ゲーム世界のモブ悪役に転生したのでラスボスを目指してみた 〜なぜか歴代最高の名君と崇められているんですが、誰か理由を教えてください!〜

八又ナガト

文字の大きさ
上 下
6 / 58
第一章 モブ悪役転生編

第6話 冒険者の獲物を横取りしよう!

しおりを挟む
 マリーの暮らす離れを吹き飛ばした翌日。
 この調子で悪のカリスマへの道を突き進むべく、次に行うべきことについて考えていた。

 ここで俺は、悪評を広げる以上に重要なことを思い出す。

「ラスボスを目指す以上、やっぱり強さは必須だよな」

 クラウスに転生して以降、毎日のように剣術や魔術の修練をしてきた。
 しかし最初の頃はかなり順調に成長していたものの、ここ最近は少し停滞気味だった。

 その理由について、俺は前世のゲーム知識から何となく察していた。

「やっぱり熟練度が上限に到達したから、ってことなんだろうな」

『アルテナ・ファンタジア』において、操作可能なメインキャラクターにはレベルと各スキルの熟練度が設定されていた。
 熟練度はその名の通りスキルを使うごとに上昇していき、使用回数や威力を上げることができるのだ。

 ただし熟練度には上限が存在し、それを突破するためにはレベルを上げる必要があった。

 ここから導き出せる答えは一つ、

「俺の成長が止まったのは、熟練度の限界に到達してしまったからだろうな」

 この世界ではゲームのようにステータスを見ることはできないものの、システム自体はしっかりと反映されているのだろう。
 これ以上俺が成長するためにはレベルを上げる――すなわち、魔物を倒すしかない!

「よし、そうと決まれば――」

 結論にたどり着いた俺は、さっそく装備を整えると、執務を放り出してダンジョンに出発するのだった。


 ◇◇◇


 今回向かうダンジョンは、領都近くの森の中に存在する。
 事前に情報を調べたところ、今のクラウスでも問題なく攻略できるだろうと判断した。

 そんなわけでダンジョンを目指して意気揚々と歩いている、次の瞬間だった。

 シャァァァ――

「っ、何だ!?」

 得体の知れない何かが迫ってきているのを感じ、反射的に魔力を纏った剣を振るう。
 刃が何かを切り裂く感触が、柄を伝って右手に響いてきた。

「これは……」

 ポトンと地面に落ちたそれ・・をよく見てみると、その正体は魔力で生み出された透き通るような青色の鳥だった。
 青色の鳥は地面に転がったまま、パクパクと小さな口を開く。


『ダンジョ――奥――ボスの変異体――間がやられて――時間を稼ぐ――助け――くれ!』


 そして、そんな感じで途切れ途切れの言葉を発する。
 それを見て俺は確信した。

「伝達魔術か」

 伝達魔術とはその名の通り、魔力で生み出した鳥を飛ばし、特定の相手にメッセージを届けるもの。
 言葉が欠けているのは、今の攻撃によって情報を構成する魔力の一部が消滅してしまったからだろう。

 俺はゆっくりと、その鳥を拾い上げる。

「伝達魔術を使ったってことは、発動者には何か伝えたいことがあったんだろうが……それももう難しいだろうな」

 俺が攻撃したことが原因ということで申し訳なさを感じそうになるが、悪のカリスマたるもの細かいことは気にしない!
 後で適当に供養だけはしてやろうと鳥を胸ポケットに入れ、改めて出発。

 その数分後、俺はダンジョンの前に到着した。

「さて、実際にダンジョンに入る前にっと……」

 俺はアイテム袋から二つのアイテム――【反動強化の指輪】と【鮮血の誘魔灯】を取り出す。

 これらはゲーム世界にも存在していたアイテムである。
 ちなみにゲームでは、こういった説明文が書かれていた。


――――――――――

反動強化はんどうきょうか指輪ゆびわ】:B級
・10秒ごとにHPが1パーセント減少する代わり、全能力値が50%上昇する。
(最大HPの10%に到達して以降は減少しない)

――――――――――

鮮血せんけつ誘魔灯ゆうまとう】:D級
・何種類もの魔物の血液を調合して生み出された液体であり、魔物が好む魔力を放つ。
 これを体に塗ることで、周囲の魔物が寄ってくるようになる。

――――――――――


『アルテナ・ファンタジア』で効率的にレベルアップするためには、3つの要素を意識すればいいと言われている。

 1.少ないパーティー人数で魔物を倒す(ソロが最適、恋愛ゲームとしてはどうなんだ?)。
 2.自分よりレベルの高い魔物を倒す。
 3.そして最後に、魔物討伐時のHPが低ければ低いほど、経験値ボーナスを取得することができる。

 特に重要なのが三つ目。
 こういった仕様が存在する以上、ゲームに慣れたプレイヤーはこの【反動強化の指輪】を装備してレベリングするのが常識だった。

【鮮血の誘魔灯】はまあ、説明文の通りだ。
 これらのアイテムを使えばリスクは上がるが、ゲーム時代の知識を活用すれば特に問題はないだろう。

 そんなこんなで、俺は指輪を装備した後【鮮血の誘魔灯】を体にかけた。

 ちなみにこれらのアイテムをどうやって入手したかと言うと、なんと例の商人から没収した物の中にあったので、勝手に使わせてもらっている。
 迷惑ばかりかけてくる奴かと思ったが、それだけでもなかったようだ。


「さて、それじゃ準備も終わったことだし行くとするか!」


 ダンジョン内で出てくる魔物は事前に調べた通り、ゴブリンやコボルトなどゲームでも登場した魔物が多かった。
 そのため攻略法を活用すれば簡単に討伐でき、順調にレベルアップしていくのを実感する。

「うんうん、これがレベルアップの感覚か! 病みつきになりそうだ!」

 そうこうしながら進んでいると、とうとうボス部屋に到着した。
 そろそろ頃合いだし、今日はボスを倒して帰るとしよう。

 そう思っていたのだが、なぜかボス部屋から戦闘音が聞こえてくる。
 ちらっと眺めてみると、複数の冒険者が既にボスのオーガと戦っていた。

 ……あれ? ゲームに出てきたオーガって、あんなに大きかったっけ?

 まあ、ゲームと現実で細かい違いがあるのだろう。
 そんなことより――

「通常なら先に戦っている冒険者から獲物を横取りするのはタブーだが……そんなことを気にする俺ではない!」

 レベルアップのためならなんだってやってやる。
 というわけで、俺は自分の使える最大火力の魔術を唱えた。


炸裂するプロミネンス・爆炎バースト


 すると、俺の両手から想像を超えるほど巨大な炎の奔流が放たれた。

 これもレベルアップしたことの影響なのだろう。
 炎はオーガに直撃したのち、爆散。 
 予想以上の火力が出た結果、たった一撃で倒すことができた。

「よし、討伐完了!」

 満足しながら額の汗を拭っていると、冒険者たちが俺の存在に気付く。


「おい、あそこを見ろ!」

「誰だ!? あの人がボスを倒したのか?」

「あれはまさか……領主様!?」


 俺はあえてしばらく姿を見せた後、ダンジョンを後にした。

 ふはは、いいぞいいぞ。
 これで冒険者の間にも、俺が獲物の横取りをする最低の領主だという悪評が広がるだろう。
 今回はレベルアップが目的だったがこんな結果までついてくるとは、まさに一石二鳥だ!


 俺は「はーはっはっは!」と高笑いをしながら、片手間に魔物を倒しつつ、地上に帰還するのだった。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

処理中です...