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第3章

6.狩るのは私で、狩られるのはお前たちだ

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 エクレアの周囲を包囲したゴブリンは笑っていた。
 それなりの被害は出たが、大人数で囲めばもう怖くない。まさに……

「ふふふ……君たちのことだからあれでしょ。『ワハハハ、小娘!もはや、のがれることはできんぞ』とか思ってるんでしょ」

 エクレアはゴブリンの心情を代弁するかのごとく問いかける。
 武器であった鉈をモモちゃんに持ってかれたので無手となったのに、エクレアは冷静であった。
 慌てずゆっくりとした動作で、落としたとんがり帽子を拾って被りなおす。
 その様にゴブリン達は笑いを止め、わずかながらに後ずさりする。

「私の手札は最後の一本となった黒色火薬入り試験管。後は傷薬とかそんなもの。うん普通なら詰んでるね」


 恐怖を振り払うかのごとく、一匹が背後から飛び掛かってきた。
 対してエクレアは振り返ることなく無造作に裏拳を振るう。


グシャー


 それだけで頭蓋骨がひしゃげてはじけ飛んだ。

 その様にひるむも、数はまだ多いのだ。
 戦意を喪失するどころか次はタイミング合わせて一斉に襲う算段にしたらしい。ゴブリン達がゴブゴブと意思疎通やタイミングを図り始めるも、エクレアは怯えるどころかにやりと笑顔を向ける。

「一つ教えてあげる。最初逃げの一手とったのは到底敵わない。逃げるしかないって思ったんでしょう。まぁ当然だよね。私見た目とってもか弱い女の子だもんね。10歳なり立てのモモちゃんと同じぐらいの背丈なぐらいか弱くみえるもんね…………ナンデムネモイッショノサイズニナッチャッテルノ」


ザワリ……


 一瞬ものすごい狂気の籠った声が響いて思わず後ずさるゴブリン達。
 一部腰砕いてお花畑に肥料をあげてるがエクレアは気にもとめない。

 どうせこれからお花畑にたっぷりの肥料を与える事になるのだから……


「さてっと、私がこんだけ余裕ある理由を教えてあげよっか。私はある薬で魔力が上がっただけのなんちゃって魔法使いになった。魔法が使えないなんちゃって魔法使いだけど……あの薬、ただ魔力をあげる薬じゃなかったんだよね」

 例の薬……『超神水』とでもいう魔石のポーションには副作用があった。
 『飲んだ人を絶対殺すマン』な『殺意の塊』以外にも懸念されていた……

 人を化け物に、『魔人』へと変貌させてしまう副作用。


 大きく足を上げる。
 一部は位置的に中が見えてると思うも別に気にしない。
 見られたところで所詮はかぼちゃ。全く気にせず……足を踏み鳴らす。





ダン!!!





 瞬間、周囲に衝撃が走った。

 地面が、お花畑が揺れた。




『震脚』だ。





 エクレアの踏み鳴らした足を中心に放射状の衝撃波が走った。


「ふふふ……名づけて『魔人化』とでも名づけようかな、これ」

 エクレアの纏う空気がかわった。
 肌が黒く……丁度日焼けした程度に……赤黒く染まり、合わせてさくら色だった髪が黒に近い茶へと染まる。瞳は深く紅く輝く。
 懸念されてた心身を『魔人』へと作り替えられる副作用は、エクレアの意思一つでオンオフ切り替え可能な変身技能となって身に着いたのだ。


 最初に逃げたのはモモちゃんがいたからだ。
 『魔人化』を施して戦えばモモちゃんを巻き込む。
 力が強化されすぎて、思考も超が着くほどの脳筋仕様な戦闘狂となってしまってもう細かい制御が不可能なのだ。
 乱戦になったら確実に巻き込んでしまう。

 だから最初は逃げの一手を取った。

 でもモモちゃんが無事逃げおおせた今は何の気概なく全力が出せる。


「さぁって、今から教えてあげよっかねぇ」


 『震脚』のせいで立ってる者が少ないゴブリン達を前にしてエクレアは笑う。

 そりゃぁもう邪悪に口で三日月を描きながら……

 俗にいうウォーズマンスマイルを描きながら……

 彼等に宣言した。











「狩るのは私で、狩られるのはお前たちだという事をなぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」





 最後の『黒色火薬』を投げる。
 無造作に投げる。目標は特に定めない。

 これはただの狼煙。これから阿鼻叫喚の地獄絵図が繰り広げられるという開幕の狼煙だ。






 3度目の爆音を響かせながらエクレアは群れの中に飛び込む。

 完全に立場が逆転してしまった無力な獲物目掛けて………襲い掛かった。













 この日、お花畑に血の雨が振った。
 たっぷりな肥料のおかげでアレなお花が生えてきたようだが……


 いつぞやのダークマターの一件にもあるようにここら辺では稀によくある事で特に気にしなかった…?
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