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第一章 逆断罪劇からのクズざまぁ編

4.それだけ、この王太子はクズなのだ

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 デルフリはクラーラを正妃にしたい程好いてるも、クラーラはデルフリ王太子を好いてないどころか、逆に嫌っていた。

 ある意味当然のなりゆきだろう。
 なにせクズ王太子は婚約者である義姉アーデルを顧みないだけでなく、わざわざクラーラの目の前で罵倒するのだ。クラーラはその度にクズの口や喉を潰してやりたい衝動を抱くも、相手は腐っても未来の義兄で国王となる存在。
 アーデルもクズな婚約者にはらわた煮えくりかえる想いを抱いてようとも、相手が形だけでも敬うべき存在なだけあって鉄拳制裁ではなく口のみの忠告に留め続けているのだ。クラーラもアーデルを見習って渋々と暴力沙汰を控えて形だけ……本当に形だけの営業スマイルで塩対応してるに過ぎなかった。

 だが、クズ王太子は元より周囲の取り巻き貴族達はクラーラの本心に気づかない。
 笑顔の仮面を屈託のない笑顔、塩対応を分け隔てのないやさしさと盛大に勘違いしていた。

 まぁその笑顔の仮面や塩対応もクラーラの気質と商人を目指す過程で培ってきた営業力のせいで魔性を秘めた物になってしまってる節あるのだが……

 ともかく、クズ王太子達とその取り巻き貴族はクラーラの事を盛大に勘違いしたまま……

 ざまぁ劇でよくあるお約束。義姉の婚約者をかすめ取ろうとする狡い義妹の本心が周囲に全く気づかれないご都合補正があるかのごとく……

 クズ王太子とその取り巻き連中はクラーラの本心、笑顔の仮面で隠された般若のごとき憎悪の顔に全くもって気づかなかった。


 ただ、それに気づいたところであのクズは無視するだろう。

 当人が拒否しようとも強引に妃へと迎え入れるだろう。
 それこそ王命を出し、鎖につないで監禁してでも手に入れるだろう。


 それだけ、この王太子はクズなのだ。



 だが、デルフリとクラーラが結ばれる日は永遠に来ない。
 例え王命であろうとも、正妃ではなく側妃であっても教会が二人の仲を許さない。

 無理やり事を起こせば、教会どころか神すら敵に回してしまう。


 なぜなら……


 デルフリとクラーラは共に同じ両親から生まれた兄妹だからである。



 その事実をクラーラ本人には知らされていても、政治的な観点とクラーラへの配慮によって知る者は限られていた。
 特に今の王家の血筋は現王とその実子であるデルフリしか居ない。
 予備が全く存在しないため、デルフリがどれだけクズであろうとも王太子の座は揺るがないわけだ。

 そこでクラーラが新たに王の実子と公表されたら……

 公式では存在しないとされている二人目の実子が存在していたなんて事実が判明すれば……

 現王太子がクズなだけあって、クラーラの意志に関係なく無理やり王太子として持ち上げられてしまうだろう。

 義妹を溺愛するアーデルにとって、それはなんとしても避けたい未来。

 だからこそアーデルはクズとの政略結婚を受け入れた。
 例え未来の国王がクズであろうとも、王妃となる自分が国王代理として国務を行えば問題ない。
 国に安寧をもたらせると証明できれば、クラーラを王家に戻す必要性もない。


 これで丸く収まるはずが……

 知っての通り、クズはクラーラを実妹と知らずに口説くどころか無理やり娶ろうとする始末。

 真実を話せば手っ取り早いといっても、話した際に不特定多数へと知れ渡る可能性もある。
 さらに、自分の王太子の座を脅かす存在がいきなり現れたと知ったクズとそのクズを持ち上げる貴族一派がどんな行動を取るか……

 国に大混乱を引き起こすリスクを考えたら、真実を知らせず穏便な手段で諦めさせる方が得策。



 その結果が今の状況である。
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