上 下
48 / 98
第3章

22.実にいいお友達を持ったものだ(side:俯瞰)

しおりを挟む
「ゴブリン……あんまりいないな」

 エクレアが簀巻きで抗議してる最中、ランプ達は順調に遺跡改めダンジョンを攻略していた。
 なにせダンジョンと言っても、まだ稼働前。魔物や罠は全く配置されてない。
 居たのは勝手に住み着いたゴブリン50匹前後。大半はエクレアがお花畑で肥料に変えた。

 ダンジョンに帰還できたのは10匹にも満たない数であって、それも先ほどで仕留めた。
 ロクに動けない怪我人だろうと容赦なく仕留めた。
 ゴブリンは皆殺し。彼等は村の掟……見敵必殺サーチアンドデストロイの掟に従って、出会い頭に抹殺したのだ。

 そうして彼等は進む。
 ここがダンジョンだということを知らず……
 例えダンジョンと判明しても、稼働前故に罠や魔物の類は一切配置されていない。配置されてても稼働してないという、オープン前のアトラクションみたく進む。

 ゴブリン以外なんの障害もなく順調すぎる道のりの末、最奥で待ち受けていたは一つの仰々しい扉。
 そして、扉前に転がっているエクレアの靴である。


「……これ、どうみる?ちなみに俺は特に意味なしと思ってる」

「盛大に何もないと思う」

「同じく。僕にはもうこれエクレアちゃんの茶目っ気で置いたとしか思えない」

 罠があったらあったで困るが、逆に順調すぎる道のりっというのも困るらしい。
 特にこういった遺跡は安全の保障ができるまで常に警戒しろっと教わってきたのに、いざ入ったら罠も障害も全くない。
 魔物も10匹程度のゴブリンのみ。半数は怪我をして半死半生で残りも半狂乱だ。敵の侵入を全く想定してなかったのか、遭遇しても慌てるだけでロクに反撃してこない。

 追跡でも痕跡全く隠さなかったことといい、エクレアはゴブリンにさらわれたのではなく、下僕にして住処まで案内させただけじゃないのかっと勘ぐってきたところでこれだ。


「「「………」」」

 3人の脳裏にはこの扉の先でエクレアが王座っぽい何かにふんぞり返ってるイメージさえ思い浮かぶ。従えたゴブリンを素足でげしげし踏みつけながら……

「いくか。この先にエクレアは居るだろうし、何があっても驚かないっと決めよう。あいつは想像の斜め上を行くからその気構えを忘れるなよ………はぁ」

 ぞんざいもぞんざい。本当にお騒がせな奴だっとランプはため息を付きながら扉を蹴り破った。
 本来なら先に罠を調べたりするものだが、どうせ罠があっても大したものでない。
 あったらあったで踏みつぶす。まともに付き合う義理なんてないっと言わんばかりに蹴り破った。

 どごんっ!!という衝撃と共に勢いよく開け放たれた扉の先は……




「よく此処までたどり着いた。侵入者よ、歓迎しよう」



 玄室のような広場の中央奥に安地された棺に座り込んでいる男と

「むー!!」

 その男の隣でシーツのような布でぐるぐる巻きの簀巻きでぷらぷらと吊るされているエクレアがいた。




 目的であったエクレアを発見したランプたち。
 だが予想とは違う展開に少々困惑し、彼らは状況を確認するかのよう互いに顔を向ける。

「さっきも同じ事聞いたが再度聞くぞ。これ、どうみる?ちなみに俺は遊んでるだけだと思う」

「遊び……でしょ」

「だよね。エクレアちゃんを拘束したいんだったら鎖でがんじがらめにしないといけないんだし、大人しくしてるなら囚われのお姫様感覚で遊んでるんでしょ」

 普段の振る舞いが振る舞いなせいで全く本気にされてなかった。
 ちなみに3人とも小声で話さず割と堂々なので声は奥の二人にもしっかり届いている。

「嬢ちゃん……実にいいお友達を持ったものだ。少しは同情してやってもいいぞ」

「むー(同情するなら布切れで簀巻きの上からじゃなく縄だけで縛って吊るすとか鎖で両手を上にして吊るすとかもうちょっと囚われのお姫様感だしてよー)」

 こっちもこっちで緊迫感がまるでなしっと空気がいろいろ台無しであった。


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

[完結]本当にバカね

シマ
恋愛
私には幼い頃から婚約者がいる。 この国の子供は貴族、平民問わず試験に合格すれば通えるサラタル学園がある。 貴族は落ちたら恥とまで言われる学園で出会った平民と恋に落ちた婚約者。 入婿の貴方が私を見下すとは良い度胸ね。 私を敵に回したら、どうなるか分からせてあげる。

乙女ゲームの正しい進め方

みおな
恋愛
 乙女ゲームの世界に転生しました。 目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。  私はこの乙女ゲームが大好きでした。 心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。  だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。  彼らには幸せになってもらいたいですから。

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

王子の逆鱗に触れ消された女の話~執着王子が見せた異常の片鱗~

犬の下僕
恋愛
美貌の王子様に一目惚れしたとある公爵令嬢が、王子の妃の座を夢見て破滅してしまうお話です。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

貴方と私では格が違うのよ~魅了VS魅了~

callas
恋愛
彼女が噂の伯爵令嬢ね…… 魅了魔法を使って高位貴族を虜にしていく彼女。 ついには自分の婚約者までも…… でもね…相手が悪かったわね

【1/21取り下げ予定】悲しみは続いても、また明日会えるから

gacchi
恋愛
愛人が身ごもったからと伯爵家を追い出されたお母様と私マリエル。お母様が幼馴染の辺境伯と再婚することになり、同じ年の弟ギルバードができた。それなりに仲良く暮らしていたけれど、倒れたお母様のために薬草を取りに行き、魔狼に襲われて死んでしまった。目を開けたら、なぜか五歳の侯爵令嬢リディアーヌになっていた。あの時、ギルバードは無事だったのだろうか。心配しながら連絡することもできず、時は流れ十五歳になったリディアーヌは学園に入学することに。そこには変わってしまったギルバードがいた。電子書籍化のため1/21取り下げ予定です。

処理中です...