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プロローグ
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“私はこの世界が乙女ゲームだと気付いてしまった。”
この言葉はストロガノフ王国改めストロガノフ共和国のマドレーヌ大統領が残した日誌の一文である。
彼女の言葉は真実かわからない。
ただ、彼女の生い立ちは見る人がみればまさに乙女ゲームであろう。
彼女はストロガノフ共和国の前身、ストロガノフ王国に所属するスイーツ侯爵家の長女であり、王大子ハッシュの婚約者であった。
何事もなければそのまま王太子と結ばれてやがては王妃となる未来は……
王都に設立された王立学園。
貴族だけでなく平民にも開かれた国内随一の学びの場での入学式の日に起きた出会い……
王太子と一人の令嬢との出会いで崩れ去った。
その令嬢の名前はエクレア・カカレット
カカレット男爵家当主と平民の間に生まれた庶子であるが、14歳の時に男爵家へと引き取られて貴族入りした経緯を持つ彼女。
平民生活が長かったせいか貴族の教育を受けても貴族社会にあまりなじめなかったようで、平民感覚が抜けきれないままその翌年に学園へと入学した彼女。
学園内にて感情豊かに喜怒哀楽を表現し、時には平民らしい夢心地で突拍子のないお花畑思想や行動をとるその姿は貴族としては減点であるも……
王太子をはじめとする国の代表となる令息たちにとってはとても新鮮にみえた。
王太子達はすぐに彼女の虜となり、その有様をマドレーヌが婚約者の立場として忠告するのも無理ない話。
そして、忠告すれば王太子達に泣きつくから決まってマドレーヌが悪者扱いだ。
悪役令嬢なマドレーヌとお花畑ヒロインなエクレアの構図はまさに乙女ゲームあるあるであろう。
物語の結末は乙女ゲームのシナリオに沿うなら断罪劇によって悪役令嬢は退場し、お花畑ヒロインは王太子と共に真実の愛を手する。
これが定石だろうも、現実は違った。
悪役令嬢は自身の断罪劇をはねのけ、逆にお花畑ヒロインを断罪し返した。
お花畑ヒロインについた王太子や令息達、さらに彼らを支援した腐った貴族と共に……
国を見限った悪役令嬢が率いる革命軍によって王国ごと退場させられた。
まさに痛快なざまぁ劇。
乙女ゲームのお花畑ヒロインざまぁ系ともいうべきお約束な物語だ。
こうして愚かなお花畑ヒロインと王太子の一派をざまぁさせての革命に至ったあらましは物語や寸劇として、王国から共和国と変えた国の教訓を兼ねた娯楽として長年親しまれるようになった。
断罪パターンもお花畑ヒロインが本性を丸出しにして悪役令嬢に切りかかる。
禁呪に手を出し、醜い化け物となって自滅される。
悪魔に魂を売り渡して魔王のごとき力を得るも、どこからともなく現れた勇者に倒される。
中には素直に負けを認め、笑いながら自身の首をかっきって退場なんてのもあるが……
結局のところ、お花畑ヒロインは王国を滅ぼそうとした稀代の悪女として扱われる結末に変わりない。
革命から何百年経とうとも、大筋や結末は変わらない。
そんな物語や寸劇は全て悪役令嬢、マドレーヌ・スイーツ視点で語られており……
お花畑ヒロイン、エクレア・カカレットの視点で語られる事はない。
お花畑ヒロインのエクレア・カカレット………
彼女について詳しく語られる事は何故かない。
彼女は男爵家に引き取られる前はどのような生活を送っていたのか…
彼女はなぜ王太子に近づいたのか………
彼女は最終的に何がやりたかったのか……
そして、彼女は本当に稀代の悪女だったのか……
当時の記録はあまり残っておらず、長らく謎のままであった。
唯一の鍵とされているのが、マドレーヌ・ストロガノフ初代大統領が残した日誌。
誰も解読できない、謎の暗号文としか思えない言語で書かれた日誌。
ある共通点を持つ者以外には決して読めないであろう文字を私は解読できた。
この世界に“転生”する前の記憶を持つ私だったが故に解読は容易だったのだ。
私は日誌の原本を集めまわった。
最初こそ好奇心であるも、その好奇心は次第に疑問へと変わる。
日誌の中のお花畑ヒロインは乙女ゲームざまぁの寸劇で語られるものとは全く違っていたからだ。
真実を追い求めた私はある地にたどり着いた。
西の辺境にて人知れず咲き誇る樹齢何百年も経つであろう大木。
前世では見慣れた桜の木。
とても巨大で神秘的で魅了されるような……
遠い異世界へといざなうかのように舞い散る桜吹雪の中……
私はそれをみつけた。
古ぼけた一冊の本をみつけた。
誰が書いたのか、いつ書かれたのかもわからない……一つの物語
狂気の沙汰、支離滅裂、奇想天外、荒唐無稽、胡蝶の夢、SAN値直葬
どの言葉が適切かわからないほどの無茶苦茶な物語。
常人なら狂人の創作としか思えないような夢現の物語。
“深淵”の中に潜む“混沌”の物語。
これを公表するには勇気がいる。
下手すれば頭が逝かれた狂人にされるだろう……
だが私は公表しようと思う。
お花畑ヒロインと呼ばれたエクレアの視点で描かれた物語を……
お花畑ヒロインの数奇な運命をたどった生涯を綴った物語を……
お花畑ヒロインざまぁな寸劇の裏側の物語を……
悪役令嬢を、人々を…世界を人知れず救った英雄の物語を……
新しく生まれ変わる国にいらぬ混乱を起こさぬよう、秘匿された物語を……
そして……
お花畑ヒロインの実ることはなかった、真実の愛の物語を……
乙女ゲームお花畑ヒロインざまぁ劇の裏側、ハッピーエンドに隠されたバッドエンドの物語を………
その物語のタイトルは……
“いつかサクラの木の下で……”
この言葉はストロガノフ王国改めストロガノフ共和国のマドレーヌ大統領が残した日誌の一文である。
彼女の言葉は真実かわからない。
ただ、彼女の生い立ちは見る人がみればまさに乙女ゲームであろう。
彼女はストロガノフ共和国の前身、ストロガノフ王国に所属するスイーツ侯爵家の長女であり、王大子ハッシュの婚約者であった。
何事もなければそのまま王太子と結ばれてやがては王妃となる未来は……
王都に設立された王立学園。
貴族だけでなく平民にも開かれた国内随一の学びの場での入学式の日に起きた出会い……
王太子と一人の令嬢との出会いで崩れ去った。
その令嬢の名前はエクレア・カカレット
カカレット男爵家当主と平民の間に生まれた庶子であるが、14歳の時に男爵家へと引き取られて貴族入りした経緯を持つ彼女。
平民生活が長かったせいか貴族の教育を受けても貴族社会にあまりなじめなかったようで、平民感覚が抜けきれないままその翌年に学園へと入学した彼女。
学園内にて感情豊かに喜怒哀楽を表現し、時には平民らしい夢心地で突拍子のないお花畑思想や行動をとるその姿は貴族としては減点であるも……
王太子をはじめとする国の代表となる令息たちにとってはとても新鮮にみえた。
王太子達はすぐに彼女の虜となり、その有様をマドレーヌが婚約者の立場として忠告するのも無理ない話。
そして、忠告すれば王太子達に泣きつくから決まってマドレーヌが悪者扱いだ。
悪役令嬢なマドレーヌとお花畑ヒロインなエクレアの構図はまさに乙女ゲームあるあるであろう。
物語の結末は乙女ゲームのシナリオに沿うなら断罪劇によって悪役令嬢は退場し、お花畑ヒロインは王太子と共に真実の愛を手する。
これが定石だろうも、現実は違った。
悪役令嬢は自身の断罪劇をはねのけ、逆にお花畑ヒロインを断罪し返した。
お花畑ヒロインについた王太子や令息達、さらに彼らを支援した腐った貴族と共に……
国を見限った悪役令嬢が率いる革命軍によって王国ごと退場させられた。
まさに痛快なざまぁ劇。
乙女ゲームのお花畑ヒロインざまぁ系ともいうべきお約束な物語だ。
こうして愚かなお花畑ヒロインと王太子の一派をざまぁさせての革命に至ったあらましは物語や寸劇として、王国から共和国と変えた国の教訓を兼ねた娯楽として長年親しまれるようになった。
断罪パターンもお花畑ヒロインが本性を丸出しにして悪役令嬢に切りかかる。
禁呪に手を出し、醜い化け物となって自滅される。
悪魔に魂を売り渡して魔王のごとき力を得るも、どこからともなく現れた勇者に倒される。
中には素直に負けを認め、笑いながら自身の首をかっきって退場なんてのもあるが……
結局のところ、お花畑ヒロインは王国を滅ぼそうとした稀代の悪女として扱われる結末に変わりない。
革命から何百年経とうとも、大筋や結末は変わらない。
そんな物語や寸劇は全て悪役令嬢、マドレーヌ・スイーツ視点で語られており……
お花畑ヒロイン、エクレア・カカレットの視点で語られる事はない。
お花畑ヒロインのエクレア・カカレット………
彼女について詳しく語られる事は何故かない。
彼女は男爵家に引き取られる前はどのような生活を送っていたのか…
彼女はなぜ王太子に近づいたのか………
彼女は最終的に何がやりたかったのか……
そして、彼女は本当に稀代の悪女だったのか……
当時の記録はあまり残っておらず、長らく謎のままであった。
唯一の鍵とされているのが、マドレーヌ・ストロガノフ初代大統領が残した日誌。
誰も解読できない、謎の暗号文としか思えない言語で書かれた日誌。
ある共通点を持つ者以外には決して読めないであろう文字を私は解読できた。
この世界に“転生”する前の記憶を持つ私だったが故に解読は容易だったのだ。
私は日誌の原本を集めまわった。
最初こそ好奇心であるも、その好奇心は次第に疑問へと変わる。
日誌の中のお花畑ヒロインは乙女ゲームざまぁの寸劇で語られるものとは全く違っていたからだ。
真実を追い求めた私はある地にたどり着いた。
西の辺境にて人知れず咲き誇る樹齢何百年も経つであろう大木。
前世では見慣れた桜の木。
とても巨大で神秘的で魅了されるような……
遠い異世界へといざなうかのように舞い散る桜吹雪の中……
私はそれをみつけた。
古ぼけた一冊の本をみつけた。
誰が書いたのか、いつ書かれたのかもわからない……一つの物語
狂気の沙汰、支離滅裂、奇想天外、荒唐無稽、胡蝶の夢、SAN値直葬
どの言葉が適切かわからないほどの無茶苦茶な物語。
常人なら狂人の創作としか思えないような夢現の物語。
“深淵”の中に潜む“混沌”の物語。
これを公表するには勇気がいる。
下手すれば頭が逝かれた狂人にされるだろう……
だが私は公表しようと思う。
お花畑ヒロインと呼ばれたエクレアの視点で描かれた物語を……
お花畑ヒロインの数奇な運命をたどった生涯を綴った物語を……
お花畑ヒロインざまぁな寸劇の裏側の物語を……
悪役令嬢を、人々を…世界を人知れず救った英雄の物語を……
新しく生まれ変わる国にいらぬ混乱を起こさぬよう、秘匿された物語を……
そして……
お花畑ヒロインの実ることはなかった、真実の愛の物語を……
乙女ゲームお花畑ヒロインざまぁ劇の裏側、ハッピーエンドに隠されたバッドエンドの物語を………
その物語のタイトルは……
“いつかサクラの木の下で……”
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