【長編・完結】この冒険者、何者?〜騎士さまと噂の冒険者は全てを見通す目と耳をお持ちです〜

BBやっこ

文字の大きさ
上 下
38 / 47

誘う

しおりを挟む
「ご馳走さん」

食事を終えたものの、まだ喋り足りない気がする。
双方、思いは一致したようで別ののんびりできる店でゆっくり話す事にした。


「茶店に行こうか、変わった甘味を出すんだ。」
「いいですね。」

喫茶店では、女性が多くて居づらいだろうし。クリスの知っているあの中庭のある店は、静かなのが好ましい。
ここは、案内された場所に行ってみるのが良いだろう。


食事処を出て、さっさと歩く。男2人の歩幅と速度は、あっさり人々を抜いていく。
急いでいる訳ではないが、喋りながらでもない歩みはこんなものだ。

フウが先駆けて行く。それに少し反応した男は妖精に馴れているのだろうか?視えている訳じゃないらしい。
その点は、天啓的な才がなければ無理だが、全く分からない訳じゃない。

(リンなら触れられるかもな)

相性もある。この男は体格に恵まれていているのを差し引いても、鍛錬と魔力操作を疎かにしてはこうはならない。

慣れた道筋なのだろう、広場が見えてきた。そこに立つ白い像を横目に、さらに奥へ進む。
水も綺麗だし、清浄魔法の入った魔術陣が使われているんだろう。

あまり妖精が近づかないのは、そういった理由からか。

フウがひと通り見て帰って来た。リンは、先に行く男のが気になるらしい。
子供が3人通りすぎ、まだ奥へ進むかと思ったが男が道を折れ曲がった。

その路地の先に布が掛かっている。その布を手で払い、男が訊ねている。

「おう、やってるか?」

お目当ての店に着いたようだが、これはなかなか入れそうにない店だ。
妖精が路地で彷徨いている。きっと気に入らない者が入ろうとすると忘れるように帰って行くのだろう。


「これはまた、変わった所だ。」
「ここの饅頭が美味いのよ」

静かで、薄暗い建物の中。
木で掘られた細工ものが壁を飾り、床は植物を織って作られたものらしい。

それをみながら、砂利玉が敷き詰められた道を進む。
外から、部屋に入るらしい。

「靴は脱いでくれな」

そういう作法らしいので従う。ちょっと変な気配が濃いが、危険は感じない。
何かの縄張りという扱いの空間なのか?

招かれているので、問題はないのだろう。妖精とも違う、存在を感じつつ席に座った。

「庭が美しいな。」

城や教会とは趣が違っていがた景色が広がる。ほとんど緑だが、石でできた灯籠が点在していた。
暗くなってからも店は開いているのかもな。

男に注文を任せ、庭の探索に向かって行ったフウとリンを眺めていた。
とても解放感を覚える場所らしい。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜

白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。 舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。 王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。 「ヒナコのノートを汚したな!」 「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」 小説家になろう様でも投稿しています。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

TS転移勇者、隣国で冒険者として生きていく~召喚されて早々、ニセ勇者と罵られ王国に処分されそうになった俺。実は最強のチートスキル持ちだった~

夏芽空
ファンタジー
しがないサラリーマンをしていたユウリは、勇者として異世界に召喚された。 そんなユウリに対し、召喚元の国王はこう言ったのだ――『ニセ勇者』と。 召喚された勇者は通常、大いなる力を持つとされている。 だが、ユウリが所持していたスキルは初級魔法である【ファイアボール】、そして、【勇者覚醒】という効果の分からないスキルのみだった。 多大な準備を費やして召喚した勇者が役立たずだったことに大きく憤慨した国王は、ユウリを殺処分しようとする。 それを知ったユウリは逃亡。 しかし、追手に見つかり殺されそうになってしまう。 そのとき、【勇者覚醒】の効果が発動した。 【勇者覚醒】の効果は、全てのステータスを極限レベルまで引き上げるという、とんでもないチートスキルだった。 チートスキルによって追手を処理したユウリは、他国へ潜伏。 その地で、冒険者として生きていくことを決めたのだった。 ※TS要素があります(主人公)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです

ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。 転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。 前世の記憶を頼りに善悪等を判断。 貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。 2人の兄と、私と、弟と母。 母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。 ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。 前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

処理中です...