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051 攻略報告と一つの噂
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「あれ、ここは……?」
ダンジョンの外に出たタイミングで、ゴルドが意識を取り戻す。
彼は状況がまだ把握しきれていないのか、周囲をきょろきょろと見渡していた。
その途中、俺に視線が向いたタイミングでピタリと止まる。
「アレス? 何でお前がここに……というか、俺たちはさっきまで怪物と戦ってたはずじゃ……っ!」
痛そうに頭を抑えるゴルド。
何はともあれ、リーベの洗脳は無事に成功しているようだ。
俺は「こほん」と一つ咳払いした後、用意していた答えを返す。
「実はたまたま、モンスターと戦闘中に気絶しているゴルドたちを見つけたんだ。勝つのは難しそうだったから、何とか四人を抱えて逃げてきたんだよ」
「っ、そうだったのか……助かった。何とお礼を言えばいいものか……」
「いや、気にしないでくれ」
もう既に、さっき感謝はされたし――という言葉は寸でのところで止める。
とにかく、無事に生還できたことだけが伝わればいいだろう。
「ん、なんだ?」
「ここはいったい……」
「いたた……」
するとゴルドに遅れて、残る三人も意識を取り戻した。
彼らは俺が助けに来たタイミングで既に気絶していたし、特に記憶を操る必要はいらないだろう。
「……とりあえず、何とかなりそうだな」
「そうね」
俺とリーベは一息つく。
その後、ゴルドから説明を受けた三人は改めて俺に感謝を告げ、そのまま領都に帰還するのだった。
――――だが、俺たちにとって真の問題はその後に待ち構えていた。
それは俺たちがギルドに帰還した直後のこと。
「違う……そうじゃない!」
突如として、ゴルドが大声を上げたのだ。
その声があまりにも大きく、ギルド中の注目がこちらに集まる。
パーティーメンバーのうちの一人が、戸惑った様子でゴルドの肩に手を置いた。
「ど、どうしたんだ? 急に大声を上げて……」
「全部思い出したんだ! アレスは俺たちを連れてあの怪物から逃げたって言ってたが、違う! 本当はブッ倒したんだ!」
「「――――――ッ」」
瞬間、俺とリーベの間に緊張が走る。
まさかこのタイミングで記憶を取り戻すとは。
だけど、まずい。この人数の前でテイムのことをバラされたら、リーベの遷移魔力であっても誤魔化し切れるか分からない。
「ゴルド、お前本気か? 俺たちがボロボロにやられたモンスター相手を、新人が倒しただって?」
「ああ、間違いない」
仲間の問いに、力強く頷くゴルド。
その瞳は確信の色に染まっていた。
(くそっ、何とかして発言を止めなければ! だが、こんな人前で暴力を振るう訳にもいかないし――)
俺の焦燥感がマックスに達しようとした、次の瞬間。
ゴルドはとうとう、彼が信じる全ての真実を叫んだ。
「俺ははっきりと覚えている! アレスは素手であの怪物をぶっ飛ばしたかと思ったら、続けて大量の剣で切り刻んだんだ! まったく、いま思い出してもとんでもない光景だったぜ……!」
「…………え?」
ゴルドの口から告げられたのは、まさかの内容だった。
なぜか俺が素手でデストラクション・ゴーレムと渡り合ったことになっている。
(いや、待てよ……)
リーベは言っていた。
記憶を消せるのは、本人にとって重要ではないことだけだと。
その点、恐らくゴルドにとっては、
『俺がデストラクション・ゴーレムを倒した』>『俺が魔物を使役していた』
という順番で衝撃的だったのだろう。
その結果ガレルが存在したという記憶のみが消え、空白部分を補完するように俺がガレルの役割も果たしていたこととなった。
こう考えると全ての辻褄がつく。
ゴルドの説明を聞いた周囲は、一気にざわめき始める。
「おい、マジか? あの二人がBランク以上の力を持ってることになるぞ」
「ゴルドをよく見てみろ、アレが嘘をついている目に見えるか?」
「いや、見えないな。ということは本当に……」
注目が俺とリーベに集まる。
テイムがバレなかったのは不幸中の幸いだが、これはこれで面倒なことになる気配がビンビンする。
「え、えーっと、それじゃ俺たちはこの辺で」
修羅場から逃げるように、俺とリーベはそそくさとギルドを後にする。
その後しばらく、素手でAランクモンスターを圧倒した新人冒険者がいるという噂が流れたのだが、それはまた別の話。
(身分証明書自体は手に入れられたわけだし、しばらくギルドに近寄るのは止めておこうっと……)
いずれにせよこんな風にして、俺にとって初めてのダンジョン攻略が慌ただしく幕を閉じるのだった。
ダンジョンの外に出たタイミングで、ゴルドが意識を取り戻す。
彼は状況がまだ把握しきれていないのか、周囲をきょろきょろと見渡していた。
その途中、俺に視線が向いたタイミングでピタリと止まる。
「アレス? 何でお前がここに……というか、俺たちはさっきまで怪物と戦ってたはずじゃ……っ!」
痛そうに頭を抑えるゴルド。
何はともあれ、リーベの洗脳は無事に成功しているようだ。
俺は「こほん」と一つ咳払いした後、用意していた答えを返す。
「実はたまたま、モンスターと戦闘中に気絶しているゴルドたちを見つけたんだ。勝つのは難しそうだったから、何とか四人を抱えて逃げてきたんだよ」
「っ、そうだったのか……助かった。何とお礼を言えばいいものか……」
「いや、気にしないでくれ」
もう既に、さっき感謝はされたし――という言葉は寸でのところで止める。
とにかく、無事に生還できたことだけが伝わればいいだろう。
「ん、なんだ?」
「ここはいったい……」
「いたた……」
するとゴルドに遅れて、残る三人も意識を取り戻した。
彼らは俺が助けに来たタイミングで既に気絶していたし、特に記憶を操る必要はいらないだろう。
「……とりあえず、何とかなりそうだな」
「そうね」
俺とリーベは一息つく。
その後、ゴルドから説明を受けた三人は改めて俺に感謝を告げ、そのまま領都に帰還するのだった。
――――だが、俺たちにとって真の問題はその後に待ち構えていた。
それは俺たちがギルドに帰還した直後のこと。
「違う……そうじゃない!」
突如として、ゴルドが大声を上げたのだ。
その声があまりにも大きく、ギルド中の注目がこちらに集まる。
パーティーメンバーのうちの一人が、戸惑った様子でゴルドの肩に手を置いた。
「ど、どうしたんだ? 急に大声を上げて……」
「全部思い出したんだ! アレスは俺たちを連れてあの怪物から逃げたって言ってたが、違う! 本当はブッ倒したんだ!」
「「――――――ッ」」
瞬間、俺とリーベの間に緊張が走る。
まさかこのタイミングで記憶を取り戻すとは。
だけど、まずい。この人数の前でテイムのことをバラされたら、リーベの遷移魔力であっても誤魔化し切れるか分からない。
「ゴルド、お前本気か? 俺たちがボロボロにやられたモンスター相手を、新人が倒しただって?」
「ああ、間違いない」
仲間の問いに、力強く頷くゴルド。
その瞳は確信の色に染まっていた。
(くそっ、何とかして発言を止めなければ! だが、こんな人前で暴力を振るう訳にもいかないし――)
俺の焦燥感がマックスに達しようとした、次の瞬間。
ゴルドはとうとう、彼が信じる全ての真実を叫んだ。
「俺ははっきりと覚えている! アレスは素手であの怪物をぶっ飛ばしたかと思ったら、続けて大量の剣で切り刻んだんだ! まったく、いま思い出してもとんでもない光景だったぜ……!」
「…………え?」
ゴルドの口から告げられたのは、まさかの内容だった。
なぜか俺が素手でデストラクション・ゴーレムと渡り合ったことになっている。
(いや、待てよ……)
リーベは言っていた。
記憶を消せるのは、本人にとって重要ではないことだけだと。
その点、恐らくゴルドにとっては、
『俺がデストラクション・ゴーレムを倒した』>『俺が魔物を使役していた』
という順番で衝撃的だったのだろう。
その結果ガレルが存在したという記憶のみが消え、空白部分を補完するように俺がガレルの役割も果たしていたこととなった。
こう考えると全ての辻褄がつく。
ゴルドの説明を聞いた周囲は、一気にざわめき始める。
「おい、マジか? あの二人がBランク以上の力を持ってることになるぞ」
「ゴルドをよく見てみろ、アレが嘘をついている目に見えるか?」
「いや、見えないな。ということは本当に……」
注目が俺とリーベに集まる。
テイムがバレなかったのは不幸中の幸いだが、これはこれで面倒なことになる気配がビンビンする。
「え、えーっと、それじゃ俺たちはこの辺で」
修羅場から逃げるように、俺とリーベはそそくさとギルドを後にする。
その後しばらく、素手でAランクモンスターを圧倒した新人冒険者がいるという噂が流れたのだが、それはまた別の話。
(身分証明書自体は手に入れられたわけだし、しばらくギルドに近寄るのは止めておこうっと……)
いずれにせよこんな風にして、俺にとって初めてのダンジョン攻略が慌ただしく幕を閉じるのだった。
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