鬼灯忍法帖

黒焔

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狐火ノ舞

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星弌は九条に霊力を送る事に専念をすべく敵に見つかりにくい場所へと姿を隠す。
そして星弌がおばりよんを倒した事によって自分に回ってくる霊力の質が上質な物へと変わった事を九条も察したようでその戦闘力により力が入る。
「我が主はどうやらあの忍を討ち取ったようですね。
これで実質二体一、分が悪いのでは?」
月の光を浴びてか現れたり消えたりする霊妙な9本の尾を振るい九条は火乃を煽るように言い放つ。
「尊毘古様の言葉を借りましょうか。"運も尽きれば命も尽きる。運も実力と言うなれば、尽きる程度の実力"との事でしょう。」
クスクスと嘲笑し、その声は当然ながら星弌も聞いており怒りに顔を歪ませ霊力を通して星弌は九条へと指令を出す。
「九条、容赦は要らない。あの外道蟲を今すぐ滅せよ。」
「御意。我が主!!」
星弌の指令が言い終わる前にすでに九条は動いており9本の尾をまるで先端に鏃や槍が付いた鞭のように振るいながら火乃へと連続攻撃を叩き込むが中々どうしてか手応えは感じられない。
当然、身体に攻撃は当たっている。
しかし九条は気付く。火乃の身体に攻撃が当たる瞬間にその部分は無数の火炎蝶となり攻撃をヒラリと躱す。
「....成る程。」
その独特な回避方法を見て九条は一つの確信に至る。
「...身体を蟲に変える異形の術。式神ならでは、ですね。」
だが火乃は九条の推測を首を横に振り否定する。
「違いますよ。無数の蝶に変わる身体を持つ式神ではありません....私は、群生する蝶の式神...。
我が主、尊毘古様を守護する炎が化身にして無限の兵団。
元より二対二に非ず、貴女達は軍勢を前にしているのです。」
ニッコリ笑い再び開いたその眼は人の眼をしておらず複眼となった無数の眼が無表情と思わせる圧を放ち九条を捉えていた。


「九条、敵は群れならば遠慮は要らない。アレを使っても良かろう。」
九条の脳内に響くのは星弌の声であるが九条は躊躇う。
「ですが星弌様!玉藻ノ天光は皆様への被害も...」
「案ずるな。私が何の策も無しに言うという事はないぞ。」
そう言った途端に火乃を結界が覆う。
星弌からの完全な不意打ちだった。
「っ!?
拙い...閉じ込められた!!」
火乃の表情に焦りの色が宿る。
蟲の群れ、という事は余す事なく一箇所に集まっている。
そして操る物が炎であるならば必ず酸素を必要としなければならない。
密閉された空間で多数の存在が呼吸をすれば酸素は忽ちなくなり自らの炎を消してしまう事となる。
九条はそれに気付くと見えない空中の石段を登るように空へと駆け上がる。
「一箇所に集めてくれるならば何とか全て滅ぼせます....星弌様、ありがとうございます!!
天駆ける星、天狗よ。我が九つの火を捧げ汝が光をこの身に宿さん。
裂界疾走・玉藻ノ天光!!」
一定の高さへと辿り着くと身体は光を放ちまるで隕石のようになり火乃を閉じ込めた結界へと突撃を開始する。
自らへと向かい来る星の光を思わせる猛進撃を前に自分を護る焔は燃え尽き呼吸すらもままならない中で火乃は絶望し、意思を持つ核たる蝶はただ一言だけ主君である蘆屋の当主へと言葉を残す。
「....尊...毘古..様.....私が存在した事を...どうか...」
そう呟くと結界は破砕され辺りには小さなクレーターを発生させ余す事なく火乃の全てを灰へと変えた。
クレーターへと何とか星弌は辿り着き中を見ると妖力を使い果たしたのかまるで子狐のような姿となって気を失った九条を抱き上げその頭を撫でると式符の中へと彼女を入れて
「よくやったな、ありがとう。」
と感謝と労いの言葉を掛けたのだった。
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