83 / 98
第4章
20.人間の怒りほど怖いものはない(side:魔王?)
しおりを挟む
「死神?それって常に命を狙われかねないという、好転どころか余計悪化したように聞こえるけど」
常識で考えればスージーの懸念は当然であろう。
なので、男は根拠をのべる。
「好転ですよ。エクレアお嬢様が敵対するのは『神』。最低最悪で他の神がみれば奴と同類と思われる事が恥ともいえるような、どうしようもない奴であっても神は神。
あれは様々な不都合を神の権力でもみ消してきたのです。その力でごり押しされたらエクレアお嬢様は抗う事すらできずなすがままでしょうが、死神が所属する冥府は権限として『神』と同等。そんな冥府の監視下に置かれた者を正規の手続きなしで処罰すれば冥府との敵対を意味する。すなわち、『神』の権限に対抗する後ろ盾を得たと同等なのです」
しかもこのタイミングで接触を図る辺り、冥府もこの機会に奴を潰しにかかる算段なのだろうと男は判断した。
男は知っている。『神』は魂の管理という冥府の管轄に置かれているシステムに違法な手段でもってアクセスしていたのを知っているのだ。
今までは事故や偶然とかで言い逃れしてきたのだろうが、今回はその介入のせいでエクレアというとんでもないイレギュラーが産み落とされた。
事故や偶然では済まされない案件となった以上、どうあがいても責任問題は発生する。
冥府はその点で追及にかかる。言い逃れや責任転換、神の権限などお構いなしな強権でもって捜査に踏み込む。今までの違反や悪行を徹底的に洗い出すだろう。
結局のところ、この瞬間奴の命運は尽きたのだ。
遅かれ早かれ『神』とその一派は終わりなのだ。
なのに、冥府は監視のみにとどめて手を出さないところみると……
(くくっ、どうやら冥府のお偉いさん達も私と同じ腹積もりのようだ)
男も冥府もそれなりの立場にある故、直接制裁に動けば各所に角が立ってしまう。
だが、“奴”の直接の被害者が制裁を加えたとなれば……
角が立たないどころか、爽快な『ざまぁ劇』を繰り広げてくれるだろう。
特にエクレアの深層意識下では“奴”に強烈な憎悪を抱いてるため、まず間違いなく事が起こると男は予測していた。
(楽しみだ。人間の怒りほど怖いものはない。ましてやバックに復讐や報復が大好物ともいえる悪魔が居るのだ。並大抵の『ざまぁ劇』では済まさないだろうな。その様を特等席でみれるなど、まさに最高の見世物だ。……っと私も含めて冥府はこう考えてるのだろうな。全く食えない悪党どもめが)
悪党……といっても、誉め言葉な意味での悪党だ。
それに、この瞬間から冥府は信用に値する組織となったわけだ。そうなると……
(ふむ……今まで冥府とはそう関わらなかったが、この機会に交流を持ってみるのもよさそうだ。私も“奴”の巻き添えで一緒に報復されてはたまらん。ただの雇われた契約社員だが非道な数々に幻滅して離反する気だという立場をアピールしつつ、ついでとしてこの案件が終わった後に新しい仕事先を紹介してもらうとしようか)
大それたことを考えてる割には、最後の最後にどこか庶民じみた事を企んでいろいろと台無しにするのであった。
「ふふ、お楽しみな想像してるところ悪いのだけど何考えてるのかしら?私は貴方の事を完全に許してるわけじゃないのよ。いくら安全の確保をしていたとはいっても私の娘を拷問にかけるよう命じたという事実は消えないのだから」
「マダムルリージュ。貴女がいいますか。貴女も先ほど娘に拷問も辞さないっと言った態度をお忘れでしょうか」
「それはそれ、これはこれ。商売人なら個人的な私怨よりも損得勘定を優先しなければならないじゃない。愛を説かれたら思わせ的な返事でその気にさせて搾り取るのは商談の基本テクニックだというのに……あんな感情むき出しになるなんて失格も失格。
だったら拷問程度の折檻にでもかけて強制的にわからせてあげるのが親心ってものじゃない」
そうにっこりと抜け目なく笑うルリージュ。紳士のあいさつ代わり的に口説いたらまんざらでもない態度を取りつつも、こうやって裏では利用する気満々だっと本人を前にして正直にさらけ出すのだ。良い性格をしてるともいえるだろう。
「はぁ……ルリージュ。商売人の心得を教えるのはいいけど、少しはエクレアちゃんの気持ちも考えてやりなさいよ。今まで母子家庭でやってきたのに、いきなり父親面した男が現れたら反発されて当然でしょ」
「そんなのわかってるわよ。わかったうえでやってるの」
今度はにっこりではなくにやり。腹黒さ全開な悪い笑みを浮かべながら言い切った。
その姿は完全に娘と瓜二つ……娘の20年後を彷彿させる姿であった。
「くくく……。やはりあなたはエクレアお嬢様のお母さまでございます。私のような推定魔王に畏怖するどころか逆に利用しようとするその豪胆さは娘そっくりでございます。だが、それがいい。紳士の挨拶としてではなく、本気で求婚申し込んでいいでしょうか?」
「そうねぇ……娘を説得できたら考えてあげるわ」
「そのお言葉、お忘れなく」
にやりと笑う男。エクレアはイレギュラーな存在といっても所詮は人間の範疇に収まる小娘。加えて彼女には身近に父親と呼べるような存在が居ない。そこを起点にして攻略してみせようっと企みはじめる。
そんな二人のやりとりにスージーは頭痛がする頭を片手で抱えながらため息をつくのであった。
常識で考えればスージーの懸念は当然であろう。
なので、男は根拠をのべる。
「好転ですよ。エクレアお嬢様が敵対するのは『神』。最低最悪で他の神がみれば奴と同類と思われる事が恥ともいえるような、どうしようもない奴であっても神は神。
あれは様々な不都合を神の権力でもみ消してきたのです。その力でごり押しされたらエクレアお嬢様は抗う事すらできずなすがままでしょうが、死神が所属する冥府は権限として『神』と同等。そんな冥府の監視下に置かれた者を正規の手続きなしで処罰すれば冥府との敵対を意味する。すなわち、『神』の権限に対抗する後ろ盾を得たと同等なのです」
しかもこのタイミングで接触を図る辺り、冥府もこの機会に奴を潰しにかかる算段なのだろうと男は判断した。
男は知っている。『神』は魂の管理という冥府の管轄に置かれているシステムに違法な手段でもってアクセスしていたのを知っているのだ。
今までは事故や偶然とかで言い逃れしてきたのだろうが、今回はその介入のせいでエクレアというとんでもないイレギュラーが産み落とされた。
事故や偶然では済まされない案件となった以上、どうあがいても責任問題は発生する。
冥府はその点で追及にかかる。言い逃れや責任転換、神の権限などお構いなしな強権でもって捜査に踏み込む。今までの違反や悪行を徹底的に洗い出すだろう。
結局のところ、この瞬間奴の命運は尽きたのだ。
遅かれ早かれ『神』とその一派は終わりなのだ。
なのに、冥府は監視のみにとどめて手を出さないところみると……
(くくっ、どうやら冥府のお偉いさん達も私と同じ腹積もりのようだ)
男も冥府もそれなりの立場にある故、直接制裁に動けば各所に角が立ってしまう。
だが、“奴”の直接の被害者が制裁を加えたとなれば……
角が立たないどころか、爽快な『ざまぁ劇』を繰り広げてくれるだろう。
特にエクレアの深層意識下では“奴”に強烈な憎悪を抱いてるため、まず間違いなく事が起こると男は予測していた。
(楽しみだ。人間の怒りほど怖いものはない。ましてやバックに復讐や報復が大好物ともいえる悪魔が居るのだ。並大抵の『ざまぁ劇』では済まさないだろうな。その様を特等席でみれるなど、まさに最高の見世物だ。……っと私も含めて冥府はこう考えてるのだろうな。全く食えない悪党どもめが)
悪党……といっても、誉め言葉な意味での悪党だ。
それに、この瞬間から冥府は信用に値する組織となったわけだ。そうなると……
(ふむ……今まで冥府とはそう関わらなかったが、この機会に交流を持ってみるのもよさそうだ。私も“奴”の巻き添えで一緒に報復されてはたまらん。ただの雇われた契約社員だが非道な数々に幻滅して離反する気だという立場をアピールしつつ、ついでとしてこの案件が終わった後に新しい仕事先を紹介してもらうとしようか)
大それたことを考えてる割には、最後の最後にどこか庶民じみた事を企んでいろいろと台無しにするのであった。
「ふふ、お楽しみな想像してるところ悪いのだけど何考えてるのかしら?私は貴方の事を完全に許してるわけじゃないのよ。いくら安全の確保をしていたとはいっても私の娘を拷問にかけるよう命じたという事実は消えないのだから」
「マダムルリージュ。貴女がいいますか。貴女も先ほど娘に拷問も辞さないっと言った態度をお忘れでしょうか」
「それはそれ、これはこれ。商売人なら個人的な私怨よりも損得勘定を優先しなければならないじゃない。愛を説かれたら思わせ的な返事でその気にさせて搾り取るのは商談の基本テクニックだというのに……あんな感情むき出しになるなんて失格も失格。
だったら拷問程度の折檻にでもかけて強制的にわからせてあげるのが親心ってものじゃない」
そうにっこりと抜け目なく笑うルリージュ。紳士のあいさつ代わり的に口説いたらまんざらでもない態度を取りつつも、こうやって裏では利用する気満々だっと本人を前にして正直にさらけ出すのだ。良い性格をしてるともいえるだろう。
「はぁ……ルリージュ。商売人の心得を教えるのはいいけど、少しはエクレアちゃんの気持ちも考えてやりなさいよ。今まで母子家庭でやってきたのに、いきなり父親面した男が現れたら反発されて当然でしょ」
「そんなのわかってるわよ。わかったうえでやってるの」
今度はにっこりではなくにやり。腹黒さ全開な悪い笑みを浮かべながら言い切った。
その姿は完全に娘と瓜二つ……娘の20年後を彷彿させる姿であった。
「くくく……。やはりあなたはエクレアお嬢様のお母さまでございます。私のような推定魔王に畏怖するどころか逆に利用しようとするその豪胆さは娘そっくりでございます。だが、それがいい。紳士の挨拶としてではなく、本気で求婚申し込んでいいでしょうか?」
「そうねぇ……娘を説得できたら考えてあげるわ」
「そのお言葉、お忘れなく」
にやりと笑う男。エクレアはイレギュラーな存在といっても所詮は人間の範疇に収まる小娘。加えて彼女には身近に父親と呼べるような存在が居ない。そこを起点にして攻略してみせようっと企みはじめる。
そんな二人のやりとりにスージーは頭痛がする頭を片手で抱えながらため息をつくのであった。
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
世界一美しい妹にせがまれるので婚約破棄される前に諦めます~辺境暮らしも悪くない~
tartan321
恋愛
美しさにかけては恐らく世界一……私の妹は自慢の妹なのです。そして、誰もがそれを認め、私は正直言って邪魔者なのです。でも、私は長女なので、王子様と婚約することになる運命……なのですが、やはり、ここは辞退すべきなのでしょうね。
そもそも、私にとって、王子様との婚約はそれほど意味がありません。私はもう少し静かに、そして、慎ましく生活できればいいのです。
完結いたしました。今後は後日談を書きます。
ですから、一度は婚約が決まっているのですけど……ごたごたが生じて婚約破棄になる前に、私の方から、婚約を取り下げます!!!!!!
がんばれ宮廷楽師! ~ラヴェルさんの場合~
やみなべ
ファンタジー
シレジア国の宮廷楽師としての日々を過ごす元吟遊詩人のラヴェルさんよんじゅっさい。
若かりし頃は、頼りない、情けない、弱っちいと、ヒーローという言葉とは縁遠い人物であるも今はシレジア国のクレイル王から絶大な信頼を寄せる側近となっていた。
そんな頼り?となる彼に、王からある仕事を依頼された。
その時はまたいつもの戯れともいうべき悪い癖が出たのかと思って蓋を開けてみれば……
国どころか世界そのものが破滅になりかねないピンチを救えという、一介の宮廷楽師に依頼するようなものでなかった。
様々な理由で断る選択肢がなかったラヴェルさんは泣く泣くこの依頼を引き受ける事となる。
果たしてラヴェルさんは無事に依頼を遂行して世界を救う英雄となれるのか、はたまた……
※ このお話は『がんばれ吟遊詩人! ~ラヴェル君の場合~』と『いつかサクラの木の下で…… -乙女ゲームお花畑ヒロインざまぁ劇の裏側、ハッピーエンドに隠されたバッドエンドの物語-』とのクロスオーバー作品です。
時間軸としては『いつサク』の最終話から数日後で、エクレアの前世の知人が自分を題材にした本を出版した事を知り、抗議するため出向いた……っという経緯であり、『ラヴェル君』の本編から約20年経過。
向こうの本編にはないあるエピソードを経由されたパラレルの世界となってますが、世界観と登場人物は『ラヴェル君』の世界とほぼ同じなので、もし彼等の活躍をもっと知りたいならぜひとも本家も読んでやってくださいまし。
URL
http://blue.zero.jp/zbf34605/bard/bardf.html
ちなみにラヴェル君の作者曰く、このお話でのラヴェルさんとお兄ちゃんの扱いは全く問題ないとか……
(言い換えればラヴェル君は本家でもこんな扱われ方なのである……_(:3 」∠)_)
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
竜帝は番に愛を乞う
浅海 景
恋愛
祖母譲りの容姿の両親から疎まれている男爵令嬢のルー。自分とは対照的に溺愛される妹のメリナは周囲からも可愛がられ、狼族の番として見初められたことからますます我儘に振舞うようになった。そんなメリナの我儘を受け止めつつ使用人のように働き、学校では妹を虐げる意地悪な姉として周囲から虐げられる。無力感と諦めを抱きながら淡々と日々を過ごしていたルーは、ある晩突然現れた男性から番であることを告げられる。しかも彼は獣族のみならず世界の王と呼ばれる竜帝アレクシスだった。誰かに愛されるはずがないと信じ込む男爵令嬢と番と出会い愛を知った竜帝の物語。
求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
待鳥園子
恋愛
グレンジャー伯爵令嬢ウェンディは父が友人に裏切られ、社交界デビューを目前にして無一文になってしまった。
父は異国へと一人出稼ぎに行ってしまい、行く宛てのない姉を心配する弟を安心させるために、以前邸で働いていた竜騎士を頼ることに。
彼が働くアレイスター竜騎士団は『恋愛禁止』という厳格な規則があり、そのため若い女性は働いていない。しかし、ウェンディは竜力を持つ貴族の血を引く女性にしかなれないという『子竜守』として特別に採用されることになり……。
子竜守として働くことになった没落貴族令嬢が、不器用だけどとても優しい団長と恋愛禁止な竜騎士団で働くために秘密の契約結婚をすることなってしまう、ほのぼの子竜育てありな可愛い恋物語。
【1/21取り下げ予定】悲しみは続いても、また明日会えるから
gacchi
恋愛
愛人が身ごもったからと伯爵家を追い出されたお母様と私マリエル。お母様が幼馴染の辺境伯と再婚することになり、同じ年の弟ギルバードができた。それなりに仲良く暮らしていたけれど、倒れたお母様のために薬草を取りに行き、魔狼に襲われて死んでしまった。目を開けたら、なぜか五歳の侯爵令嬢リディアーヌになっていた。あの時、ギルバードは無事だったのだろうか。心配しながら連絡することもできず、時は流れ十五歳になったリディアーヌは学園に入学することに。そこには変わってしまったギルバードがいた。電子書籍化のため1/21取り下げ予定です。
プラス的 異世界の過ごし方
seo
ファンタジー
日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。
呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。
乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。
#不定期更新 #物語の進み具合のんびり
#カクヨムさんでも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる