婚約破棄されたら第一王子に溺愛されたので冒険者になった俺は勇者パーティから追放され『俺、何かやっちゃいました?』。受付嬢ギルド試験(以下略)

やみなべ

文字の大きさ
上 下
1 / 4

しおりを挟む
「オスカー!!嫉妬のあまりネトリーを殺そうとするなど、貴様にはほとほと愛想が尽きた!!よって私シンジツ侯爵令息のイチロ-はオスカーと婚約破k(バキッ!!)」

「そうですか、わかりました。その婚約破棄、確かに承りました」

 オスカーはつい先ほどまで婚約者であったイチローに一礼を行う。
 貴族令嬢としてのカーテシーではなく、血に塗れた右手と左手を合わせてペコリと頭を下げた礼は冥福を祈ってるようにみえるだろう。

 だが、オスカーは気にしない。
 目の前でピンク頭をした、如何にもお花畑な振る舞いをみせていた男爵令嬢のネトリーが唖然としてようとも、やはりオスカーは気にしない。

 殴る価値なんてないのか、ただ興味ないのか……

 どちらか不明ながらも、オスカーは一礼を終えると同時に出口へ向かって全速力で駆け出すのであった。







……………………

 今日はアーリア国の王城で新年を祝うパーティーが行われており、オスカーもベナミヤ伯爵令嬢の一員として婚約者であるイチローにエスコートしてもらいながら参加する予定であった。

 だが、彼女は知っていた。

 今日のエスコート相手は自分ではなく、ここ最近イチローが熱を上げている男爵令嬢のネトリーである事を……

 パーティー会場でイチローから婚約破棄される事を……

 その直後を狙って、第一王子が婚約を申し込んでくる事を……

 オスカーは全て事前に把握していた。





 だから逃げだした。

 彼女は結婚して家庭に縛られるより、独身生活を謳歌したかったのだ。

 そういう意味では愛人にかまけてオスカーを全くかえりみないイチローより、オスカーを溺愛する第一王子の方が厄介だった。

 彼はオスカーを溺愛するあまり王宮へ閉じ込めようとするのが目に見える。


 だからオスカーは全力で逃げだした。


「誰か、オスカーを捕まえろ!!」




 事態に気付いた第一王子が慌てて命令を下すも、すでに遅かった。


 オスカーは逃げ去りながら背中まで届いていた髪をぶった切り、着ていたドレスを脱ぎ捨てて下着同然の……ビキニアーマー姿になっていたのだ。
 これは、この日のために用意していた冒険者の装いだ。

 もちろん冒険者登録も済ましているのでなんちゃってでもモグリでもない。

 さらにいえば、この世界の女戦士はなぜかビキニアーマーを着こむ露出狂が多い。新年という真冬であろうとも関わらずビキニアーマーなので、オスカーの姿は別に不自然ではない。

 というか、貴族令嬢が真冬にビキニアーマーを着込むなんて夢にも思わないだろう。

 第一王子からの追手は今のオスカーをみても気付かずに通り過ぎる始末であった。

 ……いや、一部は気付いてるようだが、認識したらその瞬間鉄拳が飛んで記憶諸共意識が吹っ飛ぶ姿を幻視してしまったため、あえて気付かない振りをしてる節がある。


「くくく……命拾いしましたわね」

「全くです、お嬢様。逃亡経路ですが、まず城から出て次の十字路を右にお進みください。門近くにあるダーイルの宿屋で勇者ご一行が待機しております。まずは勇者ご一行に加わって国から脱出してください」

「何から何までありがとうねジージョ」

「お礼でしたらぜひともべろt(バキッ!!!)」

 調子乗って、キスを迫ってきた侍女を鉄拳で沈めたオスカー。せっかくだからと先ほどまで着ていたドレスを着せて身代わりに仕立て上げてからその場を離れる。
 何食わぬ顔で正面から堂々と城門をくぐり、侍女のジージョから示された通りにダーイルの宿屋へと向かい……





「よろしくな」

 勇者スルアの3人目のハーレムパーティーの一員として迎え入れらるのであった。

 こうしてオスカーは勇者スルアと2人の仲間、女魔法使いと女僧侶と共に魔王退治……オスカーにしてみればただの名目上での理由で旅立つのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの聖女は王太子に婚約破棄されて都を出ることにしました。

高山奥地
ファンタジー
大聖女の子孫、カミリヤは神聖力のないお飾りの聖女と呼ばれていた。ある日婚約者の王太子に婚約破棄を告げられて……。

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

婚約破棄……そちらの方が新しい聖女……ですか。ところで殿下、その方は聖女検定をお持ちで?

Ryo-k
ファンタジー
「アイリス・フローリア! 貴様との婚約を破棄する!」 私の婚約者のレオナルド・シュワルツ王太子殿下から、突然婚約破棄されてしまいました。 さらには隣の男爵令嬢が新しい聖女……ですか。 ところでその男爵令嬢……聖女検定はお持ちで?

聖女なのに王太子から婚約破棄の上、国外追放って言われたけど、どうしましょう?

もふっとしたクリームパン
ファンタジー
王城内で開かれたパーティーで王太子は宣言した。その内容に聖女は思わず声が出た、「え、どうしましょう」と。*世界観はふわっとしてます。*何番煎じ、よくある設定のざまぁ話です。*書きたいとこだけ書いた話で、あっさり終わります。*本編とオマケで完結。*カクヨム様でも公開。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

婚約破棄されたので歴代最高の悪役令嬢になりました

Ryo-k
ファンタジー
『悪役令嬢』 それすなわち、最高の貴族令嬢の資格。 最高の貴族令嬢の資格であるがゆえに、取得難易度もはるかに高く、10年に1人取得できるかどうか。 そして王子から婚約破棄を宣言された公爵令嬢は、最高の『悪役令嬢』となりました。 さらに明らかになる王子の馬鹿っぷりとその末路――

芋くさ聖女は捨てられた先で冷徹公爵に拾われました ~後になって私の力に気付いたってもう遅い! 私は新しい居場所を見つけました~

日之影ソラ
ファンタジー
アルカンティア王国の聖女として務めを果たしてたヘスティアは、突然国王から追放勧告を受けてしまう。ヘスティアの言葉は国王には届かず、王女が新しい聖女となってしまったことで用済みとされてしまった。 田舎生まれで地位や権力に関わらず平等に力を振るう彼女を快く思っておらず、民衆からの支持がこれ以上増える前に追い出してしまいたかったようだ。 成すすべなく追い出されることになったヘスティアは、荷物をまとめて大聖堂を出ようとする。そこへ現れたのは、冷徹で有名な公爵様だった。 「行くところがないならうちにこないか? 君の力が必要なんだ」 彼の一声に頷き、冷徹公爵の領地へ赴くことに。どんなことをされるのかと内心緊張していたが、実際に話してみると優しい人で…… 一方王都では、真の聖女であるヘスティアがいなくなったことで、少しずつ歯車がズレ始めていた。 国王や王女は気づいていない。 自分たちが失った者の大きさと、手に入れてしまった力の正体に。 小説家になろうでも短編として投稿してます。

(完)聖女様は頑張らない

青空一夏
ファンタジー
私は大聖女様だった。歴史上最強の聖女だった私はそのあまりに強すぎる力から、悪魔? 魔女?と疑われ追放された。 それも命を救ってやったカール王太子の命令により追放されたのだ。あの恩知らずめ! 侯爵令嬢の色香に負けやがって。本物の聖女より偽物美女の侯爵令嬢を選びやがった。 私は逃亡中に足をすべらせ死んだ? と思ったら聖女認定の最初の日に巻き戻っていた!! もう全力でこの国の為になんか働くもんか! 異世界ゆるふわ設定ご都合主義ファンタジー。よくあるパターンの聖女もの。ラブコメ要素ありです。楽しく笑えるお話です。(多分😅)

処理中です...