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第2章

3.これはナニカ変な補正が働いちゃってるのかもしれない

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「とりあえず基本に戻ろうか。まず今までの仕事は継続してチマチマ稼ぐ。その間、平行して新しいレシピや技術を習得してレパートリーを増やす。結局今まで通りの代わり映えない路線かな」

 問題の先延ばしなんだろうけど、立ち止まってるよりかは遥かにマシだ。
 下手な考え休むに似たりだし今は動こう。

 実際、ぶつくさ言いながらも手は止めてない。
 器用にもその手は手際よく栄養豊富な薬草各種をすり潰し、小さな鍋で煮込んで水分が少なくなると大鍋の煮出し汁で補充。

 作っているのは動物の骨ガラで取った出汁をベースに、多数の薬草やキノコを塩で味を整えながら徹底的に煮込んで濃縮したスープ。
 これを乾燥させて粉末にさせたら『スープの元』となる、いわばインスタントスープだ。

 ただの水で混ぜても美味しく飲めるという、野外活動や宿泊の多い冒険者や行商人にとって人気の一品。コップ一杯分で300G。
 材料費引いたら純利益200Gとコストパフォーマンスでいえばかなりいい。ただし、これで5000万G稼ぐには25万食作らないといけない計算だ。人口の絶対数を考えると無理だと言わざるを得ない。

「こういったものも『味噌』とか『醤油』あればもっと美味しくできるんだろうけど、味噌や醤油なんてこの世界にないし…手作りしようにも作り方がよくわからないし」

 前世知識で二つとも大豆を発酵させて作るのはわかってても、発酵のやり方がわからない。
 試しに大豆っぽいものを使って作ってみたら、ただ腐った豆ができただけ。
 発酵が足りないとかじゃなく納豆にすらならない、ただの生ごみだ。

 食べてもただ糞まずいだけだった。
 『毒無効』が働いたからお腹こそ壊さないけど、豚の餌にもならない完全な失敗作。

 っというか『味噌』と『醤油』は日本からの転移者であるマイ師匠も作ろうとして断念したものだ。
 残っていた研究ノート……しっかり日本語で書かれてた……を読み解くと、師匠が5年以上かけてもたどりつかなかった代物。
 相当な試行錯誤が必要になりそうで、もう諦めざるを得ない。

 現実は厳しい。非情なのである。


「ふぅ…これで終了っと」

 作業も一通り終わったので、ふぅっと汗をぬぐう。
 夏場で火を使った調合というか調理してたのだ。
 もう汗だくだ。被っていた師匠の形見となったとんがり帽子で仰ぐも、熱気がこもりすぎて焼け石に水。
 現代日本だとアイス食べたくなるが、こちらだと贅沢品。借金抱えてる身じゃ到底手を出してはいけない部類なので我慢である。

「後はこれを外に出して自然乾燥させてから、改めてすり潰せば完成だけど……ついでだし顔洗ってさっぱりしよっかな」

 一度外に出て外の机に鍋をおいてから、裏庭の井戸のくみ上げポンプから水を汲みあげる。
 桶の水を両手で救い、勢いよく顔にぶつける。

 だいぶ楽になった。
 前には、どうせここには滅多に人が来ないから服も脱いでのすっぱになって水浴びしてた事もあったが、そこへ以前険悪だった少年の一人。ランプがやってきてちょっとした騒ぎがあったのは内緒。


 当時の騒ぎはエクレアもランプも狙ってやったことではない、狙ってやってたらあんな堂々と姿現さない。
 彼は3歳下である7歳の妹がいる身だし、似たような年齢の女の子の裸をみたところで大きな動揺もせず、ただ『服を着ろ!!』の一言で済ませてた。
 そうして服を着たエクレアに対してものすごい言いにくそうに、

「いくらか分けてやるから食べれるキノコを選別してくれ」

っと籠山盛りで渡してきたので

「手当のお礼ってわけね。ありがたくもらっちゃうよ」

っと笑顔で言い切ってやった。

「か、勘違いするんじゃない。俺たちじゃ判別付かないから…頼んでるだけだ!」

「そう、だったら教えてあげよっか?ついでに料理もしたげるよ。野草とキノコ、さらにランプ君たちが獲った兎や魚の肉も入れたスープとか」

「か、考えとく…よ」

「一応言っておくけど2人っきりじゃないよ。いつもつるんでる2人…トンビ君とローイン君。後妹ちゃんも誘っての5人でだからね」

「あ、当たり前だ!皆誘っての5人で行くぞ」

 ちょっと焦った辺り2人っきりと思ったのだろうが、あいにく2人っきりになる気はない。
 個人的にはなってもいいけど一人だけに集中して親密度上げると面倒な事起きそうだから、しっかり二人にも気配りしてまんべんなく……


「って、なんで私恋愛シュミレーションの『お花畑ヒロイン』のような思考してるんだろ」

 3人とは打算ありきといっても、一方的に搾取するような付き合いなんてしない。
 対等な友人として、お互い助け合って協力していくような仲を目指すはずなのに、気を抜くと篭絡…ちょっとはするけど、必要以上の篭絡を仕掛けようとする。

「うん、これはナニカ変な補正が働いちゃってるのかもしれない。
 実は私が貴族の血をひいてて、お母さんが死んだあとは貴族なお父さんが迎えに来て貴族の仲間入り………」


……

…………

………………


「まさか、あの未来視って何事もなければ本当に訪れる未来とか?」

 元々転生という不可思議な現象を経験した身。未来視もないとは言い切れない。
 でも……現実に起きるとしても、学園に通うのは15歳になった時。

 今はXデーとなる13歳の春をどう乗り切るかの方が大事だ。
 なにせその日までに5000万G貯めなければ、エクレアちゃんじゅうごさいの未来は乙女ゲーム編じゃなく調教編になるのだから……



 …………それはそれでみたい人多そうな気はするけど、少なくともそんな話を書く気は(今のところ)ない。

 リクエストされてもお断り(っというフリでもある)

 紡ぎたかったら勝手に脳内で妄想しとけ!!!(許可はいらないから書いてもいいのよ)





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