いつかサクラの木の下で…… -乙女ゲームお花畑ヒロインざまぁ劇の裏側、ハッピーエンドに隠されたバッドエンドの物語-(アルファ版)

やみなべ

文字の大きさ
上 下
77 / 98
第4章

14.ごめん。あの時の言葉は ※(偶然バレンタインと重なってしまった)告白回?

しおりを挟む
「他に聞きたい事は?」

「他は……」

 幾分か落ち着いて絡み酒モードから脱したエクレアからの催促。今なら大丈夫そうだと次の質問をと思いつつ、ローインはつい言い淀んだ。
 聞きたいことはある。ずっと言いたかった事はある。
 ある意味、今こそ聞くチャンスではあるが……

 いざその時が来たらつい怖気ついて思わず口淀んでしまったのだ。

 その様子をみたエクレアははぁっとため息をつく。


「今は酒の席。明日になったら今日聞いたことや言ったこと忘れた事にしてあげてもいいんだから、何聞いてもいいんだよ。例えばさっき私に襲い掛かろうとしてた時に口走ってた……」

「え、口走ってって……もしかして頭がぼーっとしてた時になにか……やったの?」

「うん、やった。でもあれはノーカンでいいよ。どうせ勢い任せなんだし見なかった聞かなかった事にしてあげる。でもね……自分の発言覚えてないの?覚えてないにしても、ずっと聞きたかった事はあるのでしょ」

「何って……」


 そういえば何か口走ってたような気がする。
 確か……結婚してくれとか………

「あっ!!?」

 もしかしてエクレアに結婚してくれって迫ってた!!!?

(っということは……)

 ローインは恐る恐るエクレアの様子を伺う。
 なんていうか……その表情はやっと気付いたかって顔をしてた。

 その顔で察した。

「ごめん。あの時の言葉は忘れてくれない?」

 ローインはこう思っていた。



 僕みたいなのと結婚を申し込まれても困るのだろう。
 エクレアは僕を友人とかパートナーとしてみてるも伴侶としてはみてない、みる気はない。
 母さんから僕との結婚を迫られると焦りだすぐらいだから、むしろ迷惑を感じてるのだろう。
 結婚を求められたら困るっと端的にいいたい。


 そんな判断を下したからこその上記台詞だったが、それはエクレアにとって逆鱗に触れる言葉だったらしい。












ピキッ




 エクレアの中の何かが壊れる音が響いたような気がしたと同時に……






ぞくり






 空気が変わった。
 背中に寒気が走った。
 極寒の地に巻き送る吹雪が襲い掛かったかのような、とてつもない寒気に襲われた。

 発生源はエクレアだった。

 エクレアがローインを凍てつかせんばかりの冷めた目で睨んでるのだ。





 そして……








パチン!!






 ローインが何かを発する前にその頬を平手で引っ叩いた。

 引っ叩いた……といっても、ものすごい軽くだ。
 エクレアがその気なら限定的に発動させた『魔人化』の腕力でもって、歯の数本が吹っ飛んで首がねじ切れるかと思うぐらいの威力でぶっ叩いてくるのだから本当に軽くだ。

 それでも不意にだからかなり痛い。


「えっ?い、いきなり……なにを」

 じんじんと痛む頬を抑えながらエクレアをみると、彼女は冷めた目から一転してにこっと笑うと……


「さっき私に向かって好きだ!結婚してほしい!って言葉は本心じゃなかったの!?あれだけ本能に忠実な行動取っといて本心じゃないっていうの!!?」


 ものすごい剣幕で迫ってきたので思わずおののく。
 だが、彼女にしてみればこの程度まだまだ序の口だった。今度はすっーと息を吸い込むと……









「 馬 鹿 に し て る の !? 」












 吸い込んだ息と共に、雄たけびのごとき大音量を放出した。

 あまりの音量のため周囲に不可視の衝撃波が走るも、彼女は止まらない。








「私だってこれでも女の子なんだよ!!ローイン君の想いに気付かないような鈍感じゃないんだよ!!結婚については人並みにあこがれ持ってるんだよ!!だから私がこうやって催促してるんじゃない!!今までずっと知らぬ存ぜぬな態度貫いてきたのも悪いと思ったからこそ今回こうやって告白の機会を作ってあげてるっていうのに!!態々酒の席とか翌日には忘れてあげるからって本音を言いやすい、玉砕してもダメージがないような状況を意図的に作ってあげたっていうのに一歩も踏み込まずに本音を隠すって……

乙 女 心 っ て も の が わ か ら な い の !!!?

 それともあれなの?!!私には乙女心なんてないとか思ってるの?!!
 自覚はあるよ!私の乙女心はものすごくねじ曲がってるってね。でも、男の子ならそんな女の子に対して不器用ながら愛を説くぐらいの甲斐性みせてよ!はぐらかすにしても告白してからにしてよ!!!さらにいうならサクラの木で壁ドンとしながら『好きだ』っとか肩を抱いてサクラを見上げながら『結婚しよう』とかで口説くとかしてよ!!私がそういったシチュエーションを好む事ぐらいわかるでしょ!!
 そんなことすらわからないのに私と結婚したいだなんて……

ほ ん っ と う に 馬 鹿 に し て る !! 」


「え、えっと」

「酒の席だからって許さないことはある!だから……こう言ったげる!!

『誰があんたなんかと結婚するか、あっかんべ~!!!!』

……っとね」


 一気に話をまくし立ててきたと思ったら最後にべーっと舌出してきた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

よくある父親の再婚で意地悪な義母と義妹が来たけどヒロインが○○○だったら………

naturalsoft
恋愛
なろうの方で日間異世界恋愛ランキング1位!ありがとうございます! ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 最近よくある、父親が再婚して出来た義母と義妹が、前妻の娘であるヒロインをイジメて追い出してしまう話……… でも、【権力】って婿養子の父親より前妻の娘である私が持ってのは知ってます?家を継ぐのも、死んだお母様の直系の血筋である【私】なのですよ? まったく、どうして多くの小説ではバカ正直にイジメられるのかしら? 少女はパタンッと本を閉じる。 そして悪巧みしていそうな笑みを浮かべて── アタイはそんな無様な事にはならねぇけどな! くははははっ!!! 静かな部屋の中で、少女の笑い声がこだまするのだった。

捨てられた王子

もふっとしたクリームパン
恋愛
*『拾われた令嬢』と同じ世界観、ふわっとしてます。そちらも読んで頂けるとより楽しんで頂けると思います。 「私、王太子ダルダ・クニスキンは、婚約者であるメルシア・ソロシアンとの婚約を破棄する事をここで宣言しよう!」  本日は、煌びやかな卒業パーティー。そこに華やかに着飾る黒髪のモナと共に入場し、私は皆に告げる。 「そして、私はこの愛するモナ・ドドイナカと結婚する。以上だ、さぁ卒業パーティーを楽しもうじゃないか」  静まり返る周囲に構うことなく、私はモナとフロアの中央を陣取る。ファーストダンスだ。モナと踊る事を楽しみにしていたのだが、なかなか音楽が始まらない。側近達に視線を送れば、ようやく音楽が流れだし、軽やかなステップで私達は踊り始めた。  気後れでもしているのか、私達に続いて踊り出す者はいなかった。だがそれも無理もない話だ。こんなにも可愛らしいモナと王太子である私、ダルダが踊っているのだからな。例え踊る者がいたとしても、私達が皆の視線を集めてしまい、目にされもしないだろう。  視界の端に元婚約者の姿が見えた気がしたが、愛するモナ以外と踊る気はなかった。私は真実の愛を見つけたのだ、さらばだメルシア。 *見切り発車の為、矛盾が出てくるかもしれません。見つけ次第修正します。 *本編10話と登場人物紹介(本編後のメモ書きあり)で完結。*『捨てられた王子と拾われた令嬢』としてアルファポリス様にも投稿しています。内容は変わりません。 随時、誤字修正と読みやすさを求めて試行錯誤してますので行間など変更する場合があります。 拙い作品ですが、どうぞよろしくお願いします。

乙女ゲームの正しい進め方

みおな
恋愛
 乙女ゲームの世界に転生しました。 目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。  私はこの乙女ゲームが大好きでした。 心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。  だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。  彼らには幸せになってもらいたいですから。

義妹が大事だと優先するので私も義兄を優先する事にしました

さこの
恋愛
婚約者のラウロ様は義妹を優先する。 私との約束なんかなかったかのように… それをやんわり注意すると、君は家族を大事にしないのか?冷たい女だな。と言われました。 そうですか…あなたの目にはそのように映るのですね… 分かりました。それでは私も義兄を優先する事にしますね!大事な家族なので!

【完結】今世も裏切られるのはごめんなので、最愛のあなたはもう要らない

曽根原ツタ
恋愛
隣国との戦時中に国王が病死し、王位継承権を持つ男子がひとりもいなかったため、若い王女エトワールは女王となった。だが── 「俺は彼女を愛している。彼女は俺の子を身篭った」 戦場から帰還した愛する夫の隣には、別の女性が立っていた。さらに彼は、王座を奪うために女王暗殺を企てる。 そして。夫に剣で胸を貫かれて死んだエトワールが次に目が覚めたとき、彼と出会った日に戻っていて……? ──二度目の人生、私を裏切ったあなたを絶対に愛しません。 ★小説家になろうさまでも公開中

悪役令嬢とバレて、仕方ないから本性をむき出す

岡暁舟
恋愛
第一王子に嫁ぐことが決まってから、一年間必死に修行したのだが、どうやら王子は全てを見破っていたようだ。婚約はしないと言われてしまった公爵令嬢ビッキーは、本性をむき出しにし始めた……。

【完結】初めて嫁ぎ先に行ってみたら、私と同名の妻と嫡男がいました。さて、どうしましょうか?

との
恋愛
「なんかさぁ、おかしな噂聞いたんだけど」 結婚式の時から一度もあった事のない私の夫には、最近子供が産まれたらしい。 夫のストマック辺境伯から領地には来るなと言われていたアナベルだが、流石に放っておくわけにもいかず訪ねてみると、 えっ? アナベルって奥様がここに住んでる。 どう言う事? しかも私が毎月支援していたお金はどこに? ーーーーーー 完結、予約投稿済みです。 R15は、今回も念の為

(完結)私はあなた方を許しますわ(全5話程度)

青空一夏
恋愛
 従姉妹に夢中な婚約者。婚約破棄をしようと思った矢先に、私の死を望む婚約者の声をきいてしまう。  だったら、婚約破棄はやめましょう。  ふふふ、裏切っていたあなた方まとめて許して差し上げますわ。どうぞお幸せに!  悲しく切ない世界。全5話程度。それぞれの視点から物語がすすむ方式。後味、悪いかもしれません。ハッピーエンドではありません!

処理中です...