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第3章
25.やめて!私のために争わないで!!(side:俯瞰)
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「準備はできたようだな」
作戦会議中であっても、あえて何もせず見守っていた男は改めて2人の前に立ちふさがった。
「あぁ、わざわざ時間くれてありがとうな」
「何を言う、作戦会議中であっても油断なくこちらの様子を伺っていただろう。先ほどの大胆な攻撃といい、冷静に戦況を見極めて勝ち筋を探る頭脳といい、嬢ちゃんは随分といい逸材を集めたものだ」
「逸材。俺たちがか?」
「ああ、嬢ちゃんは“奴”の定めたシナリオへの反逆を企んでいる。そのための駒として眼を付けたのが君達なんだろうな」
「反逆?シナリオ?何の事だ」
「それはいずれ嬢ちゃんが話すだろう。もっともその企みは私にバレた時点で終わりなのだが……」
くいっと男が後ろを指示した、そこには
「~~~!!!」
さきほど投げた腕……右腕の手で首を絞められてもがいてるエクレアの姿がみえた。
ランプは即座に助けに向かおうとするも男は手で静止する。
「話は最後まで聞きたまえ。あれは殺そうとするためではなく余計な横やりを入れられないようにしてるだけだ。今は殺す気はない……が、将来どうなるかは知らないがな。“奴”に消されるぐらいなら私の手で引導渡すのもこれまた一興」
くくくっと笑う男の狂気染みた声に思わずぞくりと寒気が走った。
ただしエクレアに関しては3人とは違う意味での寒気が走った。
「むぐ……(い、今のって……俗にいうヤンデレ発言……?)」
少々おかしな空気を感じてきたエクレアだが、横やりを入れる手段を物理的な意味でも封じられているので見守るしかない。
まさにイベントムービーをみているかのごとく、目の前の寸劇を見守るしかなかったのだ。
「さて、君達の取る選択肢は二つある。ここでの出来事は忘れて帰る事。嬢ちゃんはここに残ってもらう事になるが君達は今まで通りの日常は過ごせる。二つ目は」
「お前を倒せってことか」
「その通り、実にシンプルだろう。ほしいものは力で奪えばいい!この私のようにな!!!」
男の雰囲気が変わった。今までも尋常ならざる空気を纏っていたが、さらに濃くなったのだ。
男の銀の髪が黒く染まり、青白かった肌も黒味を強めていく。
瞳はマガマガしいまでに紅く深く輝き……
「そ、それは……エクレアの」
「『魔人化』というものらしいな。チートの恩恵もなくチートに等しい力を得るとはさすがとしか言いようがない。だが……それだけでは足りない。何もかもが足りないのだよ」
だんっと足を踏み鳴らす。
これもエクレアがお花畑で放った『震脚』だ。
ただし、威力はエクレアの比ではない。部屋に局地的な暴風のような衝撃が巻き起こった。
「最後のテストだ!我に勝て!!絶望に打ち勝って見せろ!!でなければ嬢ちゃんと共に歩もうだなど許さん!!!!歩みたければ我の屍を乗り越えてからにするがいい!!!!」
「むがーーー!!!?(なにその『娘がほしければ俺を倒してからにしろ』発言わぁぁぁぁぁ!!!!!)」
どうやらエクレアから奪い取った“狂気”は男の精神をマジで変な方向に捻じ曲げてしまったようだ。
おまけに……
「ははは!そうかそうか……絶望に打ち勝てか!実にシンプルじゃないか。気に入ったぜ……俺は、いや俺たちはその絶望に真っ向から立ち向かってる奴を知ってるからな」
「ん、この程度絶望に入らない」
「いやいや十分絶望的だって。それでも負ける気はさらさらないけど」
あの暴風で吹き飛ばされる事なく耐え切った3人は改めて男と対峙。
敵は『魔人化』状態の吸血鬼という、ボスの第二形態とも言うべき姿だが恐れる様子は全くない。
むしろ闘志がさらに増す始末だ。
そんな様子をみていたエクレアは……
「もがーーー!!(わー皆もやる気満々になってるしーこれ完全に『やめて!私のために争わないで!!』状態になってるぅぅぅぅぅぅぅう!!!!?)
まさに寸劇……
本来なら生きるか死ぬかの『DEAD OR ALIVE』の死闘が繰り広げられるはずの戦闘は、エクレア自身もよくわかってない乙女ゲームヒロイン補正によってまったくわけのわからない方向性に突っ走った戦闘に切り替わってしまった。
こうして男が舞台を見せるの言葉に嘘偽りのない強制イベントムービーの最終幕がまさに始まろうとしていた。
なお、そのイベントムービーを強制的に見せられる羽目になったエクレアは“死んだ魚のような目”になってたのは言うまでもない……
作戦会議中であっても、あえて何もせず見守っていた男は改めて2人の前に立ちふさがった。
「あぁ、わざわざ時間くれてありがとうな」
「何を言う、作戦会議中であっても油断なくこちらの様子を伺っていただろう。先ほどの大胆な攻撃といい、冷静に戦況を見極めて勝ち筋を探る頭脳といい、嬢ちゃんは随分といい逸材を集めたものだ」
「逸材。俺たちがか?」
「ああ、嬢ちゃんは“奴”の定めたシナリオへの反逆を企んでいる。そのための駒として眼を付けたのが君達なんだろうな」
「反逆?シナリオ?何の事だ」
「それはいずれ嬢ちゃんが話すだろう。もっともその企みは私にバレた時点で終わりなのだが……」
くいっと男が後ろを指示した、そこには
「~~~!!!」
さきほど投げた腕……右腕の手で首を絞められてもがいてるエクレアの姿がみえた。
ランプは即座に助けに向かおうとするも男は手で静止する。
「話は最後まで聞きたまえ。あれは殺そうとするためではなく余計な横やりを入れられないようにしてるだけだ。今は殺す気はない……が、将来どうなるかは知らないがな。“奴”に消されるぐらいなら私の手で引導渡すのもこれまた一興」
くくくっと笑う男の狂気染みた声に思わずぞくりと寒気が走った。
ただしエクレアに関しては3人とは違う意味での寒気が走った。
「むぐ……(い、今のって……俗にいうヤンデレ発言……?)」
少々おかしな空気を感じてきたエクレアだが、横やりを入れる手段を物理的な意味でも封じられているので見守るしかない。
まさにイベントムービーをみているかのごとく、目の前の寸劇を見守るしかなかったのだ。
「さて、君達の取る選択肢は二つある。ここでの出来事は忘れて帰る事。嬢ちゃんはここに残ってもらう事になるが君達は今まで通りの日常は過ごせる。二つ目は」
「お前を倒せってことか」
「その通り、実にシンプルだろう。ほしいものは力で奪えばいい!この私のようにな!!!」
男の雰囲気が変わった。今までも尋常ならざる空気を纏っていたが、さらに濃くなったのだ。
男の銀の髪が黒く染まり、青白かった肌も黒味を強めていく。
瞳はマガマガしいまでに紅く深く輝き……
「そ、それは……エクレアの」
「『魔人化』というものらしいな。チートの恩恵もなくチートに等しい力を得るとはさすがとしか言いようがない。だが……それだけでは足りない。何もかもが足りないのだよ」
だんっと足を踏み鳴らす。
これもエクレアがお花畑で放った『震脚』だ。
ただし、威力はエクレアの比ではない。部屋に局地的な暴風のような衝撃が巻き起こった。
「最後のテストだ!我に勝て!!絶望に打ち勝って見せろ!!でなければ嬢ちゃんと共に歩もうだなど許さん!!!!歩みたければ我の屍を乗り越えてからにするがいい!!!!」
「むがーーー!!!?(なにその『娘がほしければ俺を倒してからにしろ』発言わぁぁぁぁぁ!!!!!)」
どうやらエクレアから奪い取った“狂気”は男の精神をマジで変な方向に捻じ曲げてしまったようだ。
おまけに……
「ははは!そうかそうか……絶望に打ち勝てか!実にシンプルじゃないか。気に入ったぜ……俺は、いや俺たちはその絶望に真っ向から立ち向かってる奴を知ってるからな」
「ん、この程度絶望に入らない」
「いやいや十分絶望的だって。それでも負ける気はさらさらないけど」
あの暴風で吹き飛ばされる事なく耐え切った3人は改めて男と対峙。
敵は『魔人化』状態の吸血鬼という、ボスの第二形態とも言うべき姿だが恐れる様子は全くない。
むしろ闘志がさらに増す始末だ。
そんな様子をみていたエクレアは……
「もがーーー!!(わー皆もやる気満々になってるしーこれ完全に『やめて!私のために争わないで!!』状態になってるぅぅぅぅぅぅぅう!!!!?)
まさに寸劇……
本来なら生きるか死ぬかの『DEAD OR ALIVE』の死闘が繰り広げられるはずの戦闘は、エクレア自身もよくわかってない乙女ゲームヒロイン補正によってまったくわけのわからない方向性に突っ走った戦闘に切り替わってしまった。
こうして男が舞台を見せるの言葉に嘘偽りのない強制イベントムービーの最終幕がまさに始まろうとしていた。
なお、そのイベントムービーを強制的に見せられる羽目になったエクレアは“死んだ魚のような目”になってたのは言うまでもない……
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