60 / 98
第3章
34.反動で私が死ぬかもしれない。でも……
しおりを挟む
「…………はっ?!」
エクレアは目覚めた。
白昼夢から目覚めたかのごとく、我に返った。
自分自身を“深淵”の中に送り込んでから時間はどれぐらい経ったのか……
“深淵”は夢の中に存在しており、夢の中では時間の経過があいまいだから下手すれば夢の1分が現実の6時間なんていう、それどこの精神と時の部屋の逆バーションな場合もある。
最悪を想定しまうエクレアであるも……
「えっ?現実では時間にして30秒も経ってないから安心しろ……?」
脳内に“キャロット”の回答が届いた。
どうやら契約した事で“深淵”の中に入らずとも脳内で会話出来るようなったようだ。
ただ……
「今の私に関しては大丈夫なの?」
エクレアは自分の姿をみながら、改めて問いかける。
それもそうだろう。
今の姿は背中に漆黒の……エクレアの内に眠っていた“深淵”を具現化させた……翼を生やした悪魔そのものになってるわけだ。
原理としては『魔人化』と同じ。魔石に含まれた瘴気で身体を魔人に作り替えられた姿を形どるから『魔人化』。対して今は“キャロット”という悪魔に憑依された状態。いわば『悪魔に心身を完全に支配されて悪魔そのものとなった人間』だろう。
幸い力の源を担っている“キャロット”は支配権を全部エクレアに渡してるので思考は素のまま。『魔人化』の時のようにエクレアの理性を吹っ飛ばすような事はない。
平常心?は保てるし翼含む“キャロット”が保有してると思われる『夢魔』としての異能の数々もエクレアの意思で自由に使用可能なものの、翼に直結されてる“深淵”から漏れ出る怨嗟の声は止められない。見た目も到底口にできない、名状しがたいもので常人なら見ただけでSAN値直葬というか……
「えっ?常人なら視界へと収めずとも怨嗟の声聞かせただけでSAN値直葬されるって……そんなもん出して大丈夫なわけ?!」
思わず“キャロット”に問い返すエクレアだが、向こうからの返答は当然のことながら……
“大丈夫じゃない。大問題だ(ビシッ)”
であった。
『そんなもの表に出すな!!』っと突っ込むも“キャロット”は“深淵”を管理する関係上、“深淵”と一心同体に近い状態となっている。よって“キャロット”の力を宿す際には“深淵”とセットについてくる。“キャロット”と“深淵”は切り離し不可能との回答が得られた。
それに、危険は本人も重々承知してるからこそ普段は奥地に引っ込んでるとも反論された。
「………………うんわかった。この力……仮名『悪魔化』は事が終わり次第即刻封印。当分の間は人前に出さない。これ決定ね」
エクレアはそう強く決意するが、これは当然だろう。
“深淵”が司る力は闇のさらに上位へと位置する“混沌”の力。
“混沌”は全ての理を破壊する力であり、本来なら世界創造を行う前の破壊のために振る舞われる力だ。
今はまだ封印を一部しか解いてないので影響も限定的。“キャロット”が制御のサポートをしてくれているのでSAN値直葬程度で済んでるが、封印の一部はすでに解いたのだ。これからは徐々に封印が解け始める。
全ての封印が解けてエクレアが前世の残留思念に飲まれたら“キャロット”では制御できなくなる。“深淵”の制御権は生みの親であるエクレアが一番上。そのエクレアが命じれば誰にも止められない。衝動そのままに“深淵”を膨張して世界全てを覆って食らいつくす。光も闇もお構いなしに全てを飲み込む事態となるだろう。
考えるだけでも、魔王よりもヤバイ代物なのだが……
「あーそう。神ではないからそこまでの力は振るえないのね」
少なくとも“キャロット”が言ってるのは本当らしい。
今のエクレアではどれだけ頑張っても、光も闇もお構いなしに全てを飲み込む破壊神にはなれない。
精々全国民を絶望のどん底に叩き落す恐怖の大王が関の山。耳をすませば犠牲者の救いを求める嘆きの声が今にも聞こえ……
「って、聞こえ始めたらやばいって!!……駄目だ。この形態を持続させればさせるほど前世の残留思念に浸食されていく気がする。私が私でいられるうちにさっさと目的を達してしまう」
そう思いながらも、今だけはこの破壊の化身ともいえる力が必須だからっと割り切る。
ローインを蘇生させるには頼らざるを得ない。今だけっと割り切りながら改めて容態を確認する。
完全に息絶えて生命活動を静止させたローインだが、魂は身体に残ったままだ。今ならまだ蘇生させることが可能。生命活動を無理やりでも再開させれば蘇生できる。
そう……原理上では蘇生可能なのだ。
ただし……
「わかってる。悪魔の力は破壊方面に特化されてるので創造方面なんて本来の使い方じゃない。全くの邪道で最悪の場合は反動で私が死ぬかもしれない。でも……私はやるから止めないでよね」
“深淵”の翼を通して“キャロット”に交信しながら、エクレアは蘇生へと取り掛かかるのであった。
エクレアは目覚めた。
白昼夢から目覚めたかのごとく、我に返った。
自分自身を“深淵”の中に送り込んでから時間はどれぐらい経ったのか……
“深淵”は夢の中に存在しており、夢の中では時間の経過があいまいだから下手すれば夢の1分が現実の6時間なんていう、それどこの精神と時の部屋の逆バーションな場合もある。
最悪を想定しまうエクレアであるも……
「えっ?現実では時間にして30秒も経ってないから安心しろ……?」
脳内に“キャロット”の回答が届いた。
どうやら契約した事で“深淵”の中に入らずとも脳内で会話出来るようなったようだ。
ただ……
「今の私に関しては大丈夫なの?」
エクレアは自分の姿をみながら、改めて問いかける。
それもそうだろう。
今の姿は背中に漆黒の……エクレアの内に眠っていた“深淵”を具現化させた……翼を生やした悪魔そのものになってるわけだ。
原理としては『魔人化』と同じ。魔石に含まれた瘴気で身体を魔人に作り替えられた姿を形どるから『魔人化』。対して今は“キャロット”という悪魔に憑依された状態。いわば『悪魔に心身を完全に支配されて悪魔そのものとなった人間』だろう。
幸い力の源を担っている“キャロット”は支配権を全部エクレアに渡してるので思考は素のまま。『魔人化』の時のようにエクレアの理性を吹っ飛ばすような事はない。
平常心?は保てるし翼含む“キャロット”が保有してると思われる『夢魔』としての異能の数々もエクレアの意思で自由に使用可能なものの、翼に直結されてる“深淵”から漏れ出る怨嗟の声は止められない。見た目も到底口にできない、名状しがたいもので常人なら見ただけでSAN値直葬というか……
「えっ?常人なら視界へと収めずとも怨嗟の声聞かせただけでSAN値直葬されるって……そんなもん出して大丈夫なわけ?!」
思わず“キャロット”に問い返すエクレアだが、向こうからの返答は当然のことながら……
“大丈夫じゃない。大問題だ(ビシッ)”
であった。
『そんなもの表に出すな!!』っと突っ込むも“キャロット”は“深淵”を管理する関係上、“深淵”と一心同体に近い状態となっている。よって“キャロット”の力を宿す際には“深淵”とセットについてくる。“キャロット”と“深淵”は切り離し不可能との回答が得られた。
それに、危険は本人も重々承知してるからこそ普段は奥地に引っ込んでるとも反論された。
「………………うんわかった。この力……仮名『悪魔化』は事が終わり次第即刻封印。当分の間は人前に出さない。これ決定ね」
エクレアはそう強く決意するが、これは当然だろう。
“深淵”が司る力は闇のさらに上位へと位置する“混沌”の力。
“混沌”は全ての理を破壊する力であり、本来なら世界創造を行う前の破壊のために振る舞われる力だ。
今はまだ封印を一部しか解いてないので影響も限定的。“キャロット”が制御のサポートをしてくれているのでSAN値直葬程度で済んでるが、封印の一部はすでに解いたのだ。これからは徐々に封印が解け始める。
全ての封印が解けてエクレアが前世の残留思念に飲まれたら“キャロット”では制御できなくなる。“深淵”の制御権は生みの親であるエクレアが一番上。そのエクレアが命じれば誰にも止められない。衝動そのままに“深淵”を膨張して世界全てを覆って食らいつくす。光も闇もお構いなしに全てを飲み込む事態となるだろう。
考えるだけでも、魔王よりもヤバイ代物なのだが……
「あーそう。神ではないからそこまでの力は振るえないのね」
少なくとも“キャロット”が言ってるのは本当らしい。
今のエクレアではどれだけ頑張っても、光も闇もお構いなしに全てを飲み込む破壊神にはなれない。
精々全国民を絶望のどん底に叩き落す恐怖の大王が関の山。耳をすませば犠牲者の救いを求める嘆きの声が今にも聞こえ……
「って、聞こえ始めたらやばいって!!……駄目だ。この形態を持続させればさせるほど前世の残留思念に浸食されていく気がする。私が私でいられるうちにさっさと目的を達してしまう」
そう思いながらも、今だけはこの破壊の化身ともいえる力が必須だからっと割り切る。
ローインを蘇生させるには頼らざるを得ない。今だけっと割り切りながら改めて容態を確認する。
完全に息絶えて生命活動を静止させたローインだが、魂は身体に残ったままだ。今ならまだ蘇生させることが可能。生命活動を無理やりでも再開させれば蘇生できる。
そう……原理上では蘇生可能なのだ。
ただし……
「わかってる。悪魔の力は破壊方面に特化されてるので創造方面なんて本来の使い方じゃない。全くの邪道で最悪の場合は反動で私が死ぬかもしれない。でも……私はやるから止めないでよね」
“深淵”の翼を通して“キャロット”に交信しながら、エクレアは蘇生へと取り掛かかるのであった。
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
[完結]本当にバカね
シマ
恋愛
私には幼い頃から婚約者がいる。
この国の子供は貴族、平民問わず試験に合格すれば通えるサラタル学園がある。
貴族は落ちたら恥とまで言われる学園で出会った平民と恋に落ちた婚約者。
入婿の貴方が私を見下すとは良い度胸ね。
私を敵に回したら、どうなるか分からせてあげる。
乙女ゲームの正しい進め方
みおな
恋愛
乙女ゲームの世界に転生しました。
目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。
私はこの乙女ゲームが大好きでした。
心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。
だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。
彼らには幸せになってもらいたいですから。
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
【1/21取り下げ予定】悲しみは続いても、また明日会えるから
gacchi
恋愛
愛人が身ごもったからと伯爵家を追い出されたお母様と私マリエル。お母様が幼馴染の辺境伯と再婚することになり、同じ年の弟ギルバードができた。それなりに仲良く暮らしていたけれど、倒れたお母様のために薬草を取りに行き、魔狼に襲われて死んでしまった。目を開けたら、なぜか五歳の侯爵令嬢リディアーヌになっていた。あの時、ギルバードは無事だったのだろうか。心配しながら連絡することもできず、時は流れ十五歳になったリディアーヌは学園に入学することに。そこには変わってしまったギルバードがいた。電子書籍化のため1/21取り下げ予定です。
婚約破棄の『めでたしめでたし』物語
サイトウさん
恋愛
必ず『その後は、国は栄え、2人は平和に暮らしました。めでたし、めでたし』で終わる乙女ゲームの世界に転生した主人公。
この物語は本当に『めでたしめでたし』で終わるのか!?
プロローグ、前編、中篇、後編の4話構成です。
貴族社会の恋愛話の為、恋愛要素は薄めです。ご期待している方はご注意下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる