いつかサクラの木の下で…… -乙女ゲームお花畑ヒロインざまぁ劇の裏側、ハッピーエンドに隠されたバッドエンドの物語-(アルファ版)

やみなべ

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第4章

5.付き合うって……何に!?

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「ようやく終わった……」

 ローインは嵐が通り過ぎたかのような会場を前にして呟く。

 予想以上の盛り上がりとなったお披露目会も日が暮れて来た事でやっと終わったのだ。
 招待客達も解散。一部は3次会として酒場に繰り出す者もいるが、会場となっている訓練場はすでに撤収となった。
 ーインは訓練所の脇に設置されたベンチで腰掛け、わずかな人が清掃を行っているのをぼんやりと見つめながら今日の事を振り返っていた。

 そんなローインの元にエクレアが訪れる。

「ローイン君、ちょっと付き合ってくれない?」

「えっ?付き合うって……何に!?」

 唐突に呼びかけられたエクレアの『付き合う』の言葉に一瞬どきりとする、相変わらずアレな本の影響受けまくりなローインさんじゅういっさい。
 当然エクレアはローインが思っているような裏なんてなく……

「師匠のお墓参り。まさか暗くなってきた夜道を女の子一人で歩かせる気?」

 至極全うな理由での付き合うであった。

「あーそう……って墓参りまだやってなかったの?それにすっごい疲れてる顔してるけど。もう休んだ方がいいんじゃないのかい?」

 そう、エクレアも宴会が終わった事で気が抜けたのか……もしくはローインの前ではもう取り繕う必要はないっと思ってなのか、疲労を隠そうとすらしなくなっていた。
 その証拠に……

「疲れたってのは本当だけど今年は夜にお墓参りしようって最初から決めてたし、護衛として付き合ってほしいの」

 自分で疲れたとまで暴露したのだ。それでも優先したい事がある。疲労を押してでもやりたい事があるので付き合え。エクレアはそう言いたいのだろう。

「護衛って、僕よりランプ君やトンビ君の方が適任でしょ。僕なんか」

「二人とも酒でも飲まされたのか眠りこけてるの。それに……たまには二人っきりで話するのもいいんじゃない?」

 二人っきり……
 普段通りといえば普段通り、最初こそいつも通りではあったが途中から普段と違う振る舞いを見せ始めた。
 二人っきりになりたいだなんて、いつも以上に積極的なのだ。

 エクレアはガードが緩いようで意外と固い。
 遊び感覚で誘惑的なことはしても、肝心なところまでは踏み込ませない。
 絶妙な距離感を保つための壁を作っているのに、今はその壁を取っ払っている。

 そうなった原因は……心当たりあった。

「わかった。二人で行こうか」


 ローインは立ち上がり、エクレアと共に墓参りを付き合うことにした。

 ただ、今のローインは怪我人であるため護衛としては全く頼りない。どちらかというとローインの方が守ってもらうような立場なのだが、今更二人に襲い掛かるような者はいないだろう。
 なにせエクレアは会場で無数の馬鹿や酔っ払いを蹴り飛ばして沈めてきたのだ。下手に手を出せば手痛いしっぺ返しを食らう事実が十分知れ渡ってるだろうし、もう襲い掛かるなんて馬鹿はいないだろう……っていうか、でないでほしい。
 会場では宴の席。酒の席ということでエクレアも意識刈り取る程度に手加減していたが、夜道で襲いかかってくるような馬鹿には絶対手加減しない。
 意識じゃなく物理的に首を刈り取りにかかる、それぐらい強烈な蹴りを放つ……

(いや、そもそふともも丸出しな丈のスカートで蹴るなっと突っ込む方が先か)

 そう思いながらローインの目線はエクレアの足。
 絶対領域が完備されてる、普段はまず穿かない短いスカートなのに遠慮なく蹴りを乱用するせいでしょっちゅう拝む事となるスカートの中かぼちゃに意識を向けていたが……

「この風呂敷気になるの?これ今日の料理の余りもの。師匠へのお供えものとしてね」

 エクレアは羞恥心がないのか、彼女はローインの視線が自身のスカートの中かぼちゃではなく、手から下げて持っている風呂敷に向いてると思ったらしい。

(エクレアちゃんは自分が今どんな風にみられてるのか、わかってるのかわかってないのか……いろいろな意味で将来が心配なんだよなぁ)

 そんなやりとりをしてる間に村の外にでて森の中を歩いていた。
 夜……といってもまだ夜のとばりは浅く、それほど暗くはない。
 上空には月もでているので夜が更けても月明かりが照らしてくれそうだ。

 そっと横を見るとその月明かりに照らされているエクレアの横顔がみれる。
 まだまだ子供だと思ってたが、いつのまにか子供としての殻を破ろうとしている大人の顔が覗きかけた横顔だ。

(……ただ、胸に関してはかなり残念になりそうなのg)

「蹴り飛ばされたいの?」

「イエ、ナンデモアリマセン」

 スカートの中かぼちゃは無頓着であっても、胸は結構気にしてるらしい。恐ろしいまでの勘の鋭さで釘を刺してきた。
 そっちの話題は禁句として以後触れないようにしようっとローインは強く心に刻んだ。
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