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第4章
27.“私”が“エクレア”という事実には変わりない(side:エクレア)
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「それってどういう意味?」
ローインは困惑気味に問い返してきた。
当然だろう。よくわからないなんて言葉は答えてるようで答えてない。
「やっぱりはぐらかしてるとかごまかしてるように聞こえちゃうよね。実際今の私は素面。これから話すのは真実かもしれないし嘘かもしれない。なんならあることない事でっち上げて煙に巻いちゃうかもしれないけど……それでも聞きたい?」
「もちろん。だから昨日聞きそびれたというか、あれから2人と一緒に話してて気付いたんだ。君はまだ全てを語ってないって事に。だから聞きたい。君はエクレアちゃんになりきってまで何がしたいんだっとね」
「エクレアちゃんになりきってか……それは私が偽物だって疑う事につながるんだけど、ひどくない?」
「酷いと思う。それでも……聞きたいんだ。君は3年前のあの日を境に変わった。別人と思えるぐらいに……でも、その変化はとても良い方向に進んでる。だから君はエクレアちゃんでなくてもいい。偽物でも、別人でも、僕は今の君を……その………」
「その先は言わないでほしいかな」
エクレアは改めて覚悟を決めた。くるりと振り返って席に着く。
質問内容こそ予想外であったが、元々大人達は薄々気付いていた。勘づいていた。
ただ空気を察してか、あえて口に出さず黙って受け入れてくれただけに過ぎない。
本来ならとっくの昔に誰かが口に出して問われていたのだし、いずれ話さなければいけない時が来る。それが今なんだと思えば動揺する理由なんてなかったのだ。
それに……エクレア自身1人で悩み続けるのも限界だったのだ。
頭を整理する意味も含めて、エクレアは語る事にした。
「説明の答えだけど……本当にわからない。ただ言える事は……“私”は3年前以前の“エクレア”じゃないこと。ローイン君がいう3年前を境にして変わったのは事実だけど、“私”が“エクレア”という事実には変わりないってことかな」
「どういう意味?はぐらかしてるわけじゃないよね」
「はぐらかしじゃない。本当に私がわからない……だからこれから言うのは仮説。今の段階では確証が取れない与太話。いわゆる妄想の類になるけど、それでいいなら聞く?」
「もちろんさ。すでに『悪魔』やら『魔王』やらが出現してるわけだし、今更エクレアちゃんの正体を聞いても驚くものじゃないよ」
「あーそれもそっか。それ聞いたらちょっと楽になったかも」
ローインに言われた通り、すでに今の現状が与太話のようなもの。そこにもう一個増えても今更だ。
「じゃ、話そっか。私の正体だけど……『神』の使い。魔王と同じように『神』からなんらかの使命を受けて派遣された『神』の使いなの。その使命は」
「世界を滅ぼす……でいいのかな?」
「う、うん……たぶんそうだと思うけど、よくわかったよね」
正確には違うが、3年前に思い出した神に植え付けられたらしき偽の記憶が『乙女ゲームざまぁ系のお花畑ヒロイン』だ。婚約者がいる王太子様を篭絡して婚約者を断罪させるよう仕向けるなんて、国に少なくない混乱をもたらす。場合によっては内乱を勃発させて国を内部から崩壊させかねない。
そうして国の中枢が全く機能していない状態で男が『魔王』として侵略を開始すれば……
「国どころか世界ほろんじゃうよね、やっぱり」
なぜそんな騒動を起こすのかはわからないが、男が『神』から依頼を受けて派遣された『雇われ魔王』と称するならエクレアも『神』から依頼を受けて派遣された『雇われお花畑ヒロイン』の可能性がある。
対して“キャロット”はエクレアの受けた『神』の依頼を遂行されないように潜り込んできた妨害者。
その正体は……
(多分だけど正体は本来のエクレアちゃん……『神』の依頼を受けた“私”が入り込んだことで追い出される形になった本来の“エクレア”なんじゃないのかな?)
そう思うのは“キャロット”の姿……契約時に一瞬垣間見た“キャロット”は……
エクレアと瓜二つの姿をしていたからだ。
ローインは困惑気味に問い返してきた。
当然だろう。よくわからないなんて言葉は答えてるようで答えてない。
「やっぱりはぐらかしてるとかごまかしてるように聞こえちゃうよね。実際今の私は素面。これから話すのは真実かもしれないし嘘かもしれない。なんならあることない事でっち上げて煙に巻いちゃうかもしれないけど……それでも聞きたい?」
「もちろん。だから昨日聞きそびれたというか、あれから2人と一緒に話してて気付いたんだ。君はまだ全てを語ってないって事に。だから聞きたい。君はエクレアちゃんになりきってまで何がしたいんだっとね」
「エクレアちゃんになりきってか……それは私が偽物だって疑う事につながるんだけど、ひどくない?」
「酷いと思う。それでも……聞きたいんだ。君は3年前のあの日を境に変わった。別人と思えるぐらいに……でも、その変化はとても良い方向に進んでる。だから君はエクレアちゃんでなくてもいい。偽物でも、別人でも、僕は今の君を……その………」
「その先は言わないでほしいかな」
エクレアは改めて覚悟を決めた。くるりと振り返って席に着く。
質問内容こそ予想外であったが、元々大人達は薄々気付いていた。勘づいていた。
ただ空気を察してか、あえて口に出さず黙って受け入れてくれただけに過ぎない。
本来ならとっくの昔に誰かが口に出して問われていたのだし、いずれ話さなければいけない時が来る。それが今なんだと思えば動揺する理由なんてなかったのだ。
それに……エクレア自身1人で悩み続けるのも限界だったのだ。
頭を整理する意味も含めて、エクレアは語る事にした。
「説明の答えだけど……本当にわからない。ただ言える事は……“私”は3年前以前の“エクレア”じゃないこと。ローイン君がいう3年前を境にして変わったのは事実だけど、“私”が“エクレア”という事実には変わりないってことかな」
「どういう意味?はぐらかしてるわけじゃないよね」
「はぐらかしじゃない。本当に私がわからない……だからこれから言うのは仮説。今の段階では確証が取れない与太話。いわゆる妄想の類になるけど、それでいいなら聞く?」
「もちろんさ。すでに『悪魔』やら『魔王』やらが出現してるわけだし、今更エクレアちゃんの正体を聞いても驚くものじゃないよ」
「あーそれもそっか。それ聞いたらちょっと楽になったかも」
ローインに言われた通り、すでに今の現状が与太話のようなもの。そこにもう一個増えても今更だ。
「じゃ、話そっか。私の正体だけど……『神』の使い。魔王と同じように『神』からなんらかの使命を受けて派遣された『神』の使いなの。その使命は」
「世界を滅ぼす……でいいのかな?」
「う、うん……たぶんそうだと思うけど、よくわかったよね」
正確には違うが、3年前に思い出した神に植え付けられたらしき偽の記憶が『乙女ゲームざまぁ系のお花畑ヒロイン』だ。婚約者がいる王太子様を篭絡して婚約者を断罪させるよう仕向けるなんて、国に少なくない混乱をもたらす。場合によっては内乱を勃発させて国を内部から崩壊させかねない。
そうして国の中枢が全く機能していない状態で男が『魔王』として侵略を開始すれば……
「国どころか世界ほろんじゃうよね、やっぱり」
なぜそんな騒動を起こすのかはわからないが、男が『神』から依頼を受けて派遣された『雇われ魔王』と称するならエクレアも『神』から依頼を受けて派遣された『雇われお花畑ヒロイン』の可能性がある。
対して“キャロット”はエクレアの受けた『神』の依頼を遂行されないように潜り込んできた妨害者。
その正体は……
(多分だけど正体は本来のエクレアちゃん……『神』の依頼を受けた“私”が入り込んだことで追い出される形になった本来の“エクレア”なんじゃないのかな?)
そう思うのは“キャロット”の姿……契約時に一瞬垣間見た“キャロット”は……
エクレアと瓜二つの姿をしていたからだ。
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