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第3章
4.ならここはとっておきのものを……
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ゴブリン……
この世界ではオークやオーガと並ぶほどに有名な亜人というか魔物。
魔獣が獣から派生するのに対して、魔物は最初から魔物として生まれる。
そんな魔物の一種であるゴブリンの性質はテンプレ通りに残忍で快楽主義。奪う事と弱者を痛めつける事に喜びを見出す根っからのサディストだ。
弱さを数で補うかの如き繁殖力で大群を作り、数の暴力で村々を襲っては略奪を繰り返す邪悪な魔物。
その略奪品は家畜や食料と女。
自分達の数を増やす苗床にするため、ゴブリンは女をみるとかっさらう。
年齢なんて関係なしでさらう。
さらって………
エクレアは冷静に周囲を観察する。
現れたゴブリンは3匹。
風下からそっと近づいていた3匹のゴブリンたちは唐突に変わった風のせいで、エクレアに気付かれたため隠密を辞めたようだ。
開き直ったかのごとく堂々と姿を現して威嚇しはじめた。
「ひっ!?」
粗末なこん棒をチラつかせながら下品に笑うゴブリンに怯え、思わずエクレアの背に隠れるモモちゃん。
馬鹿には慣れてても醜悪な姿と粘着的な視線、魔物特有の殺気には慣れてないようだ。
「大丈夫。私がいるから、ね」
あやしながらもエクレアは自分の持ち物を確認する。
まずは鉈。
枝や藪の伐採やら蛇とかの獲物の解体用ではあるが武器としても使える。
薬多数。傷薬とか毒消しの他に魔獣撃退用の目潰し弾もある。ただし、風上に立つゴブリンには使えない。風向きのせいでこっちまで被弾してしまう。
他は小さなナイフとか布とか包帯とか細々としたもの。そして……
(ならここはとっておきのものを……)
エクレアはそう思い、そっとスカートをたくし上げる。
別にこれはゴブリンたちにスカートの中を見せるためじゃない。
右ふとももに巻き付けているベルトのホルダーに収納していた試験管を取り出すためだ。
なぜふところに仕込んでるのかは、ただの浪漫としか答えようがない。
少々サービス的な精神もあるが、こういったピンチな場面で間違えなく取り出せるという実用性はある。
なにせふとももに仕込んでる試験管は中身が全部同じ。間違えるわけがない。
3本あるうちの1本を抜き取る。
「モモちゃん、足は震えてない?走れる?」
奇声をあげながらも慎重にゆっくりと間合いを詰めてくるゴブリンに牽制しつつ、問いかける。
多少怯えはあるも、こくりとうなづけるので逃げる意思はあるようだ。
ならばこの場で戦わず、まず逃げる事を選ぶ。
「合図したらまずは目と耳をふさいでね」
「う、うん」
モモちゃんを左手で脇に抱え込むようにしながら、試験管の封についた紐を口で加えて思いっきり引きぬく。
こっちは浪漫でもなく別に手で引き抜いてもいい代物なのだが、両手ふさがってるので口でやるしかない。
「ふさいで!!」
抜けたのを確認したら即座に試験管をゴブリン目掛けてに投げつけ、ゴブリンへ背を向けるかのようにしてモモちゃんに覆いかぶさる。
激しい閃光からの轟音。
腹の底にまで響くような轟音が響いた。
エクレアが投げた試験管の中身は『黒色火薬』。
かつてマイ師匠がバジリスクを追い払うために使用した、異世界転生や転移者が現代知識でもって生み出される定番の兵器『黒色火薬』だ。
転移者でなおかつ周囲に危険が満ち溢れている地に放り込まれたマイ改め『佐藤 舞』は当然のごとく火薬を作っていた。
マイ作は音が派手なだけのコケ脅しだったが、エクレアは錬金術も併用させてさらなる強化改良を行った……結果、
こうかはばつぐんだった。
3匹はふっとんだ。
粉々にふっとんだ。
モザイクかけないといけないぐらい盛大に吹っ飛んだ。
幸い湧き出た煙が煙幕になってるからしばらくはグロいのを見なくても済むも、今はそんなどうでもいい事考える余裕なんてない。
「走るよ!!」
モモちゃんの手を引きながら走る。
エクレアは気付いていた。
最初に姿現した3匹は陽動であり、追い込みの役目だと。
驚いて思わず反対方向に逃げたら半包囲して待機してるゴブリンの中心部に突っ込む羽目になるっと見抜いていた。
だから逃げる先は正面。正面突破!!
予想は当たってたらしく作戦失敗を察したのかゴブリン達はプランBに……たぶん作戦も何もあったもんじゃない総攻撃に入った。
周囲からわらわらと出てくる出てくる。
出てくるだけでなく足止めの遠距離攻撃だと言わんばかりに石を投げつけてくる。
「ゴブリンのくせに投石なんて生意気な~!!」
エクレアは飛んできた石を鉈でさばくも、元々戦闘で糧を得るような戦士ではないのでこういった技術はあまりない。
全部をさばききれずモモちゃん含めていくつか被弾するもモモちゃんは悲鳴をあげない。
歯を食いしばって、痛みをこらえて走ってくれている。
森の入り口……アトリエまで続く道にゴブリンが3匹ほど立ち塞がってたが問題ない。
戦闘要員ではなくもここは修羅の村。戦闘訓練そのものはそこそこ積んでるのでゴブリン3匹程度なら冷静に対処すればもんd……
ずってぇぇぇぇぇぇぇぇん!!!
「ぶべらっ!!?」
ずっこけた。
盛大にずっこけた。
「お、お姉ちゃん!?」
幸いにもモモちゃんは転ばなかったようだが……エクレアは前のめりになってすっころんだのだ。
ここ一番の致命的失敗で予想外なピンチを迎えるのであった……
この世界ではオークやオーガと並ぶほどに有名な亜人というか魔物。
魔獣が獣から派生するのに対して、魔物は最初から魔物として生まれる。
そんな魔物の一種であるゴブリンの性質はテンプレ通りに残忍で快楽主義。奪う事と弱者を痛めつける事に喜びを見出す根っからのサディストだ。
弱さを数で補うかの如き繁殖力で大群を作り、数の暴力で村々を襲っては略奪を繰り返す邪悪な魔物。
その略奪品は家畜や食料と女。
自分達の数を増やす苗床にするため、ゴブリンは女をみるとかっさらう。
年齢なんて関係なしでさらう。
さらって………
エクレアは冷静に周囲を観察する。
現れたゴブリンは3匹。
風下からそっと近づいていた3匹のゴブリンたちは唐突に変わった風のせいで、エクレアに気付かれたため隠密を辞めたようだ。
開き直ったかのごとく堂々と姿を現して威嚇しはじめた。
「ひっ!?」
粗末なこん棒をチラつかせながら下品に笑うゴブリンに怯え、思わずエクレアの背に隠れるモモちゃん。
馬鹿には慣れてても醜悪な姿と粘着的な視線、魔物特有の殺気には慣れてないようだ。
「大丈夫。私がいるから、ね」
あやしながらもエクレアは自分の持ち物を確認する。
まずは鉈。
枝や藪の伐採やら蛇とかの獲物の解体用ではあるが武器としても使える。
薬多数。傷薬とか毒消しの他に魔獣撃退用の目潰し弾もある。ただし、風上に立つゴブリンには使えない。風向きのせいでこっちまで被弾してしまう。
他は小さなナイフとか布とか包帯とか細々としたもの。そして……
(ならここはとっておきのものを……)
エクレアはそう思い、そっとスカートをたくし上げる。
別にこれはゴブリンたちにスカートの中を見せるためじゃない。
右ふとももに巻き付けているベルトのホルダーに収納していた試験管を取り出すためだ。
なぜふところに仕込んでるのかは、ただの浪漫としか答えようがない。
少々サービス的な精神もあるが、こういったピンチな場面で間違えなく取り出せるという実用性はある。
なにせふとももに仕込んでる試験管は中身が全部同じ。間違えるわけがない。
3本あるうちの1本を抜き取る。
「モモちゃん、足は震えてない?走れる?」
奇声をあげながらも慎重にゆっくりと間合いを詰めてくるゴブリンに牽制しつつ、問いかける。
多少怯えはあるも、こくりとうなづけるので逃げる意思はあるようだ。
ならばこの場で戦わず、まず逃げる事を選ぶ。
「合図したらまずは目と耳をふさいでね」
「う、うん」
モモちゃんを左手で脇に抱え込むようにしながら、試験管の封についた紐を口で加えて思いっきり引きぬく。
こっちは浪漫でもなく別に手で引き抜いてもいい代物なのだが、両手ふさがってるので口でやるしかない。
「ふさいで!!」
抜けたのを確認したら即座に試験管をゴブリン目掛けてに投げつけ、ゴブリンへ背を向けるかのようにしてモモちゃんに覆いかぶさる。
激しい閃光からの轟音。
腹の底にまで響くような轟音が響いた。
エクレアが投げた試験管の中身は『黒色火薬』。
かつてマイ師匠がバジリスクを追い払うために使用した、異世界転生や転移者が現代知識でもって生み出される定番の兵器『黒色火薬』だ。
転移者でなおかつ周囲に危険が満ち溢れている地に放り込まれたマイ改め『佐藤 舞』は当然のごとく火薬を作っていた。
マイ作は音が派手なだけのコケ脅しだったが、エクレアは錬金術も併用させてさらなる強化改良を行った……結果、
こうかはばつぐんだった。
3匹はふっとんだ。
粉々にふっとんだ。
モザイクかけないといけないぐらい盛大に吹っ飛んだ。
幸い湧き出た煙が煙幕になってるからしばらくはグロいのを見なくても済むも、今はそんなどうでもいい事考える余裕なんてない。
「走るよ!!」
モモちゃんの手を引きながら走る。
エクレアは気付いていた。
最初に姿現した3匹は陽動であり、追い込みの役目だと。
驚いて思わず反対方向に逃げたら半包囲して待機してるゴブリンの中心部に突っ込む羽目になるっと見抜いていた。
だから逃げる先は正面。正面突破!!
予想は当たってたらしく作戦失敗を察したのかゴブリン達はプランBに……たぶん作戦も何もあったもんじゃない総攻撃に入った。
周囲からわらわらと出てくる出てくる。
出てくるだけでなく足止めの遠距離攻撃だと言わんばかりに石を投げつけてくる。
「ゴブリンのくせに投石なんて生意気な~!!」
エクレアは飛んできた石を鉈でさばくも、元々戦闘で糧を得るような戦士ではないのでこういった技術はあまりない。
全部をさばききれずモモちゃん含めていくつか被弾するもモモちゃんは悲鳴をあげない。
歯を食いしばって、痛みをこらえて走ってくれている。
森の入り口……アトリエまで続く道にゴブリンが3匹ほど立ち塞がってたが問題ない。
戦闘要員ではなくもここは修羅の村。戦闘訓練そのものはそこそこ積んでるのでゴブリン3匹程度なら冷静に対処すればもんd……
ずってぇぇぇぇぇぇぇぇん!!!
「ぶべらっ!!?」
ずっこけた。
盛大にずっこけた。
「お、お姉ちゃん!?」
幸いにもモモちゃんは転ばなかったようだが……エクレアは前のめりになってすっころんだのだ。
ここ一番の致命的失敗で予想外なピンチを迎えるのであった……
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