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第4章
⑨.これが君のいう最終手段か
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「ふぅ……ちょっと酔っぱらったかにゃ~にゃ~んか変にゃ気分ににゃってきたらも~」
子供でも飲めるお酒といってもお酒はお酒。
ローインは酒に強い体質だったようでちょっとほろ酔い程度で済んでたが、エクレアは酒に弱かった。
顔を真っ赤にしている。
これ大丈夫なのかっと思うぐらいに真っ赤だ。
「きゃははっは~らいじょうぶ、よってにゃいよ~」
「完全な酔っ払いだよ!どっからどうみても酔っ払いだよ!」
酔っ払いの酔ってない宣言ほど信用ならない言葉はない。
エクレアは酔ってると判断したローイン。水を飲ませようと思って井戸の方へ向かおうとするも、その手をエクレアが掴んだ。
「いいにょ……こうでもしにゃきゃ~はにゃせないんだから~いまからいふこと~しらふじゃとうてい~はにゃせないから~」
「これか……これが君のいう最終手段か」
酒の席でしか話せない事もある。胸の中のものを吐き出すのは酒の力が一番。
酒の力でもって胸の内を全て吐き出す。悩みも苦しみも心の内全てをさらけだす。
昔からよく使われる手段であっても子供がとっていい手段なのか……なんて一瞬思うも、これはこれで良い手かもしれない。酒の席なら大体なんでも許せる。
「そう、だから今から話すのはただの戯言。酔っ払いの戯言だから信じる必要はないし、なんなら忘れてもいいかな。なんせ私自身まだ整理が追いついてない状態なんだし、本当に酔っ払いの戯言として聞き流してる方が身のためだよ」
さきほどの酔っ払いのフリはやめて真面目に顔を取り繕うエクレア。
もっとも、顔は赤いままなので酒の力を借りてるのは本当だろう。
そんな酔っ払いなエクレアと目が合った瞬間、不意に心臓がドキンと鳴った。
(なんだ?今の感触は……)
どういうわけか、エクレアの目から離せない。離せなかった。まるで全てを見通されるかのような眼を前にしてローインは……
「じゃぁ改めて……何から聞きたい?」
「えっ?」
エクレアの問いかけにローインはつい間の抜けた返事をしてしまった。気付けば不可思議な感覚も収まっていたが、惚けていた態度と返事にエクレアは少々呆れたようだ。ため息をつきながらも、再度酒をあおって仕切り直しにかかった。
「ふぅ……いろいろと、聞きたい事あるのでしょ。お酒に酔ってる間の私は正直者だから、質問には現状で私が知りうる事を全て正直に答えてあげる。当然はぐらかしは一切しないから好きな事聞いていいよ」
にっこりと笑う。どうやらエクレアは話の主導権をローインに渡すようだ。
これは助かる提案かもしれない。
なにせ自分が知りたい情報をピンポイントで選択できるのだ。なら最初に聞く事は……
「教えてくれるんだよね。あの時何があったのか。なぜ僕は助かったのか」
ずっと気になっていた。
あの薬、魔力を上げる薬を飲んだ者は死ぬ。間違いなく死ぬ。
だけど生きていた。生き残った。
夢の中での出来事だったという考えはあるも……
右腕に残る感触……確かにダンジョンボスらしき男を木っ端みじんに焼失した感触。今も残る右腕の違和感からみて、夢とは思えなかった。
「どうやってかというと……私はある悪魔と契約したの。契約した悪魔の力を使って死に瀕していたローイン君を救い出した。お迎えの死神を追い払ってまでね」
「えっ、悪魔?死神?……それって」
「百聞は一見に如かず。悪魔と契約した事で得た力を今見せてあげる」
戸惑うローインを後目にして……
エクレアの姿が変わった。
『魔人化』の時のように、髪や肌の色こそ変わらなくとも、背中から生える翼が全てを物語っていた。
漆黒に染まった、決まった形を取らない不定形のように蠢く闇の翼。
奥から響き渡る声……
聞くものを深い深い闇の奥……“深淵”へと誘うように招きいれる声に……
パン!!
「はっ?」
エクレアの両手を打ち合わせて鳴らした音にローインは我に返る。
自分は一体何をやろうとしてたのか、一瞬わけがわからず混乱するも
パンパン!!
再度打ち鳴らした音で再び我に返った。
「えっと……」
「わかった?これが私の中に潜んでいた悪魔。“キャロット”と契約した事で得た『魔人化』と同じように私自身を悪魔そのものに変える『悪魔化』の力……教会の伝承にある、世界を滅ぼす力を秘めた魔王のごとき力なの」
世界を滅ぼす魔王のごとき力。エクレアは自重気味にその言葉を発した。
確かに常人なら今の彼女を禍々しい力を秘めた魔王という判断を下すだろう。
世界を滅ぼすなんて誇張も信用するに値する程の力が内臓されていた。
常人なら見た瞬間、正気がなくなる。発狂して、頭がおかしくなってしまうだろうがローインはそう思わない。感じない。ただ……
「キレイだ……」
サクラの花びら同様に、ただただ美しい……
その想いで胸がいっぱいになった。
子供でも飲めるお酒といってもお酒はお酒。
ローインは酒に強い体質だったようでちょっとほろ酔い程度で済んでたが、エクレアは酒に弱かった。
顔を真っ赤にしている。
これ大丈夫なのかっと思うぐらいに真っ赤だ。
「きゃははっは~らいじょうぶ、よってにゃいよ~」
「完全な酔っ払いだよ!どっからどうみても酔っ払いだよ!」
酔っ払いの酔ってない宣言ほど信用ならない言葉はない。
エクレアは酔ってると判断したローイン。水を飲ませようと思って井戸の方へ向かおうとするも、その手をエクレアが掴んだ。
「いいにょ……こうでもしにゃきゃ~はにゃせないんだから~いまからいふこと~しらふじゃとうてい~はにゃせないから~」
「これか……これが君のいう最終手段か」
酒の席でしか話せない事もある。胸の中のものを吐き出すのは酒の力が一番。
酒の力でもって胸の内を全て吐き出す。悩みも苦しみも心の内全てをさらけだす。
昔からよく使われる手段であっても子供がとっていい手段なのか……なんて一瞬思うも、これはこれで良い手かもしれない。酒の席なら大体なんでも許せる。
「そう、だから今から話すのはただの戯言。酔っ払いの戯言だから信じる必要はないし、なんなら忘れてもいいかな。なんせ私自身まだ整理が追いついてない状態なんだし、本当に酔っ払いの戯言として聞き流してる方が身のためだよ」
さきほどの酔っ払いのフリはやめて真面目に顔を取り繕うエクレア。
もっとも、顔は赤いままなので酒の力を借りてるのは本当だろう。
そんな酔っ払いなエクレアと目が合った瞬間、不意に心臓がドキンと鳴った。
(なんだ?今の感触は……)
どういうわけか、エクレアの目から離せない。離せなかった。まるで全てを見通されるかのような眼を前にしてローインは……
「じゃぁ改めて……何から聞きたい?」
「えっ?」
エクレアの問いかけにローインはつい間の抜けた返事をしてしまった。気付けば不可思議な感覚も収まっていたが、惚けていた態度と返事にエクレアは少々呆れたようだ。ため息をつきながらも、再度酒をあおって仕切り直しにかかった。
「ふぅ……いろいろと、聞きたい事あるのでしょ。お酒に酔ってる間の私は正直者だから、質問には現状で私が知りうる事を全て正直に答えてあげる。当然はぐらかしは一切しないから好きな事聞いていいよ」
にっこりと笑う。どうやらエクレアは話の主導権をローインに渡すようだ。
これは助かる提案かもしれない。
なにせ自分が知りたい情報をピンポイントで選択できるのだ。なら最初に聞く事は……
「教えてくれるんだよね。あの時何があったのか。なぜ僕は助かったのか」
ずっと気になっていた。
あの薬、魔力を上げる薬を飲んだ者は死ぬ。間違いなく死ぬ。
だけど生きていた。生き残った。
夢の中での出来事だったという考えはあるも……
右腕に残る感触……確かにダンジョンボスらしき男を木っ端みじんに焼失した感触。今も残る右腕の違和感からみて、夢とは思えなかった。
「どうやってかというと……私はある悪魔と契約したの。契約した悪魔の力を使って死に瀕していたローイン君を救い出した。お迎えの死神を追い払ってまでね」
「えっ、悪魔?死神?……それって」
「百聞は一見に如かず。悪魔と契約した事で得た力を今見せてあげる」
戸惑うローインを後目にして……
エクレアの姿が変わった。
『魔人化』の時のように、髪や肌の色こそ変わらなくとも、背中から生える翼が全てを物語っていた。
漆黒に染まった、決まった形を取らない不定形のように蠢く闇の翼。
奥から響き渡る声……
聞くものを深い深い闇の奥……“深淵”へと誘うように招きいれる声に……
パン!!
「はっ?」
エクレアの両手を打ち合わせて鳴らした音にローインは我に返る。
自分は一体何をやろうとしてたのか、一瞬わけがわからず混乱するも
パンパン!!
再度打ち鳴らした音で再び我に返った。
「えっと……」
「わかった?これが私の中に潜んでいた悪魔。“キャロット”と契約した事で得た『魔人化』と同じように私自身を悪魔そのものに変える『悪魔化』の力……教会の伝承にある、世界を滅ぼす力を秘めた魔王のごとき力なの」
世界を滅ぼす魔王のごとき力。エクレアは自重気味にその言葉を発した。
確かに常人なら今の彼女を禍々しい力を秘めた魔王という判断を下すだろう。
世界を滅ぼすなんて誇張も信用するに値する程の力が内臓されていた。
常人なら見た瞬間、正気がなくなる。発狂して、頭がおかしくなってしまうだろうがローインはそう思わない。感じない。ただ……
「キレイだ……」
サクラの花びら同様に、ただただ美しい……
その想いで胸がいっぱいになった。
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