンが得られない。
そして、三つ目につながるが、フランクフルト王国は1000年以上の歴史を持つ由緒正しい国だ。
対して帝国はまだ100年ほどの歴史しかない新興の国。広大な大陸の約8割を支配するほどの強大な大国であっても、歴史の浅さは外交での弱点である。
それを補うために目をつけたのが1000年以上の歴史を持つフランクフルト王家の血縁。中身は腐ってようとも使い道次第ではそれなりに価値がある。
だからこその婚約。第四皇女ブリギッテとフランクフルト王国王太子との婚約を条件とした同盟という、侵略を是とする帝国側からしたら穏便な友好関係を打診したわけだ。
結果として第四皇女は王太子に冤罪からの婚約破棄という散々な目にあうどころか、兄の皇太子を斬り殺されるというとんでもない裏切りにあうも……
第四皇女は寛大な処置を求めた。
これは王太子と良い関係を築けなかった事と……
何より自分の甘さや皇族としての自覚のなさ、自身の責を認めたうえで挽回のチャンスを求めた。
その願いは上記理由……元々支配する利点がないからこその同盟であり、今ここでの破棄は今までの投資を無に返す事に繋がる。
婚約破棄での侮辱や皇太子殺害の落とし前はすでについており、損害も賠償金で補えた。
加えて王家直系の王子は一人だけ生かしたままであった。彼はまだ7歳と幼かったのでこれからしっかりとした教育を施せば兄のような愚物になるのを防げる可能性がある。
ならば引き続いての同盟継続の方が帝国にも利点となるからっと第四皇女ブリギッテは新たな婚約。表向きは幼さ故に粛清から免れた王家唯一の生き残りトビアスと婚約する事で、フランクフルト王国はギリギリ存続を許されたわけだ。
ここで王国は王太子達を即座に処分を下せばよかった。
例え謹慎という軽い処分でも反省の意があれば、まだ幾分かマシだった。
だが、王を筆頭とした側近達の親は愚かだった。
彼等は子ども可愛さから諸々のやらかしを婚約者と皇太子、つまり帝国側の責にしたのだ。
帝国の外交官に堂々と皇太子と皇女を侮辱して慰謝料を請求する姿は常識……いや、見識ある者がみれば狂気の沙汰。手の込んだ自殺にしかみえなかっただろう。
当然ながら帝国の皇帝陛下はぶちぎれた。宣戦布告と同時にフランクフルト王国へ大軍勢を送り込んで破壊の限りを尽くすのは確定的に明らか。
フランクフルト王国の命運は完全に尽きたっと思われるも……
帝国との独自パイプを持っていたゼーゼマン伯爵家が宣戦布告される前に王太子や王をはじめとする、愚か者達を一家郎党皆殺しにした。
例えそれが謀反とも捉えかねない乱暴な手段であっても、帝国から派遣された宣戦布告の使者の権幕からみて間違ったものでなかっただろう。
ゼーゼマン伯爵家の者達は使者に愚物達の首を差し出しながら、必死に土下座して許しを請うたわけだ。
その土下座には皇帝陛下の娘であるブリキッテ第四皇女も混ざっていた事もあってか、宣戦布告を取り下げる最後のチャンスとなる交渉の席が設けられ……首皮一枚もいいところな綱渡り交渉の末に賠償金こそ課せられるも王国としての存続だけでなく、同盟の継続という寛大過ぎる処分で済まされた。
もちろん、それらには様々な政治的思惑や判断がある。
一つ目として斬り殺された皇太子はまだ任命されて間もない、研修中ともいえる立場だった事。
帝国は侵略戦争の末に手に入れた属国を多数持つ関係上、恨みもそれなりに買っている。皇帝にはそれら悪意や殺意を跳ね返すだけの力が必須なのだ。
非情になれとは言わないので妹をかばう事自体問題なくとも、かばった末で命を落とすのはあまりにもうかつで脆弱すぎである。これでは皇帝の座に付こうとも遅かれ早かれ殺されるのは目に見える。厳しいようであっても奴は所詮それまで……っと評価せざるを得ない。
よって皇太子殺害の件も帝国目線でみればそれほど罪深いものでない。皇帝も親として怒りの感情を全面に出して糾弾するのは、国の頂点に立つ者としては愚か過ぎる自覚がある。なので、その件に関しての怒りを抑えていた。
怒り狂ったのは皇女の卒業式という祝いの場で皇太子を殺害しておきながら、それを帝国側の責にする面の厚かましさによるものだ。
これを許せば、帝国自体が舐められる。皇帝も親としてではなく帝国そのものの怒りを全面に押し出した厳しい処断を示さなければ落とし前がつかない。
その落とし前も先んじて首謀者とその関わりがあった者達の一族の首を差し出されれば、名目上で面目はついたのだ。
宣戦布告の取り下げ理由として十分であろう。
二つ目として同盟継続に関しては、そもそも帝国には王国を支配下に置くメリットがあまりないという点がある。
帝国側からみた王国は小国。立地は海を隔てた遠い飛び地であり、陸の孤島ともいうべき僻地だ。往来には多大なコストがかかる上、王国領にこれといった特産がないから支配しても管理するリソースに見合ったリターンが得られない。
そして、三つ目につながるが、フランクフルト王国は1000年以上の歴史を持つ由緒正しい国だ。
対して帝国はまだ100年ほどの歴史しかない新興の国。広大な大陸の約8割を支配するほどの強大な大国であっても、歴史の浅さは外交での弱点である。
それを補うために目をつけたのが1000年以上の歴史を持つフランクフルト王家の血縁。中身は腐ってようとも使い道次第ではそれなりに価値がある。
だからこその婚約。第四皇女ブリギッテとフランクフルト王国王太子との婚約を条件とした同盟という、侵略を是とする帝国側からしたら穏便な友好関係を打診したわけだ。
結果として第四皇女は王太子に冤罪からの婚約破棄という散々な目にあうどころか、兄の皇太子を斬り殺されるというとんでもない裏切りにあうも……
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