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031 明かされる真実
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魔王軍幹部の一人、リーベ。
そう名乗った彼女は高らかに笑いながら言葉を続ける。
「ようやく気付いたかしら? アナタが飲んだポーションには麻痺状態となる毒が含まれていたの。初対面の相手を簡単に信用しちゃダメって、ご両親に教わらなかった? ……ああ、そうだったわ。あなたのご両親はあんなだものね。教えようがなかったわけだわ」
クスクスと、馬鹿にするように笑うリーベ。
「冥土の土産に少しだけ教えてあげる。昨日の魔物襲撃と今回のオーガ襲来は、どちらも私の手で仕組んだものなの。アナタの隠された力を調べるために」
彼女は気分よく続ける。
「そして今日、ようやくアナタは隙を見せた。オーガを倒す際、魔物を使役したでしょう? 私はそれが確かめたかったの。その理由は……」
そこでふと、リーベは言葉を止めた。
「おっと、いつまでも話し続けて麻痺が切れてしまっては面倒ね。ごめんなさい、私の口から教えられるのはここまで。あとは自分の不遇を呪ってちょうだい」
これ以上、俺に対して何かを語るつもりはないようだ。
リーベは右手に黒色の魔力を集めていく。
あれで俺を殺すつもりなのだろう、禍々しい気配を放っていた。
対して、絶望の淵に立たされた俺はと言うと。
ニヤニヤと笑みを浮かべるリーベを見上げながら――
――スッ、と。
普通に立ち上がった。
俺は膝についた土を払いながら、リーベに向かって告げる。
「まあ、そういうことだよな」
「…………へ?」
そんな俺を見て、彼女は目を丸くしていた。
先ほどオーガの死体を見た時とは違い、心の底から驚愕しているようだ。
リーベはぷるぷると震えながら、空いている左手で俺を指さす。
「ま、待ちなさい。なぜアナタが立っているの? 少なくともあと30分は動けないはずなのに……」
「そもそも初めから麻痺にかかってない。ただそれだけだ」
そう返しつつ、俺は目の前に浮かんだメッセージウィンドウを見る。
『【竜の加護】が発動しています』
『特性効果により、麻痺状態にはかかっておりません』
【竜の加護】の効果は二つ。
一つは魔力操作技術の向上。
そしてもう一つは、高い状態異常耐性の獲得。
後者の効果によって、俺は麻痺毒の影響を受けていなかった。
片膝をついたのも演技だ。体に不調をきたしてなどいない。味は普通にクソ不味かったけど。
というかそもそも、それが分かってなきゃあんな怪しいの初めから飲まないし。
俺はそのまま、パクパクと口を開閉するリーベに言う。
「上機嫌なところ悪いが、初めからお前の狙いは分かっていた。だからこそお前の本性を曝け出すため、わざと誘いに乗ってやったんだ」
まあ実際のところ、わざわざこんな深層まで付いてきたのには、本性を曝け出す以外にも大きな理由があるからなのだが……そこまで懇切丁寧に説明してやる筋合いはないだろう。
どうせこの後、すぐに分かることだ。
俺の言葉を聞いたリーベはしばらく呆然としたのち、キッと眉を吊り上げた。
「ふ、ふざけないで! そんなことがあり得るわけないでしょう!? 私の計画は完璧よ、人族の子どもに過ぎないアナタに見抜けるはずがないわ! それでも全てを分かっていたというのなら……今ここで説明してみなさい!」
どうやら彼女は俺の言葉が信じられないらしい。
……仕方ないか。
「ほ、ほら、無言のままじゃない。運よく麻痺から逃れられたからって、ふざけるのも大概に――」
俺は前世のゲーム知識を思い出しながら、全てを語り始めた。
「千年前、人族と魔族の間で発生した大戦争。初めは魔王率いる魔族側が優勢だったが、突如として頭角を現した勇者と神竜によって魔王は敗北。魔王の魂は封印されることになるも、その間際に魔王は最後の足搔きを試みた。それが自分の魂を十個に分け、それぞれの欠片――通称【魔王の魂片】を千年後の未来に送ること。魂片は誕生した生命の中からランダムで選ばれた存在に宿り、お前たち魔王軍はその魂片を集めて魔王を復活させようとしている。そして俺ことレスト・アルビオンも【魔王の魂片】を宿したうちの一人。その影響で外れスキルだったはずの【テイム】が変質して魔物の使役が可能となった。オーガを使ってそのことを確認できた今、お前は俺から【魔王の魂片】を奪い取ろうとしている。さっきの小瓶に致死性の爆発物や魔法じゃなくて麻痺毒が入っていたのも、魂片を回収する前に俺が死んだら一緒に魂片も消滅してしまうから、それを避けるため――そうだろ? 魔王軍幹部の中でも下から数えた方が早い実力のリーベさん」
ゲームの攻略サイトに書かれていた世界観説明なども思い出しながら、俺は一息でそこまでを告げる。
リーベは目を丸くしながら、口を開けてぽかーんと俺の話を聞き続けていた。
それからどれだけの時間が経っただろうか。
リーベの体がぷるぷると震え出したかと思ったその直後、彼女は大声で叫んだ。
「な、なななっ、何で全部知ってるのよぉぉぉぉぉ!?」
彼女の間抜けな絶叫が『アルストの森』全体に木霊する。
(いや、当然だろ……)
それを聞いた俺は心の中で小さくそう零した。
なにせこのリーベという女、実はゲームにおいてレストを殺した張本人である。
これだけ因縁のある相手を忘れるはずがない。
ラブと名前を変えて現れた時は、思わず「いや、お前何やってんの?」と素でツッコみたくなり、その衝動を抑えるため呆然と立ち尽くしてしまったほどだ。
ちなみに原作において、リーベは【魔王の魂片】をレストから奪った後、調子にのってそれを自分に取り込み主人公たちに挑んでくる。
一時的に能力が強化されSランク級の実力を得たリーベだったが、彼女の器では魂片の力に耐え切ることはできなかった。
その結果、最終的には爆散して死亡する。
木っ端微塵だ。
そう名乗った彼女は高らかに笑いながら言葉を続ける。
「ようやく気付いたかしら? アナタが飲んだポーションには麻痺状態となる毒が含まれていたの。初対面の相手を簡単に信用しちゃダメって、ご両親に教わらなかった? ……ああ、そうだったわ。あなたのご両親はあんなだものね。教えようがなかったわけだわ」
クスクスと、馬鹿にするように笑うリーベ。
「冥土の土産に少しだけ教えてあげる。昨日の魔物襲撃と今回のオーガ襲来は、どちらも私の手で仕組んだものなの。アナタの隠された力を調べるために」
彼女は気分よく続ける。
「そして今日、ようやくアナタは隙を見せた。オーガを倒す際、魔物を使役したでしょう? 私はそれが確かめたかったの。その理由は……」
そこでふと、リーベは言葉を止めた。
「おっと、いつまでも話し続けて麻痺が切れてしまっては面倒ね。ごめんなさい、私の口から教えられるのはここまで。あとは自分の不遇を呪ってちょうだい」
これ以上、俺に対して何かを語るつもりはないようだ。
リーベは右手に黒色の魔力を集めていく。
あれで俺を殺すつもりなのだろう、禍々しい気配を放っていた。
対して、絶望の淵に立たされた俺はと言うと。
ニヤニヤと笑みを浮かべるリーベを見上げながら――
――スッ、と。
普通に立ち上がった。
俺は膝についた土を払いながら、リーベに向かって告げる。
「まあ、そういうことだよな」
「…………へ?」
そんな俺を見て、彼女は目を丸くしていた。
先ほどオーガの死体を見た時とは違い、心の底から驚愕しているようだ。
リーベはぷるぷると震えながら、空いている左手で俺を指さす。
「ま、待ちなさい。なぜアナタが立っているの? 少なくともあと30分は動けないはずなのに……」
「そもそも初めから麻痺にかかってない。ただそれだけだ」
そう返しつつ、俺は目の前に浮かんだメッセージウィンドウを見る。
『【竜の加護】が発動しています』
『特性効果により、麻痺状態にはかかっておりません』
【竜の加護】の効果は二つ。
一つは魔力操作技術の向上。
そしてもう一つは、高い状態異常耐性の獲得。
後者の効果によって、俺は麻痺毒の影響を受けていなかった。
片膝をついたのも演技だ。体に不調をきたしてなどいない。味は普通にクソ不味かったけど。
というかそもそも、それが分かってなきゃあんな怪しいの初めから飲まないし。
俺はそのまま、パクパクと口を開閉するリーベに言う。
「上機嫌なところ悪いが、初めからお前の狙いは分かっていた。だからこそお前の本性を曝け出すため、わざと誘いに乗ってやったんだ」
まあ実際のところ、わざわざこんな深層まで付いてきたのには、本性を曝け出す以外にも大きな理由があるからなのだが……そこまで懇切丁寧に説明してやる筋合いはないだろう。
どうせこの後、すぐに分かることだ。
俺の言葉を聞いたリーベはしばらく呆然としたのち、キッと眉を吊り上げた。
「ふ、ふざけないで! そんなことがあり得るわけないでしょう!? 私の計画は完璧よ、人族の子どもに過ぎないアナタに見抜けるはずがないわ! それでも全てを分かっていたというのなら……今ここで説明してみなさい!」
どうやら彼女は俺の言葉が信じられないらしい。
……仕方ないか。
「ほ、ほら、無言のままじゃない。運よく麻痺から逃れられたからって、ふざけるのも大概に――」
俺は前世のゲーム知識を思い出しながら、全てを語り始めた。
「千年前、人族と魔族の間で発生した大戦争。初めは魔王率いる魔族側が優勢だったが、突如として頭角を現した勇者と神竜によって魔王は敗北。魔王の魂は封印されることになるも、その間際に魔王は最後の足搔きを試みた。それが自分の魂を十個に分け、それぞれの欠片――通称【魔王の魂片】を千年後の未来に送ること。魂片は誕生した生命の中からランダムで選ばれた存在に宿り、お前たち魔王軍はその魂片を集めて魔王を復活させようとしている。そして俺ことレスト・アルビオンも【魔王の魂片】を宿したうちの一人。その影響で外れスキルだったはずの【テイム】が変質して魔物の使役が可能となった。オーガを使ってそのことを確認できた今、お前は俺から【魔王の魂片】を奪い取ろうとしている。さっきの小瓶に致死性の爆発物や魔法じゃなくて麻痺毒が入っていたのも、魂片を回収する前に俺が死んだら一緒に魂片も消滅してしまうから、それを避けるため――そうだろ? 魔王軍幹部の中でも下から数えた方が早い実力のリーベさん」
ゲームの攻略サイトに書かれていた世界観説明なども思い出しながら、俺は一息でそこまでを告げる。
リーベは目を丸くしながら、口を開けてぽかーんと俺の話を聞き続けていた。
それからどれだけの時間が経っただろうか。
リーベの体がぷるぷると震え出したかと思ったその直後、彼女は大声で叫んだ。
「な、なななっ、何で全部知ってるのよぉぉぉぉぉ!?」
彼女の間抜けな絶叫が『アルストの森』全体に木霊する。
(いや、当然だろ……)
それを聞いた俺は心の中で小さくそう零した。
なにせこのリーベという女、実はゲームにおいてレストを殺した張本人である。
これだけ因縁のある相手を忘れるはずがない。
ラブと名前を変えて現れた時は、思わず「いや、お前何やってんの?」と素でツッコみたくなり、その衝動を抑えるため呆然と立ち尽くしてしまったほどだ。
ちなみに原作において、リーベは【魔王の魂片】をレストから奪った後、調子にのってそれを自分に取り込み主人公たちに挑んでくる。
一時的に能力が強化されSランク級の実力を得たリーベだったが、彼女の器では魂片の力に耐え切ることはできなかった。
その結果、最終的には爆散して死亡する。
木っ端微塵だ。
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