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塾バイト(高1集団塾)_2

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「私、兄と同じ大学に行きたいんですー!」
 そう言って志望校を教えてくれた。

 俺の在籍している大学じゃあないか。
 まあ、定員もそこそこ多いし、なにより地元だしな。
 俺のクラスに以前から在籍している他の生徒の中にも、俺と同じ大学を志望する生徒は多い。

 そう思っていると彼女は、
に、楽な講義がどれかとか過去の問題とか教えてもらえるし」
 と続けた。

 ……確かに同じ名字だな、とは思ったが、まさか。
「もしかして、その人の名前の漢字って『優しい』の字?」
「え、はい。兄と知り合いですか?」
「幼馴染で……」

 優とは小さい頃から仲良しだった。
 小学校、中学校、高校とずっと同じ学校で、大学生になった今も同じ学部に通っている。
 しかし、優の家で遊ぶ事がなかったのもあって、妹が居ること自体知らなかった。
 というか、彼女じゃなかったのか。

 なんだ。そうか。
 少しを覚えた。

 ……安堵?

「あ! もしかして、先生のお名前って『こうき』ですか?」
 彼女が首を傾げて聞いてくる。
「あ、うん。そうそう」

 優、妹に俺の話をしてたんだな。
 あれだけ仲が良ければ、学校の友達の話もするよな。

「そうなんですね!」
 ニヤリとした、ような気がする。
「これからも、ぜひうちの兄をよろしくお願いしますね!」

「ああ、うん……」

 先ほど感じた安堵が、何から来る物なのか。
 ある人ゆうに恋人がいなくて安心するなんて、まるで、その人ゆうに対する恋煩いのようではないか。

 俺は自分の気持ちに気づいた。
 優に対して何か特別な感情を抱いているということに。
 それはきっと、友情の域でもないのだ。

 でも、それを告白する勇気はなかった。
 優は俺をただの友達としか見ていないだろうし、同性だ。
 それに、女装がきっかけで恋心を抱くなんて、心象が最悪だろう。

 だから、俺は黙って、平常心を装うよそおうことにした。
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