ゲーム世界のモブ悪役に転生したのでラスボスを目指してみた 〜なぜか歴代最高の名君と崇められているんですが、誰か理由を教えてください!〜

八又ナガト

文字の大きさ
上 下
19 / 58
第一章 モブ悪役転生編

第19話 ビッグチャンスをゲットした!

しおりを挟む
 サーディスから王都へやってくるように通達された後。
 俺、オリヴァー、マリーの3人は執務室で会議を行っていた。


「まさかクラウス様が陛下直々に呼び出され、褒賞を頂く日がやってこようとは……このオリヴァー、感動のあまり言葉もありません!」


 するとオリヴァーがさっそく、感極まった表情でそんなことを言ってくる。
 この国に暮らす貴族にとって、国王から褒賞を与えられるのはそれだけ名誉なことなのだろう。

 正直、俺としてはこのまま全力で無視してやりたいところなんだが……

 そう考えていると、続けてマリーが小首を傾げながら口を開く。


「そういえば、サーディス様が仰っていたとは何のことだったのでしょう?」

「ああ、確かにそんなことも言ってたな」


 あまりの情報量の多さのせいで忘れていたが、確かにの報告に来たとサーディスは言っていた。
 そしてその命令を出したのは国王ともう一人、ウィンダム侯爵だという。

 ウィンダム侯爵か。
 ゲームでは登場したキャラクターだけど、それ以外にもどこかで関わりがあったような気が……

「っ! そうだ、思い出したぞ!」

 一か月も前のことなのですっかり記憶から抜け落ちていたが、なんとか思い出せた。
 俺はウィンダム侯爵から送られてきたパーティーの招待状に対し、紅茶を染み込ませたうえでそのまま送り返したのだ。
 おおかた、それに対する罰でも与えに来たというところだろう。

 だが、実際に来てみたら何故か魔王軍幹部が捕らえられているという謎の状況に出くわしてしまった。
 そこで俺に対する罰はいったん保留となり、幹部捕獲に対する褒賞を優先したと考えるのが最も自然だ。

 しかしそれは逆に考えれば、ウィンダム侯爵から俺への怒りは今も残っているということであり――


「これはチャンスかもしれないな」

「クラウス様?」「ご主人様?」


 国王に呼び出されただけなら、行く必要はないかと思っていたが考えを改める。
 ここに来て初めて現れた、俺を悪だと認識している存在――ウィンダム侯爵。
 彼と出会うことが、これからラスボスを目指す上で何か大きな意味を生み出すはずだ。

 俺はバッと立ち上がると、二人に指示を出す。


「さっそく明日、俺は王都に出立する。不在の期間はオリヴァー、貴様を領主代理に任命する」

「はっ! このオリヴァー、必ずやその命を遂行いたします。クラウス様が褒賞を受ける場に居合わせられないのは、少々残念ですが……」

「そしてマリー、お前には専属の従者としてついてきてもらう」

「は、はい! かしこまり、ました……」


 頷くマリーだが、どこか元気がないことに気付く。


「どうかしたのか?」

「いえ、その……本当に私でよろしいのでしょうか? 黒髪の私が王都へ行ってしまうと、ご主人様まで偏見の目で見られる恐れがあります」

「……ふむ」


 そう言われ、改めて『アルテナ・ファンタジア』の世界観を思い出す。

 王都での黒髪持ちに対する認識は二極化が進んでいた。
 王家に味方する貴族は差別をなくそうとし、逆に敵対する貴族の多くは偏見を強めている。
 そんな中、マリーを連れていくのは確かにリスクでしかないだろう。

 ――もっとも、それはマリーが一般的なメイドであればの話だが。


「安心しろ、マリー。お前はこの一か月でそこらの騎士よりよっぽど強くなった。変な輩が絡んできたら魔術で蹴散らしてしまえ」

「へ? い、いえ、私が気がかりなのはそこではなく、黒髪を従者にしていることでご主人様の悪評が広がらないかが不安で……」

「ッ!?」


 ――マリーを連れていくだけで悪評が広がるビッグチャンスだと!?


 その発想はこれまでなかった。
 まさかの気付きを与えてくれたマリーには盛大に褒美を与えたいくらいだ。

 俺は内心でそんな風に大喜びしながらも、冷静に言葉を返す。

「ふっ、それこそ問題ない。むしろ俺としては望むところだ」

「ご、ご主人様……!」

 キラキラとした目で見つめてくるマリー。
 何か変な勘違いをされている気がするが、特に気にすることではないだろう。


 いずれにせよこのビッグチャンスを逃すわけにはいかないと決意しながら、俺は明日の朝に向けて眠りにつくのだった――



 ◇◆◇


 棺を模した封印用魔道具の中。
 暗く狭い景色の中で、彼――フレクトはニヤリと笑みを深めた。

「フフフ……まさか私が敗北するとは思っていませんでしたが、生け捕りとは詰めが甘かったですね。この調子なら、明朝には全ての力を取り戻せるでしょう」

 本来であれば、この魔道具に封印された者は魔力を扱えなくなる。
 しかしフレクトはその卓越した技術で、魔力操作を可能としていた。

 それどころか――

「同時に固有魔術の改善も並行させていますが、こちらも上手くいきそうです。クク、もう同じ轍《てつ》は踏みませんよ」

 復讐の機会に備え、圧倒的速度で成長する始末。
 その学習能力の高さと諦めの悪さこそ、彼を魔王軍幹部にまで至らせた所以ゆえん

 フレクトは棺の中で誓う。


「私の復讐対象はたった一人です。私の狙いを看破し、騎士たちに完璧な作戦を与えたと言われていた領主クラウス・レンフォード。覚えておきなさい、明日の朝が貴方の命尽きる瞬間。この怒り全てをぶつけさせてもらいましょう!」

しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

処理中です...