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第4章
6.もう借金に怯える事はなくなるってことだし、よかったじゃないのかな
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「さてっと、いつまでも会話ないまま歩くのもあれだし話をしよっか……具体的にいうと一週間前の騒動の真相。特にローイン君の身に何があったかについて」
「やっぱりその件だったんだね。僕と二人っきりになりたかったのは他の人に聞かれたくなかったから?」
「それもあるかな。本来はすぐに話さないといけないことだったけど事情があって、すぐには無理っというかまだまだ先かなと思ってたら今日そうはいかない事情ができて……
あーあまりにも唐突すぎて心の準備が整ってないというか、こっちもぐちゃぐちゃでいっそ愚痴がてらなんでもかんでもぶっちゃけたいっというか、もうどうにでもなれっとヤケクソになったのか」
「………」
ローインは黙る。
エクレアが悩む事自体は特段珍しくはない。ただここまで早口というか疲れた表情で愚痴を垂れ流す姿はあんまりみたことない。
「無理してたんだ」
「うん、今日まではお披露目会ということもあってそっちに意識を向けていたの。他の事考える余裕なかったともいうけど……」
「余裕ないなんて当然だよ。予定外な事で準備期間が短くなって、人手まで少なくなった。だけど告知されてる以上延期はできなかった。いや、延期はできたけど信用第一な商人相手。ましてや初めて取引する商会が大多数なら、延期なんて選択絶対取りたくないよね。特に借金抱えてるなら信用勝ち取る必要あるんだし。ちなみに結果は?」
「想像以上。まさかここまで有利な条件で契約取れるなんて思ってなかった。多分残り借金は1年で返しきれるじゃないのかってぐらい」
「そ、そんなにすごかったんだ。それって『味噌』と『醤油』だけで3000万Gの利益だせるって計算になるんだけど」
「価値もそうだけどお母さんの手腕もあったみたい。交渉終了後に何人かの商人と接客がてら世間話的に成果を聞いたらお母さんは過去に大手の商会や商人とやりやってきたのではっと思われるぐらい場馴れしてるのか、話術ではそう簡単に切り崩せなかったって。力押しに関しても師匠がキーテス伯爵家と養子縁組をした親族で現当主の義理の妹という権力を上手くちらつかせて黙らせてたっぽいし」
「その様は丁度僕もみてたよ。権力によるごり押しを回避させるためとはいえ、母さんの実家であるキーテス伯爵家を巻き込むなんて随分無茶やったよね」
去年の秋頃にだが、ローインは自分の母がキーテス伯爵家出身だと説明してくれた。
魔女サトーマイは身元がはっきりしてないため、以前からキーテス伯爵家の前当主の養子縁組の話はあったそうだが、成立前に死去。
そのまま話は宙ぶらりんとなってたようだが、『味噌』と『醤油』の便宜上開発者となった事でエクレアを貴族の権力から守る意味も含めて強行させたらしい。
伯爵家からすればこの縁組は『味噌』と『醤油』を作り出した魔女とその弟子であるエクレアとの縁が持てる。エクレアにも尊敬する師匠が身元不明なのをいいことに、どこの馬の骨かわからない輩が勝手に親戚を名乗って来るのを防げるという利点がある。
ローインは最初こそでっち上げに近い詐欺に消極的反対な立場であっても、今日の商談……男爵や子爵といった貴族の権力でごり押ししてきた者達を伯爵の権力で黙らせた光景をみて考えを改めていた。
ちなみに母スージー曰く
“こういった権力の活用や養子縁組の強行は貴族社会でよくある日常なの。貴族と関わるなら平民の常識で考えてはいけないという事は理解しておきなさい”
だそうで、ローインには無縁な世界だと改めて感じたのだ。
「無茶といえば伯爵以上の権力持ちがいたけど、そっちはなぜかおやっさんの顔みたとたん青ざめてたよね。……今更だけどおやっさんの正体ってなんなんだろう?」
「さ、さぁ……?一応国内で最強と噂される戦士らしいし、お偉いさんに対していろいろコネがあるんじゃないの?その証拠として村にはお忍びっぽいけど雰囲気からみて身分高そうな、ロイヤルな人がおやっさん達と親し気に談話するのをよくみるわけだし……」
「その談話って『今の王様は頼りない』とか『謀反を起こすべき』とか凄い内容なんだけど……いくら酒の席だからって周囲に無遠慮で話さないでほしいと思わない?」
「あはは……と、とりあえずもう借金に怯える事はなくなるってことだし、よかったじゃないのかな」
これ以上おやっさんの事を話題にするのはまずいと感じたローイン。
ごまかすように話題を変えるも、それはエクレアにとっては地雷だったのか。
エクレアはローインをギロリと睨む。
「何言ってんの!?これからが本番だよ!!『味噌』と『醤油』を世に出した以上、絶対に類似品が出回る!!言っちゃ悪いけど私やローイン君みたいな未熟な錬金術で作った物だよあれ。わかってるの!!」
「いやいやちょっとまって、あれ真似なんかできるの?材料にバジリスクとかワイバーンといった中央部にはまず出ない魔獣の内臓使ってるのに」
「高位の錬金術師ならもっと安価なありふれた素材で代用できるだろうし、今のままで満足なんてしてたらすぐ客を取られる!!だから私達も改良進めてコストの削減と品質向上を目指していく!!いい、わかった?」
話題を切り替えて励まそうと思ったら逆にずずいっと詰め寄られて説教されてしまった。
現状に満足せず常に上を目指す……
本当このバイタリティはすごい、すごいっと言わざるを得ない。
ただし、その真意は……
「やっぱりその件だったんだね。僕と二人っきりになりたかったのは他の人に聞かれたくなかったから?」
「それもあるかな。本来はすぐに話さないといけないことだったけど事情があって、すぐには無理っというかまだまだ先かなと思ってたら今日そうはいかない事情ができて……
あーあまりにも唐突すぎて心の準備が整ってないというか、こっちもぐちゃぐちゃでいっそ愚痴がてらなんでもかんでもぶっちゃけたいっというか、もうどうにでもなれっとヤケクソになったのか」
「………」
ローインは黙る。
エクレアが悩む事自体は特段珍しくはない。ただここまで早口というか疲れた表情で愚痴を垂れ流す姿はあんまりみたことない。
「無理してたんだ」
「うん、今日まではお披露目会ということもあってそっちに意識を向けていたの。他の事考える余裕なかったともいうけど……」
「余裕ないなんて当然だよ。予定外な事で準備期間が短くなって、人手まで少なくなった。だけど告知されてる以上延期はできなかった。いや、延期はできたけど信用第一な商人相手。ましてや初めて取引する商会が大多数なら、延期なんて選択絶対取りたくないよね。特に借金抱えてるなら信用勝ち取る必要あるんだし。ちなみに結果は?」
「想像以上。まさかここまで有利な条件で契約取れるなんて思ってなかった。多分残り借金は1年で返しきれるじゃないのかってぐらい」
「そ、そんなにすごかったんだ。それって『味噌』と『醤油』だけで3000万Gの利益だせるって計算になるんだけど」
「価値もそうだけどお母さんの手腕もあったみたい。交渉終了後に何人かの商人と接客がてら世間話的に成果を聞いたらお母さんは過去に大手の商会や商人とやりやってきたのではっと思われるぐらい場馴れしてるのか、話術ではそう簡単に切り崩せなかったって。力押しに関しても師匠がキーテス伯爵家と養子縁組をした親族で現当主の義理の妹という権力を上手くちらつかせて黙らせてたっぽいし」
「その様は丁度僕もみてたよ。権力によるごり押しを回避させるためとはいえ、母さんの実家であるキーテス伯爵家を巻き込むなんて随分無茶やったよね」
去年の秋頃にだが、ローインは自分の母がキーテス伯爵家出身だと説明してくれた。
魔女サトーマイは身元がはっきりしてないため、以前からキーテス伯爵家の前当主の養子縁組の話はあったそうだが、成立前に死去。
そのまま話は宙ぶらりんとなってたようだが、『味噌』と『醤油』の便宜上開発者となった事でエクレアを貴族の権力から守る意味も含めて強行させたらしい。
伯爵家からすればこの縁組は『味噌』と『醤油』を作り出した魔女とその弟子であるエクレアとの縁が持てる。エクレアにも尊敬する師匠が身元不明なのをいいことに、どこの馬の骨かわからない輩が勝手に親戚を名乗って来るのを防げるという利点がある。
ローインは最初こそでっち上げに近い詐欺に消極的反対な立場であっても、今日の商談……男爵や子爵といった貴族の権力でごり押ししてきた者達を伯爵の権力で黙らせた光景をみて考えを改めていた。
ちなみに母スージー曰く
“こういった権力の活用や養子縁組の強行は貴族社会でよくある日常なの。貴族と関わるなら平民の常識で考えてはいけないという事は理解しておきなさい”
だそうで、ローインには無縁な世界だと改めて感じたのだ。
「無茶といえば伯爵以上の権力持ちがいたけど、そっちはなぜかおやっさんの顔みたとたん青ざめてたよね。……今更だけどおやっさんの正体ってなんなんだろう?」
「さ、さぁ……?一応国内で最強と噂される戦士らしいし、お偉いさんに対していろいろコネがあるんじゃないの?その証拠として村にはお忍びっぽいけど雰囲気からみて身分高そうな、ロイヤルな人がおやっさん達と親し気に談話するのをよくみるわけだし……」
「その談話って『今の王様は頼りない』とか『謀反を起こすべき』とか凄い内容なんだけど……いくら酒の席だからって周囲に無遠慮で話さないでほしいと思わない?」
「あはは……と、とりあえずもう借金に怯える事はなくなるってことだし、よかったじゃないのかな」
これ以上おやっさんの事を話題にするのはまずいと感じたローイン。
ごまかすように話題を変えるも、それはエクレアにとっては地雷だったのか。
エクレアはローインをギロリと睨む。
「何言ってんの!?これからが本番だよ!!『味噌』と『醤油』を世に出した以上、絶対に類似品が出回る!!言っちゃ悪いけど私やローイン君みたいな未熟な錬金術で作った物だよあれ。わかってるの!!」
「いやいやちょっとまって、あれ真似なんかできるの?材料にバジリスクとかワイバーンといった中央部にはまず出ない魔獣の内臓使ってるのに」
「高位の錬金術師ならもっと安価なありふれた素材で代用できるだろうし、今のままで満足なんてしてたらすぐ客を取られる!!だから私達も改良進めてコストの削減と品質向上を目指していく!!いい、わかった?」
話題を切り替えて励まそうと思ったら逆にずずいっと詰め寄られて説教されてしまった。
現状に満足せず常に上を目指す……
本当このバイタリティはすごい、すごいっと言わざるを得ない。
ただし、その真意は……
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