14 / 58
第一章 モブ悪役転生編
第14話 騎士団を弱らせよう!
しおりを挟む
領民から不幸にも感謝されてから数日後。
俺は執務室で頭を抱えていた。
「くそっ! どうして俺が動くと、常に結果がいいように受け止められるんだ!」
まるで俺をラスボスにはしないよう、謎の力が働いているとしか思えない。
どんなに手を尽くして周囲に被害を及ぼそうとしてもうまくいかない現状に、俺の心は追い詰められていた。
しかしここで、俺は発想の転換を行う。
「いや、待てよ……それならいっそのこと、俺が表舞台に出ない手段を選べばいいんじゃないか?」
シェフを牢獄に入れた際も、泥棒の少年を捕らえた際も、魔物を町に解き放そうとした際も。
俺が中心になって動いたからこそ、あんな結果になったと考えられる。
しかし、マリーの手によって汚れた招待状をウィンダム侯爵に送り返したことがあったが、それによって俺の評価が上がったという噂は聞こえてこない。
となると、途中に俺以外の別の存在を挟むことによって、運命の強制力を回避できる可能性が高い。
「そうと決まれば、次は具体的な方法だな」
俺は計画に巻き込む共犯者を誰にするか考え始める。
この計画が成功すれば、俺だけでなく共犯者の評判も地に落ちることだろう。
となると、俺が憎しみを抱いている相手を巻き込むことができれば、同時に復讐もこなせるということ。
まさに一石二鳥だ。
「ん? これは……」
ふと机の上を見ると、騎士団からの報告書が目に入った。
先日のキングホーン・ボア捕獲に関する事後報告が書かれているようだった。
そうだ、思い返してみればあの日俺が領民から感謝される羽目になったのも、そもそも騎士団の報告書を見たことがきっかけ。
すなわち、全部騎士団のせいと言えるだろう。
ちなみに騎士団の正式名称はレンフォード騎士団といい、俺が直轄する組織だ。
騎士団の中には貴族も数多く存在し、その辺りはほとんどが平民の警備兵とは少し違っている。
いずれにせよ領主直属の配下にもかかわらず俺に迷惑をかけるとは、許しがたい奴らだ。
「よし、決まりだな。共犯者は騎士団にしよう」
共犯者選びが終わったところで、最後に具体的な作戦を考える。
騎士団に復讐すると同時に、俺の評判を下げる革命的方法は何かないだろうか。
騎士団の者たちが誇りとし、さらに民から信頼を向けられる理由はその強さにある。
ということは、その強さという牙城を崩すことが今回の計画成功に繋がるはずだ。
作戦内容をより詳細にいうと、何らかの手段で騎士団の戦力を削いだうえで、重大な作戦に向かわせる。
するとどうなるか? 当然作戦は失敗する。
騎士団への信頼がなくなると共に、それを命じた俺の評判は今度こそ地に落ちることだろう。
「ふはははは! いいぞ、考えれば考えるほど素晴らしい作戦だ!」
俺はひとしきり高笑いしたのち、騎士団の駐屯地に向かうのだった。
◇◇◇
レンフォード騎士団の団長を務めるローラ・エンブレスは、もともと領地すら持たない弱小貴族の娘だった。
しかしながら武術の才には恵まれ、20代前半という若さにして団長の座についた。
剣を振るい、民を守ること。
それだけを目標に日々修練を重ねることで、他の中小領地に比べて非常に高い戦力を維持してきた。
そのことがローラにとって何よりの誇りでもあった。
だからこそ、領主のクラウスから『一か月間の強制休暇を与えると共に、その期間は一切の訓練・戦闘禁止』が命じられた時は驚きに目を見開いた。
「なぜだ!? 私たちの戦力が維持されているのは、練度の高い日々の訓練があってこそ! それを禁ずるなど、領主様はいったい何を考えているんだ!?」
憤慨するローラだったが、そんな彼女に賛同してくれる声はごく少数だった。
多くの者が突然与えられた長期休暇に喜び、だらしない日々を送り始める始末。
さらには、
「まあまあ、領主様の命令なんだし、何か意味があるんでしょうよ」
「そうですよ。先日のイージス・バードだって、領主様の機転がなければ町が崩壊していたかもしれないんですから」
「団長もこれを機に、少しは休むことを覚えましょうよ」
他の団員たちは盲目的にクラウスのことを信じきっていた。
確かにクラウスはここ最近、数々の素晴らしい手腕によって領民のためになることを行ってきた。
しかし、だからといってこの命令に何かの意味があるなど、ローラにはとても信じることができなかった。
「私たちがくつろいでいる間に、敵が攻めてきたらどうするんだ? 警備兵だけで町を守るのは不可能だろう!」
そう考え、ローラはたびたび一人でに剣を握り、極秘で特訓を行おうとした。
しかしその度にタイミング悪くクラウスが現れるせいで、それすらも叶わなかった。
周囲は領主を素晴らしいお方だというが、ローラだけはクラウスが悪意を持って自分たちに接しているとしか思えなかった。
「いったい、この領地はどうなってしまうんだ……」
空を見上げ、絶望の言葉を零すローラ。
しかし、それから一か月後。
クラウスの命令の裏にあった真の狙いを理解し、ローラは思い知ることになる。
クラウスが偉大なる領主であると同時に、稀代の策略家であったということを!
俺は執務室で頭を抱えていた。
「くそっ! どうして俺が動くと、常に結果がいいように受け止められるんだ!」
まるで俺をラスボスにはしないよう、謎の力が働いているとしか思えない。
どんなに手を尽くして周囲に被害を及ぼそうとしてもうまくいかない現状に、俺の心は追い詰められていた。
しかしここで、俺は発想の転換を行う。
「いや、待てよ……それならいっそのこと、俺が表舞台に出ない手段を選べばいいんじゃないか?」
シェフを牢獄に入れた際も、泥棒の少年を捕らえた際も、魔物を町に解き放そうとした際も。
俺が中心になって動いたからこそ、あんな結果になったと考えられる。
しかし、マリーの手によって汚れた招待状をウィンダム侯爵に送り返したことがあったが、それによって俺の評価が上がったという噂は聞こえてこない。
となると、途中に俺以外の別の存在を挟むことによって、運命の強制力を回避できる可能性が高い。
「そうと決まれば、次は具体的な方法だな」
俺は計画に巻き込む共犯者を誰にするか考え始める。
この計画が成功すれば、俺だけでなく共犯者の評判も地に落ちることだろう。
となると、俺が憎しみを抱いている相手を巻き込むことができれば、同時に復讐もこなせるということ。
まさに一石二鳥だ。
「ん? これは……」
ふと机の上を見ると、騎士団からの報告書が目に入った。
先日のキングホーン・ボア捕獲に関する事後報告が書かれているようだった。
そうだ、思い返してみればあの日俺が領民から感謝される羽目になったのも、そもそも騎士団の報告書を見たことがきっかけ。
すなわち、全部騎士団のせいと言えるだろう。
ちなみに騎士団の正式名称はレンフォード騎士団といい、俺が直轄する組織だ。
騎士団の中には貴族も数多く存在し、その辺りはほとんどが平民の警備兵とは少し違っている。
いずれにせよ領主直属の配下にもかかわらず俺に迷惑をかけるとは、許しがたい奴らだ。
「よし、決まりだな。共犯者は騎士団にしよう」
共犯者選びが終わったところで、最後に具体的な作戦を考える。
騎士団に復讐すると同時に、俺の評判を下げる革命的方法は何かないだろうか。
騎士団の者たちが誇りとし、さらに民から信頼を向けられる理由はその強さにある。
ということは、その強さという牙城を崩すことが今回の計画成功に繋がるはずだ。
作戦内容をより詳細にいうと、何らかの手段で騎士団の戦力を削いだうえで、重大な作戦に向かわせる。
するとどうなるか? 当然作戦は失敗する。
騎士団への信頼がなくなると共に、それを命じた俺の評判は今度こそ地に落ちることだろう。
「ふはははは! いいぞ、考えれば考えるほど素晴らしい作戦だ!」
俺はひとしきり高笑いしたのち、騎士団の駐屯地に向かうのだった。
◇◇◇
レンフォード騎士団の団長を務めるローラ・エンブレスは、もともと領地すら持たない弱小貴族の娘だった。
しかしながら武術の才には恵まれ、20代前半という若さにして団長の座についた。
剣を振るい、民を守ること。
それだけを目標に日々修練を重ねることで、他の中小領地に比べて非常に高い戦力を維持してきた。
そのことがローラにとって何よりの誇りでもあった。
だからこそ、領主のクラウスから『一か月間の強制休暇を与えると共に、その期間は一切の訓練・戦闘禁止』が命じられた時は驚きに目を見開いた。
「なぜだ!? 私たちの戦力が維持されているのは、練度の高い日々の訓練があってこそ! それを禁ずるなど、領主様はいったい何を考えているんだ!?」
憤慨するローラだったが、そんな彼女に賛同してくれる声はごく少数だった。
多くの者が突然与えられた長期休暇に喜び、だらしない日々を送り始める始末。
さらには、
「まあまあ、領主様の命令なんだし、何か意味があるんでしょうよ」
「そうですよ。先日のイージス・バードだって、領主様の機転がなければ町が崩壊していたかもしれないんですから」
「団長もこれを機に、少しは休むことを覚えましょうよ」
他の団員たちは盲目的にクラウスのことを信じきっていた。
確かにクラウスはここ最近、数々の素晴らしい手腕によって領民のためになることを行ってきた。
しかし、だからといってこの命令に何かの意味があるなど、ローラにはとても信じることができなかった。
「私たちがくつろいでいる間に、敵が攻めてきたらどうするんだ? 警備兵だけで町を守るのは不可能だろう!」
そう考え、ローラはたびたび一人でに剣を握り、極秘で特訓を行おうとした。
しかしその度にタイミング悪くクラウスが現れるせいで、それすらも叶わなかった。
周囲は領主を素晴らしいお方だというが、ローラだけはクラウスが悪意を持って自分たちに接しているとしか思えなかった。
「いったい、この領地はどうなってしまうんだ……」
空を見上げ、絶望の言葉を零すローラ。
しかし、それから一か月後。
クラウスの命令の裏にあった真の狙いを理解し、ローラは思い知ることになる。
クラウスが偉大なる領主であると同時に、稀代の策略家であったということを!
21
お気に入りに追加
1,160
あなたにおすすめの小説

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
ハズレ召喚として追放されたボクは、拡大縮小カメラアプリで異世界無双
さこゼロ
ファンタジー
突然、異世界に転生召喚された4人の少年少女たち。儀式を行った者たちに言われるがまま、手に持っていたスマホのアプリを起動させる。
ある者は聖騎士の剣と盾、
ある者は聖女のローブ、
それぞれのスマホからアイテムが出現する。
そんな中、ひとりの少年のスマホには、画面にカメラアプリが起動しただけ。
ハズレ者として追放されたこの少年は、これからどうなるのでしょうか…
if分岐の続編として、
「帰還した勇者を護るため、今度は私が転移します!」を公開しています(^^)

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる