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第4章
13.……なんかもうついていけないんだけど
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エクレアの放った踵落とし……
それ自体は『もう泣いていい?』の発言を完全スルーされた事による完全な八つ当たり。ローインとしてはとばっちりに近いものの、妄想の行き付く果てへとたどり着く前に現実へ戻れたのでよかったと言うべきだろう……
その代わり鼻から大量の出血を伴う事になったが、そんなうずくまるローインを無視してエクレアはどかっと地面に座りながら追加の酒、どぶろくを煽った。
盃に移してからでなく直接ラッパ飲みだ。やけ酒だ。
「……………まぁ私は悪魔と契約して悪魔憑きとなった以上、教会との敵対は避けられない。教会と敵対するならその背後にいる『神』とも敵対することになる。『神』と対決するには魔王であるあのスケコマシ野郎と手を組むしかない……ひじょーに不愉快ではあるけど、“キャロット”の見立てではスケコマシ魔王は信用できる。お母さん達を人質にしたといっても、私が変な真似をしない限りは紳士としての態度は崩さないって言うから一応信じる事にした。全てを信じる気はないけど」
ドン!!っと、どぶろくの瓶をおくエクレア。
その目は完全に据わっていた。
「えっと……その根拠は?」
「今回の一件を完全に隠蔽してる。解放前のダンジョンに重大なバグが発生したので一度世界から切り離して修正するって名目でここら一体をあのスケコマシの管轄にしてる。『神』であろうともこの近辺で起きる事は知りえないからこそ、今こうやって悪魔の力を表に出したり『神』を倒すだなんて堂々と言えるわけだし」
言葉通りエクレアは再び闇の翼を展開。
深い深い、世界全てを飲み込むかのような魔性を持ちながらも見る人を魅了する神秘性を持つ、サクラのような翼だ。
ただし本人は酒に酔った上で据わった目をしてる、完全やけ酒モード中だ。魔性や神秘性が台無しになってるが、そこには突っ込まない。
突っ込めば絡み酒モードに移行してしまう。酒場で何度も被害にあってきた故の直感で口を紡ぐ道を選んだのだ。
「ちなみに今の私は世界を管理する『神』からみたら感染病の病原体と同じ。見かけ次第何が何でも潰しにかかるぐらいやばい病原体。それこそ周辺の被害なんてお構いなしに……例えるなら上空から特大の雷を落として焼き払うとか、地割れで大地の奥底に叩き込むとか、猛毒の雨で辺り一面を生物が住めない毒の大地に変えるとか、ひどければ隕石落としてクレーター生成なんてのも………」
「そ、そんなに危険な代物だったの?でもエクレアちゃんはその気ないわけだしそういった事を伝えれば」
「甘い!!」
台詞を言い切る前にエクレアはびしっと指……ではなく、指を形どった翼をローインの前に突き付ける。
「そんな考えは甘すぎ!!『神』にとって私は悪質な感染病の病原体なの!!伝染病をまき散らす病原体だし、実際私もそう思ってる!!本来ならこれは表に出すようなものじゃないけど……『神』と対決するするにはこれぐらい異常性を持つ『力』に頼らざるを得ないの!!おかげで私はもう完全後戻りできない立場になるし、それもこれも『神』が遊び感覚で生まれる前の私に変な細工を施したせいで……ぐびぐび」
怒りながら再度酒を煽るエクレア。量としては少量、一口なんだろうが彼女の心境としては飲まなきゃやってられないって事だろう。
というか、それだけのモノ抱え込んでたのに今までよく素面で居られた精神力の方がすごいと言うべきか……
まぁその精神力も酒の力でもって見事に吹っ飛んでる。
酒の力による勢いもあって感情のまま垂れ流している。
まさに話し始めにいった通り『正直者』だ。
嘘偽りなく感情をドストレートに出す『正直者』だ。
今のエクレアは本当に内面をさらけ出してるのだろう。
飲み終えたエクレアはぐいっと乱暴に口をぬぐった。
翼は引っ込めたようだが、胡坐座りで相変わらず目が据わったままという姿はもう女の子じゃない。完全酔っ払いの親父。下手に話しかけたらどんな愚痴を聞かされるかわかったもんじゃないっという超危険モードに入っていた。
「私が知ってるのはここまで。後、知りたい事あったら自称魔王なスケコマシ野郎本人から聞いて。一応伝言として『その気あるなら稽古つけてやる』ってさ。特にローイン君の右腕……それは元々あいつの右腕。あの時は夢我夢中だったせいで無意識に焼却したローイン君本来の右腕の代わりに移植してたみたいで、力の加減効かないのはそのせいだってさ」
「そ、そう………」
ローインは改めて自身の右腕をみる。
力加減が効かない以外は特に違和感ない。最初から自分の腕のようになじんでる。
だがそれより心配なのは……
「大丈夫。腕なんていくらでも生やせるから報酬として遠慮せず受け取れだってさ。使いこなせれば魔王を倒す運命を背負った『勇者』と同等の力を振るえるようになるから、その域まで達したいならならいつでも会いに来い。扱い方を伝授してやるって言ってるから後はもう本人から聞いて。ってことで男の正体の説明は終わり」
「……なんかもうついていけないんだけど」
ローインはそれだけつぶやいて考える。
頭の整理をする。
さっきからいろいろ常識外な事が起き過ぎて考えるのを放棄したい気分だが……状況からみて強くなるべきなのはわかる。
本人からも相談に乗ってもらえるのなら落ち着いたらまた改めて……ってことで切り上げた。
……現実逃避な気もするが、現実逃避してるのはエクレアも同じだ。お互いそこは気にしない方がいいのだろう。
それ自体は『もう泣いていい?』の発言を完全スルーされた事による完全な八つ当たり。ローインとしてはとばっちりに近いものの、妄想の行き付く果てへとたどり着く前に現実へ戻れたのでよかったと言うべきだろう……
その代わり鼻から大量の出血を伴う事になったが、そんなうずくまるローインを無視してエクレアはどかっと地面に座りながら追加の酒、どぶろくを煽った。
盃に移してからでなく直接ラッパ飲みだ。やけ酒だ。
「……………まぁ私は悪魔と契約して悪魔憑きとなった以上、教会との敵対は避けられない。教会と敵対するならその背後にいる『神』とも敵対することになる。『神』と対決するには魔王であるあのスケコマシ野郎と手を組むしかない……ひじょーに不愉快ではあるけど、“キャロット”の見立てではスケコマシ魔王は信用できる。お母さん達を人質にしたといっても、私が変な真似をしない限りは紳士としての態度は崩さないって言うから一応信じる事にした。全てを信じる気はないけど」
ドン!!っと、どぶろくの瓶をおくエクレア。
その目は完全に据わっていた。
「えっと……その根拠は?」
「今回の一件を完全に隠蔽してる。解放前のダンジョンに重大なバグが発生したので一度世界から切り離して修正するって名目でここら一体をあのスケコマシの管轄にしてる。『神』であろうともこの近辺で起きる事は知りえないからこそ、今こうやって悪魔の力を表に出したり『神』を倒すだなんて堂々と言えるわけだし」
言葉通りエクレアは再び闇の翼を展開。
深い深い、世界全てを飲み込むかのような魔性を持ちながらも見る人を魅了する神秘性を持つ、サクラのような翼だ。
ただし本人は酒に酔った上で据わった目をしてる、完全やけ酒モード中だ。魔性や神秘性が台無しになってるが、そこには突っ込まない。
突っ込めば絡み酒モードに移行してしまう。酒場で何度も被害にあってきた故の直感で口を紡ぐ道を選んだのだ。
「ちなみに今の私は世界を管理する『神』からみたら感染病の病原体と同じ。見かけ次第何が何でも潰しにかかるぐらいやばい病原体。それこそ周辺の被害なんてお構いなしに……例えるなら上空から特大の雷を落として焼き払うとか、地割れで大地の奥底に叩き込むとか、猛毒の雨で辺り一面を生物が住めない毒の大地に変えるとか、ひどければ隕石落としてクレーター生成なんてのも………」
「そ、そんなに危険な代物だったの?でもエクレアちゃんはその気ないわけだしそういった事を伝えれば」
「甘い!!」
台詞を言い切る前にエクレアはびしっと指……ではなく、指を形どった翼をローインの前に突き付ける。
「そんな考えは甘すぎ!!『神』にとって私は悪質な感染病の病原体なの!!伝染病をまき散らす病原体だし、実際私もそう思ってる!!本来ならこれは表に出すようなものじゃないけど……『神』と対決するするにはこれぐらい異常性を持つ『力』に頼らざるを得ないの!!おかげで私はもう完全後戻りできない立場になるし、それもこれも『神』が遊び感覚で生まれる前の私に変な細工を施したせいで……ぐびぐび」
怒りながら再度酒を煽るエクレア。量としては少量、一口なんだろうが彼女の心境としては飲まなきゃやってられないって事だろう。
というか、それだけのモノ抱え込んでたのに今までよく素面で居られた精神力の方がすごいと言うべきか……
まぁその精神力も酒の力でもって見事に吹っ飛んでる。
酒の力による勢いもあって感情のまま垂れ流している。
まさに話し始めにいった通り『正直者』だ。
嘘偽りなく感情をドストレートに出す『正直者』だ。
今のエクレアは本当に内面をさらけ出してるのだろう。
飲み終えたエクレアはぐいっと乱暴に口をぬぐった。
翼は引っ込めたようだが、胡坐座りで相変わらず目が据わったままという姿はもう女の子じゃない。完全酔っ払いの親父。下手に話しかけたらどんな愚痴を聞かされるかわかったもんじゃないっという超危険モードに入っていた。
「私が知ってるのはここまで。後、知りたい事あったら自称魔王なスケコマシ野郎本人から聞いて。一応伝言として『その気あるなら稽古つけてやる』ってさ。特にローイン君の右腕……それは元々あいつの右腕。あの時は夢我夢中だったせいで無意識に焼却したローイン君本来の右腕の代わりに移植してたみたいで、力の加減効かないのはそのせいだってさ」
「そ、そう………」
ローインは改めて自身の右腕をみる。
力加減が効かない以外は特に違和感ない。最初から自分の腕のようになじんでる。
だがそれより心配なのは……
「大丈夫。腕なんていくらでも生やせるから報酬として遠慮せず受け取れだってさ。使いこなせれば魔王を倒す運命を背負った『勇者』と同等の力を振るえるようになるから、その域まで達したいならならいつでも会いに来い。扱い方を伝授してやるって言ってるから後はもう本人から聞いて。ってことで男の正体の説明は終わり」
「……なんかもうついていけないんだけど」
ローインはそれだけつぶやいて考える。
頭の整理をする。
さっきからいろいろ常識外な事が起き過ぎて考えるのを放棄したい気分だが……状況からみて強くなるべきなのはわかる。
本人からも相談に乗ってもらえるのなら落ち着いたらまた改めて……ってことで切り上げた。
……現実逃避な気もするが、現実逃避してるのはエクレアも同じだ。お互いそこは気にしない方がいいのだろう。
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