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第2章

12.……遠いよね(side:ローイン)

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「……遠いよね」

 二人を見送ったローインはー人ぼやく。
 それは何に対してなのかはわからない。
 5000万Gという大金を稼ぐ道すじなのか、副ギルド長相当な権力を持つ母からも同じ視線で見る事を許されているその才覚なのか、

 それとも…………

 ローインはエクレアの背中を見送りながら、昔を思い出す……




……………………

 昔はエクレアを母のスージーと仲が良い……喧嘩するほど仲の良いを体現していた……薬師な自称魔女サトーマイの弟子として働く少し影がある、何かに追い詰められてるかのような焦燥感がある女の子だと思っていた。
 実際、焦燥感はあったのだろう。父がおらず母のみの二人暮らし。
 その母、ルリージュは身体が弱いため長時間の労働は難しい。自分が働くしかなかったのだろう。お金を稼ぐしかなかったのだろう。
 そんなエクレアをスージーは元よりローインも気にしていた。

 ただ、ローインから何かアプローチすることはなかった。エクレアも当時はローイン含む同世代の子供と積極的に交流を持とうとはしなかった事もあり、お互い距離を置いていたのだ。

 それでも対話には応じてはくれた。
 事務的な会話は元より、母であるスージーと師匠のサトーマイとの喧嘩を『またやってる』なんて呆れ半分な、他愛のない会話ぐらいは行う程度の仲ではあった。

 友人ともいえない、微妙な距離感ながらも交流はあった。

 そんな日々の中、ある日を境にして交流が途絶えた。

 いや、交流を拒否されたのだ。




 それもそのはず……
 なにせ、ローインは傷つけたのだ。

 エクレアが大事に世話していたサクラの木を……

 エクレアが買い取った村はずれのアトリエの裏庭にあるサクラの木を……

 今は立派な木となったが、当時ではまだ苗木だったサクラの木を傷つけたのだ。


 一応言い訳すると直接傷つけたのはローインではない。ランプだった。
 そのランプも故意ではやってない。最初はランプが面白半分で苗木にちょっかいかけただけであり、同行してたローインやトンビは手を出してない。
 だが、世話をしていたエクレアにとってはそんなことどうでもいいよかったのであろう。



“なにしてるの!!”



 ちょっかいかけてるランプを見つけるや否や、怒り心頭で詰め寄ってきたのだ。

 そこでランプが素直に謝ればよかったのに、逆切れするものだから売り言葉に買い言葉な口喧嘩に発展だ。

 トンビと共にどう対処しようと思って躊躇してたら、埒が明かないっとエクレアがランプを突き飛ばしたのをきっかけに……




“やりやがったな!!”



バキッ!!




 頭に血が上りすぎたランプがエクレアの顔を殴り飛ばしたのだ。
 その拍子でエクレアが苗木を巻き込みながら倒れたから、もう最悪の最悪。
 これはさすがにまずいっと思ってローインは動いた。ランプはトンビに任せて自分はエクレアをっと思い、倒れているエクレアに駆け寄って手を差しだすも……




バシン!!






 彼女は助けを拒否するかのごとく、ローインの差し出された手を払いのけた。
 何も言わず起き上がって、倒れた苗木に応急処置を施す。ローイン含むランプを無視して、黙々と応急処置だ。

 その姿をみたランプも溜飲が下がったのか、エクレアに対して悪態ついて立ち去った。ローインも仕方なくランプの後を追いかけるようにして立ち去るという、後味の悪い結末となったこの一件。

 後ほど、エクレアの師匠であるサトーマイ経由で母スージーに知られて……









ごちん!!×3





 3人の脳天に拳骨が落とされ、そのまま正座による説教3時間コース。
 年下女の子を殴った方もそうだが殴る前に仲裁しなかった方も同罪だっと、とにかく徹底的に怒られた。

 一応エクレアの母であるルリージュやサトーマイの執り成しもあって、エクレアは3人の謝罪を受け入れてもらえた。
 エクレアも以後はあの一件に関して何も言わなかった。まぁローイン含む3人が話しかけようとしても、顔を見るなり睨みつけてどこかへ立ち去られるのだから、何か言うも何もないのだろう。




 完っ全に嫌われたのだ。




 これはまずいと思いつつもきっかけが掴めず、険悪なまま月日が過ぎていったと思いきや……


 そのきっかけは唐突に訪れた。

 ある日を境に……

 エクレアの師匠であるサトーマイの死をきっかけにしてエクレアは敵的に変わったのだ。

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