【完結】可愛い女の子に初ナンパしたつもりが知り合い♂だった……

えんとっぷ

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初めてナンパされた(※優視点)

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 僕には幼馴染がいる。
 僕より背が高くて、格好良いと思うのに、少し気が弱い人。

 高校の文化祭で女装を押し付けられていた時も、僕が代わってあげた。
 それがきっかけで女装が趣味になったんだけど、嫌そうな顔の光貴を見る他人に女装趣味を笑われる方が良い。

 なにより、光貴が頼ってくれるのは……何よりも嬉しい。

 もし異性なら付き合えたのかな。
 そもそも友達にさえなれなかったのかも、なら今で十分だ。

 そんな事を毎日のように考えている。



 今日は講義のない空き時間が多いので、さっと化粧し骨格の出にくいパーカーに着替え、街に出た。
 新しいコスメや服を探しに、だ。

 うろうろと街中を歩き、良さげな店を探していると、視線を感じた。
 __いや、「女装している」から気になるだけだ。きっと自意識過剰なだけだろう__


「君かわいいね、道に迷ってるの? 教えてあげようか?」

 初めてナンパを受けたな。
 もっとふわふわした人、言葉を選ばなければ地に足ついていない人が狙われると思っていたが。
 迷っていないから大丈夫だ、と答えようと相手の顔に目をやると、光貴だった。

 まさか知り合いだなんて。
 いや、それよりも。
『君かわいいね』
 ナンパの常套句を頭の中で反芻する。
 光貴のナンパ相手に選ばれたのか、と。


 しかし、気になる事が1つある。

「……光貴。お前、ナンパしてんの……?」

 悲しいな、もっと誠実というか純朴な人だと思っていた。
 付き合っていない、それどころか対象外であろう僕が責められる事ではないが。

 ああ。たまたま動画でも撮っていたらよかったのに。
 もう二度と、光貴に「君かわいいね」なんて言われる事もないだろう。

 そんな事を思っていると、彼は「優だとわかって揶揄ったんだ」などと言いだした。
 あまりの焦り様から嘘だなと分かっていたが突いても仕方がない。
 可愛い、という言葉が本心であっただろう事に気持ちが高揚する。

 それから、彼が一人で来たのかとか聞いてきたので、ミキは家にいるとか色々喋った。

 きっと女装した僕を僕だと気付かずナンパした事が恥ずかしかったのだろう。
 急ぎ足で光貴は大学の講義があるから、と帰って行った。

 ……僕と同じ学部学科だから講義が一緒なのに、急ぐ必要あるわけないだろ。この後2時間くらい空きだろ。

 そう思いつつ、彼を見送る。
 光貴の「かわいいね」という言葉を何度も思い返しながら、良さそうなコスメを数個買い、一度家に帰った。


 大学に戻ると、少し気まずそうな光貴が前の方にいて、可愛いなと思いながら隣の席で授業を受けた。
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