【完結】可愛い女の子に初ナンパしたつもりが知り合い♂だった……

えんとっぷ

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冷静になる

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 授業後、優と目が合い、話しかけようと口を開いた時、
「ゆーう!」
 優よりも背の低い女の子が優に後ろから抱きついた。
 優と同じ黒髪で、女装時の優より長い、ロングヘアだった。

「一緒にかーえろ!」
 彼女が元気に優を誘う。
 優の体で顔は見えなかったが、長く綺麗な髪が揺れている。

「えぇ、家から出てきたの? 危ないよ……講義終わったし、一緒に家帰ろっか」
 優がやけに過保護で、可愛がっている様子が伝わってくる。
 手慣れた様子で優は帰路へ足を向け、彼女も抱きつくのをやめて手を繋いでいた。

 きっと、あの子が「みき」なんだろう。
 後ろ姿ぐらいしか見ていないが、女装姿の優みたいなパーカーを着ていた。

 お似合い、なんだな。
 きっと趣味女装も受け入れてくれる良い彼女なんだろうな。

 その日はバイトも何もなかったのもあって、帰ってからもそのことばかり考えていた。



 翌日、大学で会うと、普段とさほど変わらない様子の優がいた。
「光貴、昨日はごめん。話しかけようとしてたよね?」
「いや別にいいよ、雑談だし。とりあえず、昨日いた子は誰なんだ?」

「あ、あの子がみき。昨日は高校が休みで、家にいたんだけど……暇だからか来ちゃったみたい」
 高校生と付き合っているのか、母校の後輩だったりするんだろうか。
 俺はあまり後輩の名前を覚えていないから、みきという名前に心当たりはない。

「その子は、お前の女装のことって知ってんの?」
「知ってるよ。お互いのコスメを試せるーとかなんとか言って、上機嫌だった」

 ……昨日の、あのモヤモヤとした気持ちはきっと、気づけなかった事に対するものだ。
 長年の友人である優が、俺に交際したと言ってくれなかったこと。
 そして、交際も女装もついさっき知ったという事。

 そう気づくと、少し気持ちが落ち着いたような気がする。


 講義の前、そしてバイトの前に優に対するモヤモヤがある程度払拭されてよかった、と思う。
 今日は塾のバイト、それも新しい生徒が入ってくる日だ。
 俺のバイト先の高1クラスは、高校受験時に塾に入り、そのまま居る生徒が多いので、珍しい話だ。

 最初にする雑談は何にしようかな、今日の講義の面白かった話かな、と考えていると講義が始まった。


 一般教養科目の英語、数学、生物を終え、塾のバイトへと向かった。

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