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第3章

28.考えろ。この状況を抜ける突破口を……(side:ローイン)

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 敵を倒さなければいけない。

 何が何でも倒さなければいけない。

 倒れても立ち上がればいい。

 何度でも立ち上がればいい。

 例え100万回やられようとも、諦めなければ負けない。

 何度でも何度でも……









……………………


“ヤメテ……モウ……ヤメテ……”

 霞がかかった頭の中、ふとエクレアの声が聞こえた。

 戦意を削ぐかのようなその声にローインは立ち止まる。
 戦いの中で戦いを忘れた……
 そんな気が緩んだ瞬間、鈍器でぶん殴られたかのような衝撃に襲われた。


「がはっ!!?」

 壁まで吹き飛ばされ思わず呻く。
 内臓を痛めたのだろう、口から血が吐き出される。

「うぐっ……僕は一体何を?」

 ローインは血をぬぐいながらポーションを飲む。
 全て回復しきれないがとりあえずはマシになった。

 そうして戦況をみて……唖然とした。

「こ、これは……一体なにが?」

 床に広がったおびただしいまでの血の量。
 一体これはどこのだれが流したのか……

 少なくともローイン達3人だけで流したとは思えない。もっと大人数が流した量だ。

「そうだ、2人は……」

 そう思い2人を探すとすぐに見つけられた。

 男に飛び掛かって派手な音と共に地面を転がっていたからすぐにわかった。
 しかし、様子がおかしい。

 あれだけ派手な音が響かせたのに、2人は何事もないかのごとく立ち上がって飛び掛かり……また殴られて地面を転がる。
 だが、また何事もなく立ち上がり……殴られて地面を転がる。

「な、何が……起きてるの?」

 異常だ。異常すぎる……
 一体何が起きてるのか、全く理解不能。

 だが……


“ヤメテ……モウ……ヤメテ……”

「エ、エクレア……ちゃん?」

 エクレアの声がまた響いた。
 本人は男の右手に首を締め付けられながら壁に縫い付けられている。
 その眼はまるで死んだかのように覇気がなく、口からブツブツと言葉にならない何かが漏れるのみ……

 初めてだった。
 エクレアがあれほどまでに絶望に屈した、壊れた姿をみるのは初めてだった。

「エクレアちゃん!今助ける!!」

 とにかく男の注意が2人に向いてる内に助けようと思うも、それはできなかった。
 ある程度近づいたところで見えない壁に遮られたのだ。
 壁のような障害物があるわけでなく、ある地点を境になぜか一歩も前に進めなくなったのだ。

 それでも前に進もうとしたら……



バチン!!


 まるでゴムのような反動の力でもって、大きく後ろへはじき出された。


「一体これは?」


 なんとか分析をっと思い頭を巡らすも、




ドゴン!!


 大きな衝撃と共に壁へと叩きつけられた。
 どうやらはじかれた際に男の射程範囲へと入ってしまったらしく、迎撃としてぶん殴られたようだ。
 とっさに左腕で防御したので致命傷は避けれたものの、代償として骨を折ってしまった。途中からぷらぷらと揺れている。


 だというのに……

 ランプ達2人はローインを気遣う事もなく男へ立ち向かい……

 殴り飛ばされた。


“ヤメテ……モウ……ヤメテ……”

 また聞こえたエクレアの声。頭の中に直接響く、自分を戦いに誘うような声を覆い隠すように響くエクレアの“懇願”ともいうべき声。



「そうか……エクレアちゃんは止めたいんだ。この異常な戦いを」

 だがこんな状況、どうやって止めればいいのか……

 頭を使って考える。
 折れた左腕がずきずきと痛む。手持ちのポーションはもうなくなっているため治せない。
 だがこの痛みは“戦う”っと異常に引き込む謎の誘惑を断ち切ってくれていたので都合がいい。

「考えるんだ。僕はパーティーのブレイン。魔法は敵を倒すためではなく戦況を有利にするために使う。そのため、常に冷静を保って最適化をみつける。それが僕に課せられてる役目なんだ……考えろ。この状況を抜ける突破口を……」

 男は言った。ここはダンジョンだと。
 文献等の記録によるとダンジョンの中は外では考えられない現象が起きる。
 一定周期で構造が変わったり、魔物が無限に湧き出たり、武具や道具が入った宝箱が植物みたく勝手に配置されたり、死んだ者は人も魔物も何だろうと一定時間後に消えたりっと、とにかく常識外な現象が起きる。

 ならこれはダンジョン内の常識が働いてると考え……
 ダンジョンの仕様ともいうべき規則を洗い出す。

「ここは最奥……ダンジョンの最奥にはボスと呼ばれる大物がいる。ボスを倒すまで出られないが倒せばクリアー報酬を得られるのがダンジョン共通のルール……ならあいつはボス。倒せばこの現象がおさまる?」

 解決法はわかった。
 だが……あれにどうやって勝つかだ。

「勝ち筋は…………アレか。考えるまでもなくアレを使うしかないのか」

 ローインは決意した。
『黒色火薬入り試験管』とはまた別の切り札。万が一のためにと用意していた奥の手でもある最終手段を使うことを……
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