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 旅は順調であった。

 立ち向かうモンスターはオスカーのワンパンで大体ダウンだ。

 別大陸へと渡った先では覆面マントにパンイチというまごうことなき変態に襲われるも、やはりワンパンで解決。






 オスカーは強かった。
 あまりに強すぎたせいか

『もう全部あいつ一人でいいんじゃないのか?』

 な空気が蔓延してきたこともあって勇者の立場が危うくなってきたのだ。
 これはまずいと思ったスルアは決意した。



「オスカー!お前を追放する!!」

「俺、何かやっちゃいました?」


 オスカーとしては国から脱出できた時点で目的は達成できたのだ。
 このままさよならしても問題ない……が、一応仲間として魔王退治まで付き合う程度の義理は持っていた。

 なので理由を聞いたところ……



 勇者パーティーに脳筋は必要ない。


 もちろんこれは方便だ。
 スルアとしても馬鹿正直に理由を伝えるのは、それこそ勇者の沽券にかかわりかねない。それらしい理由をつけたわけだ。
 だが、オスカーはスルアの裏の事情を見抜けなかった。
 王城で見せた一連の行動は変態だけど出来る侍女であったジージョのお膳立てがあった故であり、普段はおつむの弱いポンコツであった。

「そ、そうだったのですか……わかりました。俺は一から修行して来ます。今一度自分を鍛えなおしてから改めて俺を仲間として加えて下さい」

「おう、その日が来るのを待ってるぞ」

 スルアからしてみればただの方便なので本心は『もう来るな』なのだが……
 ポンコツであっても反省と向上心はあるオスカー。これから勉学を励む気になったオスカーを前にしたせいか、ちくりと良心を痛ませながらも再開の約束を行うしかなかったのだ。














……………………


 翌朝、勇者ご一行から惜しまれる?形で別れた……名目上は追放だが、オスカーはその事に全く気付かず新たな自分を目指して第一歩を踏み出す。


 そう……


「魔法使いに俺はなる!!」


 脳筋から脱却すべく、魔法使いの第一歩を踏み出そうとするも……

 彼女は知らなかった。気付かなかった。


 魔力0であるオスカーに魔法使いの道は踏み出す以前の問題だということに……

 よって……




「魔法使いになりたいだなんて寝言は寝てる時だけにしてください」


 冒険者ギルドでの転職申請で受付嬢から無常な無能判定での門前払いを下されるのは当然であった。

 だが、脳筋であるオスカーは受付嬢の言葉を真正面から受け止めた事であり……

「そうですか……魔法使いになるにはたくさん寝ればいいのですね」


 誰もそんなこと言ってない。
 言ってないが、オスカーは思い立ったら吉日っとばかりにオスカーは即座にギルドを飛び出した。

 受付嬢が慌てて止めるも……

 受付嬢としてみれば、オスカーは戦士として超有能なのだから態々無能な魔法使いになる必要性ないっと思いとどまらせようとした言葉であっても……

 おつむの足りないスカー相手では変な解釈に取られてしまったらしく……



 この日、超有能であった戦士オスカーは山に向かったまま消息を絶ったのであった。
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