ゲーム世界のモブ悪役に転生したのでラスボスを目指してみた 〜なぜか歴代最高の名君と崇められているんですが、誰か理由を教えてください!〜

八又ナガト

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第一章 モブ悪役転生編

第17話 色々な人を困らせよう!

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 それから一か月、俺とマリーは魔物を討伐し続けた。

 そんな中、様々な出来事に遭遇することとなり――


 ◇◇◇


 ある日のこと。
 森で霜降り肉が絶品とされるメルティング・ポークを討伐した後、休暇中の騎士団員に遭遇した。

(おっ、そうだ!)

 いいことを思いついた俺は、彼らを呼び止める。


「貴様ら、この魔物を町まで運べ」

「は、はあ、かしこまりました。しかしその後はどうすれば……?」

「せっかくの機会だ、騎士団の者たちで分けて食すがいい。複数体倒したから、全員がたらふく食えるだけはあるはずだ」

「っ! はっ、承知しました!」


 騎士団員たちが喜んでメルティング・ポークを持って帰るのを見て、俺はほくそ笑む。
 奴らはいま戦闘と訓練を行っていない。そんな中、あれだけ高カロリーなものを食せば体はぷくぷくと膨れ上がり、戦闘力が落ちることだろう。
 一か月後、無理難題な作戦を命じる際の布石となるはずだ。

 俺はその完璧な計画に、我ながら恐怖するのだった。


 ◇◇◇


 別の日。
 街道に姿を見せた巨大なクマの魔物を倒すと、奥から商人の乗った馬車が現れた。
 どうやら偶然にも、魔物に襲われている最中の商人を助けてしまったらしい。

「おお、どなたかと思えば領主様ではございませんか! 助けていただき誠にありがとうございます!」

 さらになんということか、商人にお礼を言われてしまう始末。
 このまま善人扱いされることを恐れた俺は、対価を要求することにした。
 商人が最も大切にしているものといえば、やはり金だろう。


「何を言っている、礼はちゃんと貰うぞ」

「え、ええ、それはもちろん! 貴方は命の恩人ですから!」

「通常、護衛を付ける時はどれくらい払うんだ?」

「それは、だいたいこの程度ですが……」

「では、その10倍を頂こう」

「なっ!」


 商人は悔しそうな表情を浮かべるも、俺には逆らえないことを悟り、歯をギリギリと噛み締めながら金銭を差し出してくる。
 俺はそれを受け取り、満足気に頷いた。


「よし、礼はこの程度でいいだろう。ああ、それからこの魔物についてもお前が処理しておけ(俺がするのは面倒だし)」

「っ!? 魔物とは、このシルキー・ベアのことですか!?」

「? ああ(そんな名前だったのか)」

「か、かしこまりました! それが領主様のご意思なら、ぜひ!」


 商人はなぜか悔しそうな表情から一転、何かに驚いたような反応を見せた後、魔物を馬車に載せその場を去っていく。
 俺は善人ポイントを回避しつつ臨時収入を得たことに満足しながら、笑みを深めるのだった。


 ◇◇◇


 そしてまた別の日。
 俺たちは趣向を変え、領都から少し離れたところにある湖にやってきていた。
 湖に全力の雷魔術でも放てば、まとめて経験値が稼げるのではないかと思ったからだ。

「ん? なんだ?」

 しかし、そう考える俺の視界に意外な光景が飛び込んでくる。

 近くの村に住む村民か何かだろうか、湖の前には30人近くが集まっていた。
 彼らは両膝を地面につけながら、何かを祈るように両手を組んでいる。
 その前には金属でできた何かが幾つか置かれていた。

 まるで何かしらの儀式を行ってるようだ。
 もしかしたら彼らにとって、この湖は神聖なものなのかもしれない。

 ――もっとも、その程度で遠慮する俺ではないが。


「【地を割るエクスプロード・落雷サンダー!】」


 俺がそう唱えると同時に空から巨大な雷が落ち、湖全体を電撃で満たした。
 直後、湖の中にいた魔物たちがぷかぷかと水面に浮かび上がってくる。
 うんうん、いい感じに経験値が稼げたぞ。


「何が起きた!?」

「いきなり空から雷が!」

「まさかヌシが怒りでもしたのか!? どうか、お許しあれ……」


 突然の出来事に混乱する人々。
 するとその中の数人が、俺の存在に気付く。


「おい、あそこに人がいるぞ……って、もしかして領主様!?」

「それより湖面を見ろ! 浮かび上がってきたあの巨大な姿は、まさかヌシの死体……」

「ヌシが死んだのか!? ま、待ってください! どうかせめてお礼――」


 どうやら何か文句を言おうとしているみたいだが、残念ながらこれ以上この場にいるメリットはない。
 経験値を得て満足した俺は、そのまま領都に戻るのだった。



 帰路につく途中、俺は隣にいるマリーを見る。
 実はこれらの悪事を行っている時にも、マリーは常にそばにいた。
 しかし意外なことに、俺のやることに対して何かを言ってきたりはしなかった。

 そのことに疑問を抱いた俺は、改めてマリーに尋ねてみる。


「マリー、お前は俺が何をしているのか訊きたくなったりはしないのか?」

「気にならないと言えば嘘になりますが……私はご主人様のすることには全て意味があると理解しております。ですので、わざわざお尋ねする必要はございません」

「そ、そうか」


 何やら不思議なオーラを纏うマリーの発言に圧倒されかけたが、文句を言ってこないのはこちらとしても楽なため気にしないことにしておく。

 何はともあれ、こういった出来事を繰り返しているうちに、早くも一か月が経過するのだった。


 ◇◇◇


 レンフォード騎士団に『一か月間の強制休暇、および一切の訓練・戦闘禁止』を命じてから一か月後。
 用事があって町の外に出ていた俺は、意気揚々と領都に帰っていた。


「ようやく今日で騎士団に出した命令期間も終わる。これから奴らに無茶な作戦を命じて失敗させることにより、俺の悪名を轟かせられるんだ! こんなもの、興奮せずにいられるか! あーはっはっは!」


 そんな風に高笑いしながら領都に戻ってきた俺だったが、町の中心からかなりの喧騒が聞こえてくることに気付く。
 どうやら普段とは比べ物にならないほど賑わっているみたいだ。

 どこか嫌な予感がしながらも、俺は町の中に入る。
 その瞬間、なぜか総出で集まっていた騎士団が一斉に俺を見て歓声を上げた。



「「「うおぉおおお! 領主様が帰ってきたぞぉおおお!」」」


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